冨安健洋、久々のCBで好プレーを連発したが…。最後の最後で失点に関与、イタリアで戦うために必要な資質とは?

セリエA第32節、パルマ対ボローニャが現地時間12日に行われ、2-2の引き分けに終わった。ボローニャは2点をリードしながら、後半終了間際に2失点。同点ゴールに絡んでしまった冨安健洋にとっては、イタリアのDFとして必要な資質を痛感させられた試合になった。(文:神尾光臣【イタリア】)

2020年07月13日(Mon)11時57分配信

text by 神尾光臣 photo Getty Images
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2点目をアシストも…

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【写真:Getty Images】

 冨安健洋にとってパルマ戦は、なんとも評価に困る結末となってしまった。前半にロベルト・ソリアーノのゴールをアシストしたが、後半アディショナルタイムの失点に絡んでしまう。90分間を経過し2点をリードしていたボローニャは、勝って終われるはずの試合をドローに持ち込まれてしまった。

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 この試合で、冨安は2つのポジションをこなしている。先発時は右サイドバック、しかし前半終了間際に負傷退場者が出た関係で、後半は丸々本来のポジションであるセンターバックとしてプレーした。つまりとても雑な言い方をすると、SBとして1アシストを演出し、CBとして1失点に絡んだということになる。

 つまり冨安は本職では通用しなかったのか――結果だけを見ればそう言えるかもしれない。だがそれは試合内容を反映しているとは言えないものだ。この日の彼はSBとしても、またCBとしても非常に安定していた。少なくとも、ラストのワンプレーまではだ。

 過密日程を考慮してか、地元紙では先発から外れるという予想もされていた。だがスタメン表には、冨安の名前があった。ポジションは右SB。そしてインテル戦、サッスオーロ戦とは異なり、攻守両面で安定したプレーを展開することができていた。

前半に訪れたアクシデント

 攻撃陣の多くを休ませる関係から、パルマのロベルト・ダベルサ監督はシステムまで普段の4-3-3から4-4-1-1へと切り替えていた。冨安の対面にはヤスミン・クルティッチ。だが本来はピッチ中央寄りの位置でのプレーを好む攻撃的MFであり、冨安に対してプレスは掛けてきても、サイドをえぐってはこない。

 そうなれば高いポジションをとってボールを確保し、積極的に攻撃に参与するプレーも増えてくる。インターセプトを狙ってボールを奪い、後方から縦パスを出してリッカルド・オルソリーニやソリアーノにつなげ、また自らも攻め上がる。そうして、1-0のリードで迎えた16分にチャンスは訪れた。

 サイドの深い位置でボールを受けると、クルティッチのプレスを苦にすることなくターンをする。そしてエリア手前でフリーになっていたソリアーノを見つけるや否や、正確にパスを出した。そしてソリアーノは、身の回りの十分なスペースを使って左足でシュート。回転の掛かったボールはゴール左下隅に吸い込まれ、2点目が決まった。

 その後もボローニャは試合を支配し、冨安も安定してプレーしていた。しかし前半終了間際にアクシデントが発生する。左CBのマッティア・バーニが足を痛め、プレーの続行が不可能になったのだ。ステファノ・デンスビルが出場停止で、控えは乏しい。その結果、アップもそこそこに投入されたのはSBのイブラヒマ・エムバイエだった。つまり冨安は、CBとしてバーニの穴埋めを命じられたのだ。

 彼がセリエAの実戦でCBとしてプレーするのは、12月22日のレッチェ戦以来。地元紙では「シニシャ・ミハイロビッチ監督が来シーズンは冨安を本職に戻すことを構想している」との報道も度々出てくるが、ここできっちり結果を出すことは当然来シーズンの戦力構想にもつながってくることだろう。そういった点でもパフォーマンスは注目されるものだったが、彼はほぼ完璧にやり切っていた。

パルマの反撃を抑えるボローニャ

 2点のビハインドを負ったパルマのロベルト・ダベルサ監督は、温存していた攻撃陣を立て続けに投入してきた。まずはセンターフォワードの位置は、かつてインテルにも所属していたヤン・カラモ。来季のユベントス入りが決定しているデヤン・クルゼフスキも投入し、積極的に右ウイングの位置からゴールを窺わせる。さらに暫く経てば、長身でパワープレーに滅法強いロベルト・イングレーゼも投入してきた。その全てを、よくコントロールした。

 カラモがスペースに侵入しようとすれば、その鼻先をカバーしてシュートを打たせない。SBの裏へと抜けたクルゼフスキがエリア内へドリブル突破を図ろうとすれば、飛び出して前を向かせない。イングレーゼに対してはダニーロとともに連携を図り、放り込みに対して立ちはだかってボールを触らせず、またシュートミスを誘った。

 人的な対処だけではない。守備に戻る際に味方が帰ってくれば冷静にマークを渡し、自らはダニーロともにすぐさまゴール前でラインを整える。中央のスペースに穴は作らず、シュートを打たせない。そしてボールを奪ってからの処理がまた秀逸だった。パルマの攻撃陣がボールを奪い返しに来る中、全く落ち着き払ってパスを交換。しかも周りもよく見えており、次の攻撃に繋がるところに正確で速いパスを出し続けた。相手のプレッシャーは厳しいものだったが、苦し紛れのプレーはほとんどなかった。

 こういうアグレッシブな姿勢は、サイドバックでプレーしていた時と同様なものだ。88分には、ボールを奪ってそのままドリブルで攻め上がり、パスを展開したのち最前線へ待ち構えるなどというプレーも行っている。別のポジションでの経験をこういう形でセンターバックとして昇華できるようになったということであれば、コンバートは大成功だったということだっただろう。今年に入ってからまだクリーンシートのないボローニャが久々に無失点で抑えられるということであれば、今後もこの位置で起用されるかもしれない。そんな印象も抱かせるものだった。

センターバックの宿命

 ところが、90分を守り抜いたボローニャは、アディショナルタイムでCKからまず失点を喰らってしまう。そして4分を経過しラストのワンプレーだった。パルマDFリッカルド・ガリオーロが左サイドからアーリークロスを上げると、冨安はエリア中央でイングレーゼと競り合う。ところがその際相手が半ば強引に体を寄せ、バランスを崩された彼はボールを視野から離して背を向けてしまった。運が悪いことに、GKウカシュ・スコルプスキもアーリークロスへのアタックに躊躇。ボールが流れたところをイングレーゼは足を伸ばし、ゴールを決めた。

 一度のミスや競り負けが失点に直結してしまうのは、センターバックというポジションの宿命である。そして形はさておいてもなりふり構わず強引にボールを確保し、シュートを決めてくるのがセリエAのFWの厳しさだ。逆に言えばこういう狡猾なプレーにも怯まず対処できる力が、この国で戦うCBには必要なものとなる。

「勝ち点2を失ってしまった」。DFミチェル・ダイクスは悔しがった。授業料は高くついてしまったが、この経験がさらに冨安を成長に導くことを期待したい。

(文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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