南野拓実が苦しんだ2つのシーン。リバプール仕様の「非常識」を身につけよ。成功への提言

プレミアリーグ第24節ウォルバーハンプトン対リバプールの一戦は、1-2でアウェイチームが勝利。この試合で負傷したサディオ・マネの交代選手として抜擢されたのが、日本代表FW南野拓実だった。ザルツブルクからこの冬リバプールに移籍したアタッカーは、このプレミアリーグデビュー戦でどのような活躍をみせ、課題を残したのか。(文・内藤秀明)

2020年01月28日(Tue)11時07分配信

text by 内藤秀明 photo Getty Images
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良くも悪くもノーインパクト

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ウォルバーハンプトン戦でプレミアリーグデビューを飾った南野拓実【写真:Getty Images】

 日本人としてのひいき目抜きで、正直にいうと、良くも悪くもノーインパクトというのが本音だ。

 良い面でいうと、トラブル発生で急に出番が回ってきたにもかかわらず、大きなミスはなかった。強度の激しいリーグだけに、初出場の選手は、不用意なボールロストをしてしまうことも多々ある。そんな中、少なくとも味方に迷惑をかけるようなボールの失い方をしなかったのは良かったとも言える。

 あるいは、細かい前線からのプレス戦術はさておき、高い守備意識を見せつけ、高い位置からのプレスだけでなく、攻め上がるサイドバックが作った広大なスペースのカバーリングもきっちり完遂。悪目立ちはしていなかったと言えるだろう。

 一方で悪い意味でも、目立ちはしていなかった。持ち前のライン間で受ける動きやスプリント能力が生きるシーンはほぼなし。それは本人も自覚しているようで、「満足できるパフォーマンスではなかった」と試合後に語っている。

 ただユルゲン・クロップ監督は、「タキ(南野の愛称)は、2、3週間しか我々とトレーニングをしておらず、違うポジションでプレーしている。FAカップでは中央でプレーしたけど、(今日の試合では)右や左の位置でプレーしている。ウイングの位置でもプレー可能で、彼のことは必要だ。ただし彼がウイングの選手ではないことも理解しているよ」とデビュー戦になった日本人を擁護するコメントを残している。

 まだプレミアリーグ1試合目、今後、どんどん改善していけばよいのだ。

気になった南野のプレー

 ただし個人的に気になったのは、ポジションの適正抜きにしても、周りの選手たちと微妙にまだ噛み合っていないシーンがいくつかあったことだ。今回は2つ、典型的なシーンを紹介したいと思う。

 一つ目は、出場直後の36分のシーンだ。左サイドでボールを持った南野は高い位置どりをしているアンドリュー・ロバートソンに対して縦パスを送ると、そのままスコットランド代表SBの背後を追い越していったのだ。しかしこの直後、南野とロバートソンはプレーエリアが被ってしまい、スピードダウン。大きなチャンスには繋がらなかった。

 確かに一般的にはサイドバックよりも2列目の選手のほうがドリブル突破の能力は高いだろうし、南野のプレー選択が間違いとも言えない。ただし今のリバプールにおいては、違う選択肢を選ぶべきだったかもしれない。

 というのもロバートソンは豊富な運動量を生かして左サイドを何度も上下動できるトップクラスのサイドバックでありスピードもあるので、ある程度は仕掛けることもできつつ、高い精度のクロスも持っている。

 そのため、ロバートソンには縦に仕掛けるスペースを残す意味でも、背後を追い越していくよりも、ハーフスペースの裏のスペースを狙うか、フィルミーノがボールを受けに近づいてきていたので、逆にフィルミーノが本来いた中央からファーよりの位置にランニングしていたほうが、より決定的なシーンになっていた可能性がある。

 他にも、前半終了間際の46分、サラーが右サイドで抜け出し、ドリブルでゴールに向かっているシーン。エジプト代表のエースは左方向にカットイン気味のドリブルコースをとりながら、一人、二人と対面するウルブズのDF陣をかわす。そうして左サイド寄りのボックス内でシュートモーションにまで持ち込んだのだが、その際、サラーが使おうとするスペースと南野が飛び込んだスペースが完全に被ってしまった。

 確かに南野の動きは王道といえば王道だった。ボックス内の空いているスペースに飛び込むことはアタッカーとして普通のことだ。ただしともにプレーしているのは、並みの選手ではなく、モハメド・サラーなのだ。

 彼がカットインでシュートに持ち込むことが大の得意なことは周知の通りであり、彼のキャラクターを理解しているのであれば、中央の位置でランニングしている状態から、空いているとはいえ左サイドのスペースに飛び込むのではなく、サラーのドリブルコースを空ける意味でも、相手DFを混乱させるためにも、密集かもしれないが右サイドに膨らむランニングで囮になるべきだった。

 なおサラーはそういうタイミングで、意外性のあるスルーパスを通すことも得意だ。ポジションさえ被ってなければ、シュートを打つふりをしてパスを引き出せた可能性もあったのだ。

フィットには時間がかかって普通

 と、語るのは簡単だが、いざ実際にプレーするのは難しいのは確かだ。ピッチ上では、テレビやスタンドで見るほど俯瞰して認識できるわけではないし、何より判断は瞬間瞬間に行われる。これまで身に着けてきた「常識」が無意識のうちに邪魔している部分もあるのだろう。

 そもそも新加入選手はリバプールにフィットするのに時間がかかるものだ。例に出てきたロバートソンも、2017年の夏にチームに加入したものの、秋ごろまで出番はなかった。あるいは今や中盤における攻守の中核であるファビーニョも半年近くチームへのフィットには時間がかかったのだ。

 それもそうだろう。普通に考えれば、ありえないと感じるほどにクオリティの高い選手がトップクラスのスピード感でプレーしているのだ。いくらパスワークに絡んでいくことを得意としている南野も、右SBから足元にピンポイントのサイドチェンジが届くことを前提としたサッカーはしてこなかったはずだ。頭ではわかっても、体がついてこない場面もあるのだろう。

 一方で軽傷と報道されているものの、鉄人サディオ・マネが負傷退場するなど、2019年の過密日程の負担がここにきて表立ってきており、2月からはチャンピオンズリーグの決勝トーナメントが始まり、過密日程がまた始まる。

 チームにはローテーションが必要であり、南野はチームにとって必要な戦力なのである。

 簡単ではないことはわかっている。ただ一日も早くリバプール仕様の「非常識」な動きを覚えることができたなら、確固たる地位を築く上での、大きな第一歩になるはずだ。

(文:内藤秀明)

【了】

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