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久保建英 3年前

久保建英は何もできなかった上に…。レアル封じの守備に歯が立たず、交代直前に露呈した甘さとは?

ラ・リーガ第7節、カディス対ビジャレアルが現地時間25日に行われ、0-0のドローに終わっている。日本代表MF久保建英はこの日、待望の移籍後リーグ戦初先発を飾った。しかし、インパクトを残すことは叶わず。一方、ある場面では少し甘さを露呈してしまった。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

最後まで「盾」を貫けず

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【写真:Getty Images】

 開幕6試合で3勝2分1敗という成績を収め、上位に食い込んでいたビジャレアルだが、現地時間25日に行われたカディス戦はかなり苦しかった。試合後ウナイ・エメリ監督は「良い試合をしたが、点が足りなかった」と話したが、「良い試合」をしたのはむしろ相手の方だった。

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 前節、アウェイながらレアル・マドリードを1-0で下した昇格組カディスの戦い方は徹底している。4-4-2のブロックを築き、ボールを保持されるのは許容範囲。ファーストプレスの開始位置もハーフウェイライン付近とかなり低かった。

 そんなカディスに対し、ビジャレアルの攻撃陣はエンジンをかけることができなかった。ゲームメイク能力に長けるダニエル・パレホ不在の影響も大きく、4-4-2ブロックを前に必然的に横パスが増える。ボールも人もなかなか前に進めず、ゴールへの可能性を見出せなかった。

 7分には、セットプレーの流れから最後はアルバロ・ネグレドにシュートを流し込まれた。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)レビューの結果、直前にアレックス・フェルナンデスのオフサイドがあったとして得点は取り消しとなったが、試合のペースがカディスにあったことは確かだった。

 結局、ビジャレアルはゴールへの活路を拓けぬまま前半を終えた。45分間で放ったシュート数はわずかに1本で、反対にカディスには3本のシュートを許している。

 後半立ち上がりも前半と同じペースで試合を進めていたビジャレアルは、62分にサムエル・チュクウェゼを投入し、73分にはカルロス・バッカもピッチへ。システムをそれまでの4-3-3からバッカとパコ・アルカセルを2トップに置く4-4-2システムへと変更している。

 しかし、終盤立て続けにチャンスを迎えたものの、GKヘレミアス・レデスマのファインセーブに遭ってゴールは奪えず。90分間で支配率77%という数字を残したが、0-0で試合を終えた。カディスの「盾」をビジャレアルの「矛」が貫くことは、できなかった。

待望のラ・リーガ初先発も…

久保建英
【写真:Getty Images】

 さて、ミッドウィークに行われたヨーロッパリーグ(EL)・グループリーグ第1節、スィヴァススポル戦で1得点2アシストと勝利に貢献した久保建英は、このカディス戦で待望のビジャレアル加入後ラ・リーガ初先発を飾っている。ポジションは右ウイング。ジェラール・モレノらが離脱している今、とにかく結果を残すことが重要だった。

 立ち上がりの4分、久保はパスミスを犯したが、その後すぐに守備へと切り替え自らボールを奪取。このシーン一つ見ても、集中力高く試合に挑んでいることは明らかだった。しかし、その後はチャンスを作るどころか、ボールを持つ機会さえも限られる展開となった。

 先述した通り、ビジャレアルはカディスの4-4-2ブロックに悪戦苦闘。その中で久保は外に張るだけでなく、サイドバックとセンターバックの間のギャップに位置するなど、柔軟に動いた。ただ、チーム全体としてボールの動きが遅く、各エリアでフリーとなる状況は生まれない。久保はパスを受けても横パスやバックパスの選択肢がほとんどとなっていた。

 左サイドバックのアルフォンソ・エスピーノの存在も厄介だった。久保に対しタイトなマークを行い、プレーの幅を狭めてくる。何度か右SBのマリオ・ガスパールが良い攻め上がりでエスピーノのマークを引き連れたが、今度はその一列前にいるA・フェルナンデスが久保を警戒。つまり、マークの受け渡しがかなりスムーズで、一瞬の隙もなかったのだ。

 44分、久保は足裏を巧みに使いながら右サイドを突破し、クロスを放り込んだ。このように、何度か持ち味は示している。しかし、62分間のプレーでシュート数0本、パス成功率67%、キーパス0本と、オフェンスの選手としてはやはり全然足りない数字だ。リーグ初先発のチャンスを得たが、かなり苦い試合となってしまった。

 しかし、この日に関しては久保一人のパフォーマンスを低評価とすることはできない。ビジャレアルはチーム全体として、良い選手がいなかった。

 ただ、一つ気になったシーンがあった。交代する7分前のことである。

 カディスがボールを保持し、右サイドから左サイドへ展開。この時カディスは左サイドに3人が集まっており、それをビジャレアルの選手2人が見ている状況だった。その時久保は、ゆっくりと自陣に戻ってきていた。

 しかし、エメリ監督から「タケー!」と声が届く。その瞬間、久保は何かに気が付いたように駆け足でカディスの選手へのマークに向かっている。ただ、ビジャレアルはそこから崩されてしまい、最後はペナルティーエリア内へ侵入された。

 細かいシーンではある。崩されたのも、久保の責任ではない。しかし、守備への意識が少し薄れていた瞬間であったことは確かだ。

 マジョルカ在籍時にも守備面に関しては色々言われていたが、ビジャレアルとは種類が異なる。前者は攻め込まれる時間が長いため、守備への意識は嫌でも強くなるが、後者は基本的にボールを保持できるチーム。つまり、より攻→守への切り替えという部分が重要になってくる。

 今回の55分の場面で言えば、久保はこの「切り替え」の部分で明らかに遅れていた。エメリ監督の声が届かなければ、さらに反応は遅れていたかもしれない。カディス戦はボールを保持し、攻める時間が長かった。だからこそ、少しの甘さが出てしまったのかもしれない。

 ただ、ラ・リーガ初先発を飾ったことは大きな自信につながるはず。今回は苦しい戦いとなったが、久保ならばその向かい風も追い風に変えていけるだろう。「先発」というミッションは果たした。次なるステップは、リーグ戦での「結果」だ。

(文:小澤祐作)

【了】

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