香川真司、レアル・マドリー相手にまばゆい輝き。0-4大敗だけで測れない絶大な存在価値

コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)のラウンド16が現地29日に行われ、2部のレアル・サラゴサは世界屈指の強豪レアル・マドリーに0-4で敗れた。しかし、この試合に先発出場した日本代表MF香川真司は、高いクオリティでサラゴサをけん引し、改めて実力を証明した。チャンピオンズリーグなども経験した名手の輝きはまだまだ色あせていない。(文:舩木渉)

2020年01月30日(Thu)11時40分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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2失点で大勢は決したが…

香川真司
【写真:Getty Images】

 熱望していた対戦が実現した。レアル・サラゴサに所属する日本代表MF香川真司は、現地29日に行われたコパ・デル・レイのラウンド16、レアル・マドリーとの大一番にトップ下で先発出場を果たした。

 しかし、チームとしての実力差は明らかだった。結果は0-4の大敗。マドリーとの対戦に浮き足立ったか、序盤にサラゴサのディフェンスラインが危険なミスを連発する。6分、ショートコーナーについていけずDFラファエル・ヴァランに先制ゴールを許すと、32分には自陣ゴール前でボールを失ったところから崩されてMFルカス・バスケスに2点目を奪われる。この2つのゴールで試合の大勢は決してしまった。

 それでも香川は90分間を通して、マドリー相手にも通用する確かなクオリティを発揮し続けた。試合前の記者会見で敵将ジネディーヌ・ジダンが「香川はサラゴサのキープレーヤーであり、それを証明している」と語った通り、トップレベルで培ってきた技術や経験を遺憾なく披露した。

 最初の見せ場は23分にやってきた。敵陣ペナルティエリア内でパスを受けた香川は、左に持ち出して左足を振り抜く。マドリーのDFダニ・カルバハルの足に当たって若干コースが変わったシュートは枠に飛び、GKアルフォンス・アレオラにギリギリのセーブを強いた。

 30分には、新加入のMFアンドレ・ペレイラとのワンタッチコンビネーションで右サイドに抜け出すと、そのままドリブルで持ち込み、カバーに入ったヴァランの目の前で切り返して左足シュートを放った。このシュートは惜しくもゴール右に外れたが、香川が攻撃のスイッチを入れるとサラゴサにもゴールの香りが漂うようになったのは間違いない。

 背番号23の日本人アタッカーは、常に味方と近い距離感を保ちつつ、パスを出してはポジションを取り直し、コンビネーションで崩しに関わろうと試みた。成功した回数こそ少なかったものの、簡単にはボールを失わない柔軟なキープ力と、攻撃の局面を前に進める力が光った。

サラゴサの課題は改善されず

 惜しむらくはサラゴサがリーグ戦と同様の守備の弱点を晒し、マドリーがしっかりとそれを突いてきたことだ。あくまで2部リーグからの昇格を念頭に、リーグ戦重視の姿勢を崩さなかったサラゴサのビクトル・フェルナンデス監督は控えメンバー中心でコパ・デル・レイのマドリー戦に臨んだ。

 直近のリーグ戦でヌマンシアの3バックからのビルドアップに苦しめられたように、4-4-2の基本布陣で守るサラゴサは2トップのプレッシングに後方からのサポートが乏しく、相手に数的優位を作られてしまうと簡単に前進を許してしまう。

 マドリー戦も例に漏れず、香川とFWミゲル・リナーレスが動き出しても、背後にいる両サイドMFやセントラルMFたちの連動が鈍く、2人のセンターバック+MFトニ・クロースでの組み立てに対して後手に回ってしまった。

 サラゴサは本来、ボールを握って攻めるのを得意とするチームながら、プレッシング戦術に欠陥があって押し込まれる展開が増えてしまう傾向にある。こうした矛盾を孕んだ状態ながらも、総合力の高さによって2部で暫定4位につけているのだ。

 とはいえ相手はマドリーである。今季、リーグ戦やチャンピオンズリーグでのタイトル争いも残しながら、ジダン監督はコパ・デル・レイも本気で狙っているようだ。週末にアトレティコ・マドリーとのマドリード・ダービーが控えているにも関わらず、サラゴサ戦の先発メンバーにはDFセルヒオ・ラモスやDFマルセロ、カルバハル、ヴァランといった主力がずらりと並び、クロースやMFフェデリコ・バルベルデなども起用された。

 序盤戦の不調が嘘のようにチームとしての完成度が上がり、特に攻守の切り替えの局面の強度が際立つ。選手間のコンビネーションの質も高く、後半に生まれたFWヴィニシウス・ジュニオールとFWカリム・ベンゼマのゴールは、それぞれシンプルなワンツーやボールのないところでの動き出しが起点になった。サラゴサはトップレベルの選手たちの徹底した細かいアクションの積み重ねに、ついていききれなくなっていた。

香川が輝く。リーグ戦でも出番あるか

 そんな中で、約2年ぶりにマドリーと対峙した香川は、ボルシア・ドルトムント時代と遜色ない軽快な動きと緻密な位置どりで存在感を発揮し続けた。やはり彼の特徴は強い相手と戦う時にこそ生き、周りとのコントラストとなってピッチ上に現れる。

 63分には一度ボールを手放してからペナルティエリア内の危険なスペースで待ち続け、最終的に横パスを受けて左足でシュートを放った。さらに象徴的だったのは78分のシーンだ。リーグ戦でなかなか定位置をつかめず苦しい状況を覆すきっかけになるかもしれない、香川の未来につながるパスがあった。

 後方のセントラルMFラウル・グティから斜め方向の速いパスが出ると、マドリーの中盤とディフェンスラインの間のスペースでボールを受けた香川は素早く反転して、ドリブルで横に運びながら相手センターバック2人を引きつける。

 そして、その2人の背後にできたスペースに味方が動き出したのを見逃さず、香川は絶妙なスルーパスでヴァランとナチョのスルーパスの間を抜く。最後はFWルイス・スアレスのシュートがGKアレオラにセーブされてしまったが、「アシスト未遂」と言えるこの試合最大の決定機だった。

 香川は気の利いたポジショニングや味方へのサポートの意識、簡単には失わない確かなボールコントロール技術、プレービジョン、コンビネーションの質、パスを出して動き直すプレーの連続性などで、改めてクオリティの高さを証明した。

 先述した78分の場面では、1部昇格を目指すリーグ戦で主力としてプレーするラウル・グティやルイス・スアレスとの連係も深まってきていることがうかがえる。

 スタッツを見ても存在感の大きさがよくわかる。サラゴサはマドリーの13本を上回る15本のシュートを放ったが、そのうち3本が香川によるものだった。また劣勢で前線が孤立しがちな試合展開にもかかわらず、香川のボールタッチ数「75」は、セントラルMFのイニゴ・エグアラスの「113」に次いでチーム2番目の多さ。48本蹴ったパスも成功率88.9%と高い数値を記録しており、やはりプレーの正確性はチーム内でも群を抜いている。

 実際の印象のみならず、スタッツによってパフォーマンスの高さが裏づけられている。新加入選手もいるサラゴサの2列目の競争は熾烈だが、ビクトル・フェルナンデス監督も香川の実力を改めて評価しているはずだ。クリエイティビティを備えたMFハビ・ロスの長期離脱などによって移籍市場閉幕間際ながら補強の必要性が叫ばれるが、香川の復調は何よりも大きな後押しになるだろう。

 マドリー戦でのパフォーマンスや良好なコンディションを維持できれば、リーグ戦での出場時間増やチーム内での存在感の大きさにもポジティブな変化が生まれていく。香川にとって念願のマッチアップは、「0-4の大敗」という結果だけでは測れない大きな価値のある90分間となった。

(文:舩木渉)

【了】

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