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“バルサスタイル”の完全破壊。メッシがいる限り…4-4-2が生んだ悪夢と難題【メッシシステムの呪縛(2)】

歴史のあるヨーロッパのフットボールクラブを「常勝」「“ザ哲学”」「港町」「ライバル」「成金」「小さな街の大きな」「名将」の7つのカテゴリーに分け、それぞれのフィロソフィーがどうなっているのか見てみようと試みた好評発売中の『フットボールクラブ哲学図鑑』(西部謙司著)から、バルセロナの章から一部を抜粋して全3回で公開する。今回は第2回。(文:西部謙司)

text by 西部謙司 photo by Getty Images

伝統回帰のための監督解任だったが…

バルセロナ
【写真:Getty Images】

 ヴァルヴェルデのバルサにとって問題はCLだった。2017/18はラウンド16でローマに敗れ、2018/19は準決勝でリヴァプールに負けている。

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 ローマ戦はカンプ・ノウで4-1と勝利した時点で、準々決勝進出は決まったようなものだった。ところが、アウェーを0-3で落としてしまう。合計4-4、ホームで喫したエディン・ジェコの1ゴールがこれほどの意味を持つとは、その時には誰も想像していなかっただろう。

 0-3で完敗した第2戦は、ローマのハイプレス戦法に対して打開策を見出せないまま押し切られている。相手のプレスをバルサが外し切れない、ボールを敵陣に運べない。これはバルサのスタイルが完全に破壊されたといっていい事態だった。

 すでにバイエルン・ミュンヘンに0-7(2試合合計)で敗れた時、バルサのプレスを外せる相手がCLでは存在することが明らかになっていたが、バルサのビルドアップを破壊できる相手はまだいなかった。しかし、その最後の砦もローマ戦で失ったわけだ。

 2018/19もほぼ同じ結果といっていい。リヴァプールにホームで3-0、アウェーで0-4。中途半端なバルサでは国内なら誤魔化せてもCLでは勝ち抜けない。ヴァルヴェルデ監督の3年目は、バルサ本来のスタイルに立ち戻さなければならなかった。

 2019/20は、アントワーヌ・グリーズマンとフレンキー・デ・ヨンクの獲得で4-3-3への回帰を図る。しかし、スアレスの負傷欠場によって4-4-2へ戻ってしまう。年明け早々にはヴァルヴェルデ監督が解任され、キケ・セティエン新監督に。伝統回帰のための人選だろう。

 メッシがいる限り、バルサの監督は史上最大級のスーパースターといかに共存するか探し続けなければならない。

 バルセロナはもともと時代のスターを獲得してチームを作ってきた。1950年代にはクバラがいた。1970年代もクライフ、アラン・シモンセン、1980年代にはマラドーナ、1990年代はロマーリオ、フリスト・ストイチコフ、21世紀もロナウド、リヴァウド、ロナウヂーニョがプレーした。

 スターとチームの共存で苦労した時期は何度もある。

(文:西部謙司)

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『フットボールクラブ哲学図鑑』


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≪書籍概要≫
本書では歴史の古いヨーロッパのフットボールクラブを「常勝」「“ザ哲学”」「港町」「ライバル」「成金」「小さな街の大きな」「名将」の7つのカテゴリーに分け、 それぞれのフィロソフィーがどうなっているのか見てみようと試みた。
例えばマンチェスター・ユナイテッドは「ミュンヘンの悲劇」によって、「何があっても前進する」精神性を身に付けている。
レアル・マドリーはアルフレッド・ディ・ステファノの補強が大成功し、「計画できないところは選手が補ってくれる」ことを現在も具現化している。
バルセロナはまさに哲学と呼ぶに相応しいものを持っているが、負ける時は負けるべしくて負け、ユナイテッド、レアルのように奇跡を起こすことがあまりない……。
それぞれのクラブにはやはりDNA(遺伝子)があり、“香り”がある。
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【了】

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