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無策…マンチェスター・ユナイテッドは息切れ。失速の原因はスールシャール、残された解決策は

プレミアリーグ第37節、マンチェスター・ユナイテッド対ウェストハムが現地時間22日に行われ、1-1の引き分けに終わった。ユナイテッドは勝てば4位以内が決まる状況だったが、先制したウェストハムに追いつくのがやっとだった。ライバルがともに敗れたことで結果的に3位に浮上したが、最終節を前に不安材料は積もるばかりとなっている。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

マンUは主導権を握ったが…

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【写真:Getty Images】

 一足先に第37節を消化していたレスターはトッテナムに敗れて、勝ち点は62のまま。マンチェスター・ユナイテッドと勝ち点で並び、1ポイント上にはチェルシーがいた。

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 ユナイテッドからしてみれば、このウェストハム戦に勝利すれば、レスターとの最終節を残してUEFAチャンピオンズリーグ出場権を与えられる4位以内に大きく近づく。勝ち点3を掴まなければいけない試合で、ユナイテッドは勝ち点1を取るにとどまっている。

 試合序盤はユナイテッドのペースだった。2分、ブルーノ・フェルナンデスのスルーパスにアントニー・マルシャルがDFラインの裏を抜けてシュート。その1分後にはブルーノ・フェルナンデスのパスを受けたメイソン・グリーンウッドがシュートにつなげている。ここで決めていれば楽な展開になっていた。しかしこの2本はGKウカシュ・ファビアンスキに阻まれた。

 引き分け以上で残留が確定するウェストハムは、前線にミカイル・アントニオを残して自陣の低い位置にブロックを築いた。しかし、前半の途中から高い位置からプレッシャーをかける形に変更し、徐々にユナイテッド陣内でプレーする時間を増やしていった。

 前半終了間際、ウェストハムは自陣でボールを拾うと、アントニオが突破しようとしたところで倒されてFKを獲得した。直接狙うには少し距離がある位置だったが、マーク・ノーブルがずらしてデクラン・ライスがミドルシュートを放つ。すると、これをポール・ポグバが手で防いでしまう。ウェストハムにPKが与えられ、アントニオがこれを決めた。

勤続疲労と無策の指揮官

 ユナイテッドは後半早々に試合を振り出しに戻した。ハーフスペースで受けたグリーンウッドがマルシャルにパス。前を向いたマルシャルとのパス交換からグリーンウッドが狭いエリアを抜け出し、左足を振り抜いてゴールネットを揺らした。

 逆転するための時間は40分も残されていたが、ユナイテッドはこれを浪費した。この後はウェストハムに8本のシュートを許したのに対し、ユナイテッドは3本しか打つことができなかった。試合はこのまま1-1で終了。この直後に行われた試合でチェルシーが大敗したことで、ユナイテッドは3位浮上したが、あまりにもお粗末な内容と結果だった。

 リーグ戦再開後は絶好調だったが、その勢いは完全に止まったと言っていい。サウサンプトンには試合終了間際に追いつかれ、クリスタルパレスには勝利したものの、FAカップ準決勝ではチェルシーに3失点を喫して敗退している。

 間違いなく勤続疲労は低調の原因の1つになっている。中2日で行われたこの試合では4人を変更したが、選手たちの動きは総じて重かった。後半に入ってブルーノ・フェルナンデスやラッシュフォードは精彩を欠いていた。押し込む場面で右利きのブランドン・ウィリアムスが機能しないことは明らかだった。

残された解決策は…

 それでもオレ・グンナー・スールシャールは動かなかった。前半にイエローカードをもらったティモシー・フォス=メンサーを下げてファーストチョイスのアーロン・ワン=ビサカを後半開始から投入。次に動いたのは85分のことで、投入されたオディオン・イガロにとっては時間が足りなかった。

 ウェストハムは引いて守りを固める時間と、前からプレッシャーをかける時間を使い分けていた。ユナイテッドのDFラインはプレッシャーをかけられると、GKダビド・デヘアに戻して長いボールを蹴ることしかできなかった。

 スールシャールはビルドアップの解決策を与えることも、選手を変えたり布陣を変えたりすることもない。ただ、ベンチに座ってタブレットで映像を見直しているだけだった。

 終わった試合はもう戻ってこない。最終節のレスター戦は引き分け以上で4位以内が決まる。敗れた場合はウォルバーハンプトンと対戦するチェルシーの敗北を待つしかないが、ユナイテッドは自力でCL出場権を掴むことができる位置にいる。

 おそらく、スールシャールはレスター戦でもお馴染みのメンバーを起用するだろう。解決策ではないが、選手個々の活躍を祈るしかない。ポグバが個で圧倒し、ブルーノ・フェルナンデスが違いを作り、ラッシュフォード、マルシャル、グリーンウッドがゴールを決める。そして、デヘアにはこれまでのミスを帳消しにするビッグセーブを連発してもらおう。

 再開後の好調も、戦略的な成功ではなく、個人の力が発揮されたことによるものが大きかった。終わり良ければすべて良しではないが、3シーズン連続の国内無冠が決まったこの状況で、2シーズン続けてCLの切符を逃すのはファンもクラブも許さない。運命はスールシャールではなく、主力の彼らが握っている。

(文:加藤健一)

【了】

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