CL決勝、バイエルン勝利の要因は? PSGとのわずかな差、パーフェクトなチームでひと際輝いた男とは【欧州CL】

チャンピオンズリーグ(CL)決勝戦、パリ・サンジェルマン(PSG)対バイエルン・ミュンヘンが現地時間23日に行われ、0-1でバイエルンが勝利。CL全勝優勝という快挙を成し遂げた。PSGとの間にあったわずかな差、そしてとくに輝きを放った人物は、一体誰だったのだろうか。(文:小澤祐作)

2020年08月24日(Mon)10時58分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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バイエルンが完全優勝

バイエルン・ミュンヘン
【写真:Getty Images】

 フランス王者パリ・サンジェルマン(PSG)とドイツ王者バイエルン・ミュンヘン。この両者による今季のチャンピオンズリーグ(CL)決勝戦は、激しい得点の奪い合いになることが予想された。

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 しかし、スコアは0-1。大きな動きのあるゲームではなかった。ただ、ファイナルに相応しい、世界最高レベルの戦いだったことは事実だ。

 試合は、立ち上がりからスピーディーな展開となった。猛烈なプレッシャーを浴びせるバイエルンに対し、PSGも怖気づくことなく強気な姿勢を維持。攻守の入れ替えが目まぐるしく、ピッチに立つ選手はほとんど動き続けていた。

 お互いに攻撃の色を出し、何度かチャンスも作っている。18分にはネイマールがGKマヌエル・ノイアーと1対1を迎えており、22分にはロベルト・レバンドフスキの反転シュートがポストを直撃。その2分後にはアンヘル・ディ・マリアが際どいシュートを放った。

 それでも得点が生まれることなく、0-0のまま後半へ突入。そして、59分にスコアが動いた。

 右サイドのヨシュア・キミッヒが柔らかいクロスを入れると、最後はファーサイドのキングスレー・コマンがヘディング。これが見事ゴールネットに突き刺さった。

 待望の先制ゴールを奪ったバイエルンは、その後も持ち味であるアグレッシブな姿勢を崩すことなくPSGに対応。もちろん何度か危険な場面も作られたが、守護神ノイアーを中心とした守備陣が奮闘し、6度目のビッグイヤー獲得を果たした。

 バイエルンは今季CLで全勝を収めた。これは史上初の快挙である。ニコ・コバチ監督下では安定性を欠いたが、ハンジ・フリック監督就任後の復活ぶりは見事…いや、圧巻と言わざるを得ない。

 ノイアーも「監督の功績は大きい。一緒にたくさんやってきた。彼がチームを再構築したね。僕たちの薬だった。彼が成し遂げたことは驚くべきことだ」と試合後にコメントしている。

 一方、欧州初制覇とはならなかったPSGだが、バイエルンを大いに苦しめたのは事実。彼らもまた、印象的なシーズンを送ったと言えるはずだ。

サイドバックの重要性

 この試合の運命を分けたポイントはいくつかあった。それほど、内容の濃い素晴らしい90分間になったと言えるだろう。

 その中でも取り上げたいのは、両チームのサイドバックのパフォーマンスである。バイエルンのキミッヒとPSGのティロ・ケーラーだ。

 まずはケーラー。右サイドで先発した同選手にはこの日、非常に難しいミッションが与えられていた。それは、バイエルンの左サイド、コマンとアルフォンソ・デイビスの2枚に対応しなければならないことだ。

 実際、ケーラーは世界屈指のスピードスター二人にかなり手を焼いた。インサイドハーフのアンデル・エレーラのカバーが間に合わなかった場合は、さらに厳しい状況に追い込まれてもいた。コマンには1対1で何度かぶち抜かれ、PKギリギリで止めることもあったほどだ。

 ただ、試合全体を振り返ると守備面ではおおむね奮闘していたと言えるだろう。終盤のレバンドフスキを潰したカバーリングなどは、実に見事だった。コマンに対し後手に回った点は確かに否めないが、大きな「穴」ではなかったと言えるはずだ。

 その一方で気になったのは攻撃面である。もともと攻撃で存在感を出すタイプではないが、最終ラインからのパス出しにはやや難があった。

 バイエルンはハイラインだ。そのため、両サイドバックの背後にはスペースが空きやすくなる。実際、この日もディ・マリア、キリアン・ムバッペといった選手がそこを突こうと効果的なランニングを見せていた。

 しかし、ケーラーはその走りに対し効果的なパスを出すことができなかった。これは一度ではなく、複数回あった。さすがのディ・マリアやムバッペも「出してくれ」といったようなアクションを見せたが、厳しいプレッシャーを受ける中、ケーラーにその余裕はなく、無難なプレーに走ってしまったのだ。

 一方のキミッヒはワールドクラスの輝きを放った。ムバッペに対してはスピードに乗らせないよう素早く距離を詰め、ネイマールに対しては我慢強く耐えて簡単に足を出さず。自身が受け持つ右サイドに蓋をした。

 攻撃面でもクオリティーの高さを示している。前半はムバッペの守備を前に苦戦を強いられた印象が強かったが、後半はより攻撃的に出たトーマス・トゥヘル監督がムバッペを右、ディ・マリアを左に回したことでよりボールを持つことができた。

 そして、59分に決勝ゴールをアシスト。コマンの位置を見逃さない、美しいピンポイントクロスであった。このお膳立てを見てもわかる通り、キミッヒは本当に視野が広く、頭が良い。守備対応もピカイチで攻撃もオーガナイズできる背番号32の存在の大きさが、改めて証明されたと言える。

 ケーラーとキミッヒ。プレースタイルの異なる両者を単純に比較することはできないが、こうした「差」がビッグゲームでは大きなポイントとなる。現代サッカーのキーワードでもある「サイドバックの重要性」もよくわかる試合になったことは確かだ。

PSGにとって厄介だったマエストロ

チアゴ・アルカンタラ
【写真:Getty Images】

 ビッグセーブを連発したノイアー、90分間豊富な運動量で攻守に貢献したトーマス・ミュラー、うまく試合に入ったニクラス・ジューレ、サイドで輝きを放ったキミッヒ、決勝ゴールのコマン…。優勝を果たしたバイエルンはこの日もほとんどの選手がMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)級の活躍を見せた。

 その中でもスポットライトを当てたいのは、スペイン代表MFのチアゴ・アルカンタラだ。彼の存在は、PSGにとってかなり厄介だったと言える。

 バンジャマン・パバールが負傷から復帰したこともあり、キミッヒがボランチを務め、チアゴがベンチスタートになるのでは? との予想も多かったが、背番号6はスタメンに名を連ねた。

 1トップに入ったネイマールが守備時にパスコースを消してきたが、チアゴはそこをうまく外して立ち上がりから積極的にボールに触れている。常に意識をゴール方向へと向け、他の選手を的確に活かした。

 スペイン人らしく、とにかくタッチが柔らかい。パスを出すアクションはそこまで大きくないのだが、足首の柔らかさを駆使してボールを弾くようにして味方を使う。当然ながら視野も広くアイデアも多彩なため、対峙する選手からするとボールの行く先を読むのが難しくなる。

 かなり危険なエリアでもボールを持つのだが、蝶のように舞って敵を無力化し、蜂のようにパスを突き刺す。この日のゲームで言えば、29分の場面がまさにそうだ。自陣深い位置でボールを受け、アンカーのマルキーニョスを引き付けながらも奪われず、味方をフリーとしてボールを前進させていた。

 59分、先制ゴールのキッカケを生んだのもチアゴだった。フリーでボールを持つと、相手の中盤の脇を突く見事なパスを通し、キミッヒを活かしている。

 試合後のデータにも、チアゴの凄さはしっかりと表れている。パス本数はチームトップとなる79本を記録しており、成功率は91%と申し分ない数字。まさに「中盤のマエストロ」であった。

 走行距離は9.36kmを記録。チーム内では5番目に多い数字となっている。もちろん攻撃面だけの頑張りではない。守備でも身体を張り、ネイマールやディ・マリアといった選手をしっかりとブロックしている。

 そんなチアゴだが、今季限りでバイエルンを退団することが濃厚だ。移籍先は兼ねてより候補に挙がっているリバプールが有力であるが、どうやらアーセナルも獲得レースに参加するようだ。いずれにせよ、CL決勝という舞台で見せた雄姿は忘れられないものとなった。

(文:小澤祐作)

【了】

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