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トッテナムは韓国のエース一辺倒…。低調エバートンに辛勝、合格点には到達できず

プレミアリーグ第33節、トッテナム対エバートンが現地時間6日に行われ、1-0でホームチームが勝利している。前節のシェフィールド・ユナイテッド戦を1-3で落としたトッテナムはこの日、堅実な戦いぶりで虎の子の1点を守り切った。ただ、ジョゼ・モウリーニョ監督は満足感のあるコメントを出していたが、内容は決して合格点とは言えない。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

トッテナムは勝利も…

ソン・フンミン
【写真:Getty Images】

 トッテナムが苦しんでいる。プレミアリーグ再開後3試合の成績は1勝1分1敗で、リーグ中断前も含めた直近5試合でもわずか1勝しか挙げることができていない。チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得が今季の目標となるはずだったが、ジョゼ・モウリーニョ監督が1-3で敗れた前節のシェフィールド・ユナイテッド戦後に「CLについて夢を見るのは難しい」と話すなど、トップ4入りは非常に厳しいと言わざるを得ない。

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 一方、カルロ・アンチェロッティ監督率いるエバートンはリーグ再開後、好調を維持している。第30節では王者リバプール相手に0-0、その後は残留争いに苦しむノリッジにしっかりと勝利を収め、前節は3位レスターを撃破。同3試合で複数失点は0回と、安定した守備を持ち味に着実に勝ち点を積み重ねている。

 そんな両者が現地時間6日にプレミアリーグ第33節で激突。舞台はトッテナム・ホットスパー・スタジアムだ。

 試合の立ち上がりはお互いに慎重な姿勢を見せた。ボールを保持していたのはトッテナムだが、攻撃のテンポは加速せず、中盤で“回すだけ”の時間を過ごす。エバートンも奪った後の展開力に欠けていたため、チャンスらしいチャンスはほとんど訪れなかった。

 しかし24分、MFジオバニ・ロ・チェルソがペナルティエリア内でシュートすると、これがDFマイケル・キーンに当たってゴールに吸い込まれ、トッテナムが先制に成功。ホームチームは訪れたワンチャンスをしっかりとモノにしたのである。

 ただ、この1点によりその後の試合展開はやや「退屈」なものに。モウリーニョ監督率いるチームは堅実な試合運びを見せ、攻撃の勢いはまったく出ず。エバートンもエバートンで肝心なところでミスが多発し、トッテナムを押し込むには至らず。過密日程による疲労の影響もあるだろうが、スローテンポな時間だけが続いていたのだ。

 後半に入っても試合展開に大きな変化はなく、結局試合は1-0のまま終了。トッテナムにとって今の時期は結果が最も重要ということは確かだが、内容面に目を向けるとモヤモヤが残るのも事実である。

ソン・フンミンに頼る攻撃

「悪い敗北の後にプレーするのは簡単なことではないし、悪いパフォーマンスの後にプレーするのも簡単なことではない」とはモウリーニョ監督の言葉。確かに、前節のシェフィールド・ユナイテッド戦で1-3と屈辱的な敗戦を喫したトッテナムからすると、好調エバートンを1-0で退けたのは大きな自信に繋がるはずだ。

 しかし、「芸術的なパフォーマンスではなく、信じられないほどの才能や質のあったパフォーマンスでもなかったが…」とモウリーニョ監督も話した通り、あえて結果を取り除けば、決して合格ラインには到達できない。内容に関しては、まだまだ改善すべき部分がある。

 この日のトッテナムは左サイドのソン・フンミンに頼る攻めが非常に多かった。先制点に繋がる場面も彼のドリブル突破が起点となっているし、その他の場面でも果敢に背後を狙うのはソン・フンミンだけ。53分にDFトビー・アルデルヴァイレルトのロングフィードに抜け出したのも、63分に左サイドからカットインしてシュートを放ったのも、65分にGKジョーダン・ピックフォードを脅かすシュートを放ったのもソン・フンミン。決定機はすべて韓国人FWだったのだ。

 ただ、トッテナムも工夫を見せていたのは事実。ビルドアップ時にはMFハリー・ウィンクスを下げ、DFベン・デイビスに高めの位置を取らせることでサイドで数的優位な状況を作り、そこへ相手が食い付いて来れば、背後のスペースが空く。ソン・フンミンはそこを果敢に突くなど、攻撃時の狙いは明らかだった。

 しかし、その他の攻めに可能性を感じることはできなかった。FWハリー・ケインは完全に孤立し、タッチ数はチーム最低の38回に留まる。FWルーカス・モウラは何とかしなければ、という姿勢は見せたが、シュート数はわずか1本で決定的な仕事を果たすには至らず。ロ・チェルソはキーンのオウンゴールを誘発したが、その他に目立った場面はなく、沈黙した。連動性は明らかに欠けていたと言えるだろう。

 エバートンのパフォーマンスがかなり酷かったこともあり何とか勝利は収めたが、今後もソン・フンミン一辺倒な攻撃を繰り出すようであれば、苦戦からは逃れられない。今に始まったことではなく、過密日程による疲労の蓄積があることも否めないが、攻撃のアイデア、強度を高めていけなければ、ヨーロッパリーグ(EL)出場すら危ういと言えるだろう。

「みんなが自分たちができることをやってくれたし、非常に堅実なパフォーマンスをしていた。もっとゴールを奪うことができたか? ああ、できたよ。後半には2度ほどチャンスがあったと思うが、エバートンは良いチームだったね」。

 モウリーニョ監督のコメントには満足感がうかがえるが…。ここからチームの白星は積み上がるのだろうか。

(文:小澤祐作)

【了】

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