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日本代表 4年前

なぜ? 悲観的シナリオを想定すると怒られる日本。その理由とは…。コロナウイルスの権威に聞く【日本代表マニュアル 後編】

終息が見えないコロナ禍のなか、Jリーグ開幕が正式に決定された。我々サッカーファン、サポーターは今後、サッカーとどう付き合い、向き合っていけばよいのか。正しい「観戦マニュアル」とはいかに―。サッカーを愛してやまない感染症専門医の第一人者・岩田健太郎教授がすべてのサッカーピープルに向けて、新しいガイドライン「サッカー行動マニュアル」の策定を試みた。6月12日発売の『サッカーと感染症』から、一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:岩田健太郎)

text by 岩田健太郎 photo by Editorial Staff

2000年問題に学ぶリスクマネジメント

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【写真:フットボール批評編集部】

 最悪のシナリオとはどういうシナリオなのかというと、ニューヨークやイタリアを見ればすぐわかるので、「あれが最悪のシナリオですよ」という風に明示できているわけなんです。

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 それなのに、日本ではそういうことは起こり得ないという妙な神話があって、確かな根拠があるわけでもないのに、日本は違うみたいなことを言うわけです。

 もしかしたらそうなのかもしれないですけど、楽観はしないように傾いてくれた方が頼もしいわけですから、要は悲観的なシナリオを組んでおいても、肩透かしを食らうのはどうってことはないんです。

 昔、2000年問題というのがありました。当時、僕はニューヨークで研修医をやっていたんですけど、2000年の1月1日にカチッと1999から2000に時計が回ると病院の人工呼吸器が全部止まるという噂がまことしやかに流れて、ICUの患者がみんな死んでしまうと。

 大晦日の夜中に病院に待機して人工呼吸器が全部止まっていたらどうするかみたいなことをドキドキしながら待っていたんですよ。

 実際は何も起きなかったんですが、そこは最悪のシナリオを想定して準備するのはやはり大事で、それを看過して悲惨な状態になるよりは準備に準備を重ねて何も起きなかった、肩透かしだったと言って笑って済ます方がよっぽどいい間違い方なんですね。

 正しく間違えるというのはこういうことで、間違えないというのは人間の世界ではあり得ないことで必ず間違えるんです。正しく間違えるというのも大事で、悲観的に見ておいて肩透かしを食らうのは、許容できる笑い話のような間違いなんです。

 けれども、突然正月になったらみんな死んじゃうみたいな、これは絶対許容できない、許しがたい間違いですよね。

 2000年問題とはそういうことだったんですけど、やはり最悪の事態を想定して準備するということなんですが、日本では「何でそんなことを言うんだ」となぜか怒られてしまうわけです。

(文:岩田健太郎)

感染症対策の権威にして熱烈なサッカーファンである岩田健太郎教授。書籍本編ではイニエスタとの貴重なエピソードも収録! 今だからこそ聞きたい新たな「サッカー行動マニュアル」の詳細は↓をクリック!

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『サッカーと感染症』


定価:本体1,300円+税

≪書籍概要≫
 長いスパンで感染症と付き合わざるを得ないWithコロナ時代に突入した今、もちろんサッカー界も新しい形態、思考にモデルチェンジしていく必要がある。サッカーを愛してやまない感染症専門医の第一人者・岩田健太郎教授の“サッカー異論”をフットボール批評編集部がまとめ、サポーター、選手、指導者……すべてのサッカーピープルに向けて、新しいガイドライン「サッカー行動マニュアル」の策定を試みた。

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【了】

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