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セリエA 4年前

ユベントス対インテル、優勝候補同士の“違い”はどこにあったのか。2-0の差がついた理由とは?

セリエA第26節、ユベントス対インテルのイタリアダービーが現地時間8日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。新型コロナウイルスの影響で開催が遅れたこのライバルマッチは、今季におけるスクデットの行方を占う一戦となったが、最終的に王者・ユベントスが力の差を見せつけることになった。インテルとの違いはどこにあったのか。(文:神尾光臣【イタリア】)

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

1週間遅れのイタリアダービー開催

ユベントス
新型コロナウイルスの影響で8日のイタリアダービーは無観客試合となった【写真:Getty Images】

 3月8日、セリエA第26節のユベントスVSインテルが行われた。本来のスケジュールから一週間後の開催だ。

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 ここまでいろいろあった。ロンバルディア州コドーニョ付近で新型コロナウイルスのアウトブレイクが確認されて以来、ご存知の通りイタリアは大混迷。感染者の多く出ているロンバルディア、ヴェネト、エミリア・ロマーニャの3州の他、ピエモンテでも法令のもとに学校の休校やイベント開催自粛などが要請された。

 セリエAも、その影響を大きく受けた。22日から23日に組まれていた第25節の4試合の延期が決まったのを皮切りに、ユベントスVSインテルを含む6試合についても開催が危ぶまれることになる。今シーズンはEURO2020のため、5月31日までにリーグ戦を終了させなければならないという状況下では、試合の延期はできない。折衷案のようにして無観客試合の開催へと向かっていたのだが、入場料収入も減ることから延期を申し出ていたクラブもあった。

 もっともそのリクエストは却下され、ユベントスVSインテルはスケジュール通り3月1日に無観客で実施されることとなった。ところがその前日の29日、突如レガ・セリエAが決定を覆し5月13日への延期を決めたのだ。

 これに対して憤慨したのが、インテルのジュセッペ・マロッタCEO。文字通りの朝令暮改をやったレガの迷走ぶりに怒ったこともさることながら、競技上の悪条件を訴えた。「(先に延期となった)インテルVSサンプの前にユベントスVSインテルの日取りが決まるのだ? もはやリーグ戦は歪められた。その時の順位もそうだし、故障者や出場停止者によっても変わる。インテルは打撃を受けたのだ」と。

 1試合少ないという状態で勝ち点6差。勝てばユベントスに大きくプレッシャーを掛けられるが、負けてしまえば優勝争いからの後退を意味する。アントニオ・コンテ監督を招聘して強力な補強も行い、現実的にスクデットを狙える位置につけていたインテル。いつも以上に良い条件での開催を望んだ理由はそこにあるのだ。

 その後レガ・セリエAは、新型コロナウイルス対策法令に追加が出たことに伴い、延期となっていた第26節の6試合を8日、9日の両日に無観客試合で再設定。ようやく試合に臨めたインテルだったが、差を詰めるどころかユベントスに突き放される。選手を補強し、戦術を突き詰めてもなお、埋まらなかった差を相手に示されることとなった。

両者の差はどこに?

 まずは、ユベントスの守備をインテルの攻撃陣が攻略できなかったこと。マウリツィオ・サッリ監督に代わって不安定になったともいわれていたが、ユーベの最終ラインは堅く、ロメル・ルカクとラウタロ・マルティネスの2トップに仕事をさせなかった。

 インテルがペースを握った前半からそこは垣間見えていた。中央の守備ブロックを堅くすることを目的としてか、サッリ監督はアンカーにミラレム・ピャニッチでなく、ロドリゴ・ベンタンクールを入れる。その分レオナルド・ボヌッチとマタイス・デ・リフトはインテルの2トップに対応。とりわけボヌッチはきっちりルカクをマークし、前を向かせなかった。

 インテルはハイテンポのプレスで中盤のボールを拾い、右に左に振り回そうとする。ところが中央では、しっかりスペースが消されている。ペナルティエリアに入っていくチャンスがなく、枠内のシュートは打たせてもらえなかった。

 サイドには活路があり、とりわけ右サイドのアントニオ・カンドレバは果敢に攻めてはいたが、2トップにクロスを供給するところまで行かない。クオリティの欠如が響き、押し気味の時間帯で点が奪えなかったことは試合の結果に響くこととなった。

 その次は最初の失点、そして点を取られた後のアプローチに見る成熟度の差だ。

 55分のアーロン・ラムジーのゴールは、インテルが押していた時間帯で奪われたものだった。右サイドを突破されて折り返しが来るも、ゴール前には人数が整っていた。ところがその密集の中で、若いアレッサンドロ・バストーニがクリスティアーノ・ロナウドを抑えきれずにマークを離してしまう。ボールを拾ったCR7は、密集地の中でラムジーにシュートコースが見えていたことを理解し、すんなりとボールを渡す。そこからゴール。ルカクやラウタロに隙を与えなかったユーベの守備陣とは対照的に、インテルの守備陣は一瞬の綻びをゴールにつなげられた。

 そしてゴールを奪った後、ユーベはポゼッションの比率を高めてボールを相手に与えない。後方でパスを交換して相手を前に引き出しては、その裏を使って走らせる。それが、インテル側の体力と気力を削った。前半から積極的なプレスを掛けていた彼らは、だんだんと間延びして相手を捕まえられなくなっていった。

「スクデットにはまだ忍耐がいる」(コンテ監督)

ユベントス
ユベントスとインテルの間には未だ埋めきれない差があった【写真:Getty Images】

 そしてインテルがユーベに示されたもう一つの差は、戦力の厚みだ。

 ユーベの追加点は、ベンチメンバーとして贅沢に使われたパウロ・ディバラ。67分のゴールは見事だった。

 右サイドに大きく開いてサイドチェンジを引き出すと、左足のアウトサイドを使ったトラップだけで対面のマークをあっさり剥がす。そしてドリブルで中に切り込んだ後、ラムジーとのパス交換を経てさらに中へ。エリア内に詰めたインテルの守備陣を、ここでもワンフェイク入れてまとめて体の軸を揺らす。最後は左足のアウトフロントを使い、クイックなモーションでシュートを流し込んだ。

 バスケットボールでいうところのシックスマン的に、主力としての存在感を放つ。インテルでも、途中出場のクリスティアン・エリクセンにはそういう仕事を期待されていたのだろう。しかしここまで戦術にフィットし切れていない彼は、冴えのないところを露呈してしまった。

 3-5-2システムのインサイドMFとして途中出場したが、個人技でユベントスの守備陣を剥がすシーンはなく、違いは作れなかった。ゴールも狙えるトップ下のラストパサー的に使うのがベストなのだろうが、そのスタイルゆえに居場所の確保に苦しみ、大事な試合に響いてしまった。

「パーソナリティの差が出た。彼らとの比較は不可能だし、ギャップがあることは理解していた。スクデットにはまだ忍耐がいると思う」。試合後、コンテ監督は地元メディアに語った。

 コロナウイルスに揺れるリーグ戦の中でインテルがコンペティションの成立を訴えたのも、彼らがユーベに勝てるチャンスだと強く認識していたからだろう。しかしライバルを凌駕するための課題を、改めて突きつけられる格好となった。

(文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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