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岡崎慎司がウエスカ昇格の立役者に。激動の1年には最高の結末…34歳でスペイン1部初挑戦へ

岡崎慎司が所属するウエスカは現地17日、ラ・リーガ2部第41節でヌマンシアに3-0で勝利し、来季の1部昇格も確定させた。スペイン初挑戦だった日本代表FWは今季12得点目を挙げ、チーム内得点王として昇格の立役者となった。夢の舞台に挑むベテランはまだまだ元気いっぱいだ。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ウエスカ昇格で「夢が叶う」

岡崎慎司
【写真:Getty Images】

 新型コロナウイルスの感染拡大にともなう公式戦中断が明け、欧州各国リーグが佳境を迎えている。

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 スペインではラ・リーガ2部第41節が現地17日に行われ、最後の自動昇格枠が埋まった。来季1部への挑戦権を手にしたのは、ウエスカだ。

 2位で17日のヌマンシア戦を迎えたウエスカは、勝利したうえで3位アルメリアが敗れ、4位レアル・サラゴサが引き分け以下なら自動昇格圏内が確定する状況だった。

 そしてアルメリアはポンフェラディーナに1-2で敗れ、サラゴサもアルバセテ・バロンピエ戦を1-4で落とし、ウエスカはヌマンシアに3-0の快勝。全ての条件が整い、1試合を残しての1部昇格が決まった。

 前節は最下位ラシン・サンタンデールにまさかの敗戦を喫して足踏みを余儀なくされたものの、年間を通して長期の連敗はなく、ウエスカは安定した戦いぶりで常に上位争いに絡んでいた。昨季から継続して所属するメンバーも含め1部での経験が豊富なベテラン陣と、期限付き移籍などで加入した若手選手たちが融合し、非常にバランスのとれたチームでもあった。

 そして、1部昇格の立役者の1人となったのは日本代表FW岡崎慎司だ。彼にとって激動の1年となった2019/20シーズンは、最高の形で終わりを迎えようとしている。初参戦のラ・リーガ2部で36試合に出場して12得点。レスター・シティ時代にプレミアリーグ制覇の経験もあるサムライが、エースストライカーの役割を全うした。

 悲願の昇格を果たした岡崎はウエスカ公式ツイッターで「(最初は)2部に来てでも、(昇格して)スペイン1部でやりたいという夢がこれで叶うので、来季はビッグチームもいっぱいあるし、自分たちはウエスカ初めての残留を1部で果たせるように、チームに貢献できるように、自分がまたゴールを取れるように頑張りたいと思います。応援これからもよろしくお願いします。本当に今日は、応援してくれたファンもおめでとうございます!」と喜びを語った。

らしさ全開のゴールを連発

 もし昨年9月にウエスカに拾われていなければ、1部昇格はおろか、無所属状態が続いていた可能性すらある。スペインでプレーする夢を追いかけてイベリア半島に赴いた岡崎は、当初昨年7月末にマラガ入団が発表されていた。

 ところが、財政的な問題を抱えていたマラガは年俸総額を減らすための選手売却を迫られていた。にもかかわらずカタール人オーナーの動きが鈍く、一向に取引が進まない。その結果、移籍市場閉幕までに岡崎の選手登録ができず、昨年9月2日に在籍わずか1ヶ月で契約を解除せざるを得なくなってしまった。

 そこで無所属となった33歳に手を差し伸べたのがウエスカだった。延長オプション付きの1年契約で、背番号は「12」。ようやくスペインでの挑戦が本格的に始まると、岡崎はすぐさまチームに欠かせない選手となっていく。

 1部昇格を果たしたヌマンシア戦にも4-3-3の1トップで先発出場。そして2点リードで迎えた78分、右サイドを突破したラファ・ミルのクロスに華麗なヒールキックで合わせてゴールネットを揺らした。ニアサイドに飛び込む泥臭さと、速いボールに点で合わせる繊細さが光った、実に岡崎らしい魅力の詰まった今季12得点目だった。

 チーム内得点王となった攻撃面での活躍だけでなく、守備面での貢献も見逃せない。ボールを奪われれば切り替え0秒で相手選手に猛然とプレッシャーをかけ、プレーの選択肢を限定。ミスを誘発したり、雑なロングボールを蹴らせたり、バックパスを選ばせたり、岡崎が起点となってウエスカの組織的な守備を機能させていた。

 こうした献身的な姿勢で攻守に幅広く動き回りながらも、チャンスの局面では必ずゴール前に突っ込んでいく。これが岡崎慎司というストライカーである。潰れ役も厭わず、何度シュートを外しても、すぐに切り替えてボールに食らいつく。もしVARの介入によって何度もゴールが取り消されなければ、シーズン15得点は軽く超えていたはずだ。

 2部とはいえ非常にクオリティの高いサッカーが展開されるスペインで、初挑戦ながら二桁得点は立派な数字と言えるだろう。34歳に衰えは見られない。

スペインではベテランが大活躍中

ウエスカ
【写真:Getty Images】

 来季は念願のラ・リーガ1部でプレーすることができる。2部でも1部でも、スペインではベテラン勢が元気いっぱい。ウエスカでもミケル・リコやペドロ・モスケラ、ルイジーニョ、ペドロ・ロペスといった経験豊富な30代中盤の選手たちが昇格に大きく貢献した。

 また、今季の2部ではおじさんストライカーたちが大活躍を披露している。得点王がほぼ決まったジローナのFWクリスティアン・ストゥアニは33歳、同得点ランク3位のユーリは37歳にして下位のポンフェラディーナで18得点を挙げている。ラス・パルマスのルベン・カストロも39歳で13得点と、鋭いゴール感覚を発揮し続けている。

 さらに1部に目を向ければ、ヘタフェでは38歳のホルヘ・モリーナがエースを担い、33歳のアンヘル・ロドリゲスは二桁得点を達成している。ベティスではホアキン・サンチェスが38歳でハットトリックを決め、ラ・リーガ1部通算550試合出場という偉業も成し遂げた。

 来季のカタール移籍がほぼ決まったと言われるサンティ・カソルラもスペイン代表復帰を果たし、35歳とは思えない躍動感でビジャレアルを引っ張ってきた。これだけ多くのベテランが輝きを放っていたら、岡崎も負けてはいられないだろう。組織戦術が発達しているスペインでは、年齢を重ねた選手が持っている経験や感覚を存分に活かせる環境が整っている。

 岡崎にとって数ヶ月後に始まる新シーズンは、34歳で迎えるスペイン1部でのデビューシーズンになる。マラガでの入団会見の際、「まずスペインでサッカーをやりたくて、自分にとって1部か2部かはあまり関係はなかった」と語っていた。その目標は叶い、所属クラブこそウエスカ
に変わったものの、今度はチームとともに昇格して1部の舞台に乗り込む。

 ラ・リーガではレアル・マドリードやバルセロナが覇権争いをしていて、プレミアリーグ以上に上位と下位の差が開いているため、レスター時代のように“ミラクル”と言われるような結果を残すのは難しいかもしれない。

 だが、来季のウエスカにはクラブ史上初の1部残留という明確かつ現実的な目標がある。今季12得点の自信とともに、34歳のオールドルーキーがホアキンやカソルラに負けないような躍動を見せてくれることを期待したい。岡崎がゴールを決めれば、ウエスカは一歩ずつ残留に近づくことができるだろう。

(文:舩木渉)

【了】

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