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リバプールの不調を象徴する自滅。歴史的な勝利を手にしたアトレティコ、ジョレンテ投入で起きた変化とは?【欧州CL】

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16・2ndレグ、リバプール対アトレティコ・マドリードが現地時間11日に行われた。アウェイのアトレティコは2-3で逆転勝利を収め、2戦合計スコアを2-4として準々決勝進出を決めている。チームを救ったのは56分にジエゴ・コスタと交代で投入され、延長戦で2得点1アシストを挙げたマルコス・ジョレンテ。一方のリバプールはホームで2点を先制しながら、3失点を喫して欧州の舞台から去ることとなった。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

守備の改善が攻撃の活性化に

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【写真:Getty Images】

 試合を支配し続けたのは間違いなくリバプールだったが、軍配はアトレティコ・マドリードに上がった。ワンダ・メトロポリターノで行われた1stレグに勝るとも劣らない熱戦は90分では決着がつかなかった。

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 リバプールは1stレグと同様、70%近いボール保持率を記録しながらも相手の粘り強い守備に手を焼いた。しかし、ハムストリングの負傷から復帰したジョーダン・ヘンダーソンが攻守のスイッチ役となり、チャンスを多く作っていた。

 90分を終えた時点でのスタッツは、シュートが27本対7本で、リバプールは11本を枠内に飛ばした。数多くの決定機を作る中で、アレックス・オックスレイド=チェンバレンのクロスを頭で合わせたジョルジニオ・ワイナルドゥムのゴールで、リバプールは43分に先制に成功した。

 リバプールは試合の途中まで、生命線のカウンタープレスが機能していた。攻から守の切り替えでボールを奪えずにここ数試合は厳しい戦いが続いていたが、この試合では縦パスを引っかけてもすぐに回収し、相手のトラップが大きくなった瞬間を見逃さずにボールに襲い掛かった。

 しかし、70分を過ぎたあたりでアトレティコがボールを握る時間帯が訪れる。時間の経過とともに攻めあぐねるリバプールは足が止まっていた。するとユルゲン・クロップはすかさず交代カードを切る。クロスで先制点をアシストし、ミドルシュートを積極的に打っていたオックスレイド=チェンバレンを下げて、ジェームズ・ミルナーを入れた。

 どちらかというと守備的な交代に見える。しかし、ミルナーの投入によってリバプールはトランジションでの迫力を取り戻し、再び試合の主導権を取り戻すことができた。守備的な選手の投入が攻撃の活性化につながった。

ミスを犯したGKアドリアン

 2戦合計スコアが1-1、アウェイゴール数もお互い0のまま試合は延長へ突入した。すると94分、ワイナルドゥムが右サイドを個人で突破すると、クロスをロベルト・フィルミーノが頭で合わせる。一度はポストに弾かれたが、リバウンドをフィルミーノが右足でゴールに流し込んだ。

 しかし、2-0としたリバプールはミスから失点を重ねた。1失点目は、完全にGKアドリアンのミスだった。バックパスを受けたアドリアンの出したパスが、ジョアン・フェリックスの足下に渡ってしまった。フェリックスからパスを受けたマルコス・ジョレンテがゴールネットを揺らした。

 ミスにはいくつか種類ある。技術か、判断か、戦略か。なぜアドリアンはあのようなボールを蹴ったのか。長いボールを蹴ろうとしてあのボールになってしまったのなら仕方ない。技術的なミスはいつだって起こりうる。

 しかし、アドリアンはこれまで以上にリスキーなつなぎをこの試合では見せていた。そして、失点につながったキックは繋ごうとしていたように見える。アドリアンの判断だったのか、チームの作戦だったのかはわからない。だが、守り抜けば勝ち抜けが決まる展開でするプレーではなかった。

不調を象徴する自滅

 アウェイゴールで上回られたリバプールは再び得点が必要になった。しかし、GKヤン・オブラクを中心に、自陣に8人が2列の隊形を組む強固なアトレティコのブロックは、相手の猛攻を跳ね返し続けた。

 フィルミーノがボールロストしたところを、直前にフェリックスと交代で入ったアルバロ・モラタが拾い、右サイドを駆け上がった。中央を駆け上がるジョレンテがパスを受けて右足を振り抜くと、ボールはGKアドリアンの届かないコースへと飛んだ。対峙するジョー・ゴメスは一瞬だけジョレンテとの間合いを空けてしまい、ヘンダーソンとミルナーが詰めたが、わずかに間に合わなかった。

 リバプールは延長後半に3枚の交代カードを切り、フィルジル・ファンダイクを前線に上げてボールを集めたが、アトレティコの守備を崩すことはできなかった。延長後半間際にジョレンテとのパス交換からモラタがDFラインを突破。GKとの1対1を冷静に決めてアトレティコの勝利を決定づけた。

 3失点目はアレクサンダー=アーノルドの雑なキックが相手に渡ってしまった。直前のモラタへのタックルでイエローカードが与えられており、21歳は冷静さを失っているように見えた。ネガティブトランジションでボールを奪い返せず、不用意なボールロストから失点するという、不調を象徴するような試合終盤の戦いだった。

ジエゴ・コスタを下げた意味

 ディエゴ・シメオネが切った最初の交代カードは意外だった。56分にジエゴ・コスタをベンチに下げ、アンヘル・コレアを一列上げてマルコス・ジョレンテを右サイドに入れた。延長も含めて60分以上残されている中で、守り切るにしては早すぎる。すぐには意図がつかめない交代だった。

 ケガを抱えるモラタがおそらく長時間プレーができない中で、ジエゴ・コスタを下げるのは勇気が必要だったと思う。しかし、ジエゴ・コスタはパス成功数4本、シュートはわずか1本と前線で孤立し、右サイドハーフで守備に追われるコレアはなかなか攻撃にリソースを割けなかった。ボールを奪っても繋げない状況で9番をピッチに置き、攻撃的なアタッカーをサイドハーフに置く意味はあまりなかった。

 低い位置の守備には長けるジョレンテを入れたことで、高い位置でプレーすることができるようになったコレアの負担は減った。得点はいずれもミスからではあるが、右サイドハーフのジョレンテが豊富な運動量で、3得点すべてに絡んでいる。

 アンフィールドでアトレティコにあれ以上のことをやれというのも難しかった。オブラクを中心に守り抜いたアトレティコの集中力は素晴らしく、相手が見せた隙を見逃さずに得点した攻撃陣も見事だったと思う。公式サイトが伝えた試合後のシメオネの言葉を借りれば、「美しいスタジアムで行われた並外れた相手との歴史的な試合」だった。そして、この試合でその中心にいたのはジョレンテだった。

(文:加藤健一)

【了】

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