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セリエA 3年前

ユベントスはどうした? ピルロ監督が直面する強豪の宿命、絶対王者は賭けに勝てるのか

セリエA第4節、クロトーネ対ユベントスが現地時間17日に行われ、1-1のドローに終わっている。クロトーネは開幕3連敗中だったが、ユベントスは勝ち点1を奪うに留まってしまった。アンドレア・ピルロ新監督の下、何が問題となっているのだろうか。(文:神尾光臣【イタリア】)

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

ユベントスは模索中

アンドレア・ピルロ
【写真:Getty Images】

「私はムカついていたんだよ。ユベントスはチームを作っている最中だったから、我われは勝ちに行くことができたんだ。みんなバスに乗り込んでたし、我われは出発できることを望んでいたんだ」。

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 ナポリのジェンナーロ・ガットゥーゾ監督は、17日のアタランタ戦の後で地元メディアに対しこう話していた。新型コロナウイルス感染者が相次いだため、地元の保健当局に出発を止められた結果、不戦敗扱いとなった第3節のユベントス戦を指してのことだ。戦力が整わないためナポリは勝負を逃げたのだ、という言い方もファンやメディアの一部にはされたが、彼らは勝機だと考えていたということだ。

 事実、ユベントスのチーム状態にはそんな“粗”が見受けられた。選手の一部を若手に切り替えるとともに、指導者経験のないアンドレア・ピルロを新監督に迎えたユベントスは、主力の人選もフォーメーションも模索中だ。開幕のサンプドリア戦こそ完勝したものの、第2節のローマ戦では負けにも等しい内容でドローを喫している。

 そして新型コロナウイルス感染検査で陽性反応が出たクリスティアーノ・ロナウドを欠き、開幕3連敗中のクロトーネとの一戦に臨んだ彼らは、この試合でもドローを許すこととなった。

格下相手にも晒した弱点

 基本戦術は、これまでの試合を踏襲していた。攻撃時には3-4-3、いや3-2-5の並びで敵陣のスペースを占有するようにしつつ、守備時には4-4-2状に切り替えてコンパクトな組織を形成するという可変システムだ。ただ各ポジションの顔ぶれは違い、そうやって人選を模索している状況では攻守の切り替えがスムーズにいかない。ローマ戦で晒したそんな弱点は、クロトーネのジョバンニ・ストロッパ監督にも看破されていた。

 中盤でボールを奪われると、守備の陣形が素早く整えられず、特にサイドには大きなスペースができてしまう。クロトーネには、そこを徹底して狙われた。タフなプレスでボールを奪われると、レジスタのルカ・チガリーニを軸に逆サイドへと素早く展開される。こうしてなす術もなくカウンターを喰らい、ボールをゴール前まで運ばれるという寸法だった。

 とりわけピンチを招いたのは右サイドだ。この日はフィオレンティーナから移籍してきたイタリア代表のフェデリコ・キエーザがウイングバックに起用され、後方にはサイドバックを本職とするダニーロが3バックの右としてカバー役にあてがわれた。

 しかしここに守備の連動が成り立たず、スペースは空き放題。そしてひたすらカウンターを喰らった後の11分に早速やられた。素早いサイドチェンジから俊足のアルカディウシュ・レツァに走り込まれ、キエーザもダニーロも捕まえられないうちにスルーパスが通った。慌ててカバーに入ったレオナルド・ボヌッチはこれを倒さざるを得ず、PKを献上することとなった。

 もっとも守備の脆弱なサイドは、攻撃面では力を発揮することとなる。21分、デヤン・クルゼフスキのスルーパスに反応して右のオープンスペースに抜けたのはキエーザ。得意とする正確なグラウンダーの右クロスを相手DFとGKの間へと通し、これをアルバロ・モラタが押し込んで同点。その後もクルゼフスキとキエーザのラインは機能し、決定的なチャンスを幾度か作ることには成功した。

 ピルロ監督にしてみれば、守備のリスクは承知の上で攻撃的な選択をしたということなのだろう。だが問題は、依然守備への切り替え。攻撃の流れが一端切られると、ユベントスはあっさりとカウンターを喰らい続けた。

終盤の息切れに助けられた

 そして後半は、完全にクロトーネにペースを譲ることとなった。ストロッパ監督は思い切って前でボールを奪うように指示をし、アグレッシブなプレスでボールを奪った後は右に左にパスを振り分けていく。守備陣形が整わない影響は中盤にも出ており、ユベントスはプレスの掛け合いでも後手を踏んでいた。

 ピルロ監督はたまらず修正を加える。右サイドにファン・クアドラードを投入し、キエーザを左FWへと移した。ところがその直後、他ならぬキエーザがチガリーニとの接触で一発退場。ボールを狙ってタックルに行った末に体が流れてしまったもので、レッドカードという判定は厳しいものにも思えたが、ピルロ監督は試合後「軽率なファウルだった」と振り返った。

 反撃したい時には数的不利という、弱目に祟り目な展開。76分にモラタがゴールを決めるも、オフサイドの判定で取り消されてしまった。結局ドローで試合をまとめることには成功したが、クロトーネが終盤に息切れしまったことで助けられた印象が強かった。

 新監督就任に加え、獲得選手も若手へとシフトしている。そんな状況ではいきなり満足な結果が出ないのも当たり前ではあるのだが、待つ時間が与えられないのは強豪の宿命だ。

「時間的な余裕はない。我われはチームを建造中の身だが、早く習得をしていかなければならない。我われは若い選手たちでチームを編成しているが、待つ時間はないのだ」。試合後ピルロ監督は地元メディアに語った。

 だが、ピルロ監督にとっても決して簡単な状況ではない。ただでさえコロナ禍にあって、普段よりもプレシーズンが短く練習の時間は取れない状況で、故障やウイルス感染などでメンバーも整わない。主力の人選に目星をつけ、戦術上のウイークポイントを潰しておきたいところだが、20日からはチャンピオンズリーグ(CL)も始まり、ますます練習に時間が取れなくなる。この状態においては、28日のバルセロナ戦はもとより20日のディナモ・キエフ戦も大変な一戦になるだろう。

 チームとして望まれる結果を出しつつ、強化を図っていかなければならない。そんな過酷な状況をいきなりピルロに課したユベントスは、果たして賭けに勝てるのだろうか。

(文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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