メッシ、怒りの超絶FK弾。バルセロナで4年総額700億円、前代未聞の契約内容流出問題の全貌とは【分析コラム】

ラ・リーガ第21節が現地31日に行われ、バルセロナはアスレティック・ビルバオに2-1で勝利を収めた。この試合で獅子奮迅の活躍を見せたリオネル・メッシは、直前にスペインメディアで自らの契約内容を暴露されたばかりだった。4年総額で最高700億円(1ユーロ=127円で換算)にもなる契約の内容はなぜリークされたのだろうか。そして、メッシ自身にどのような影響があるのだろうか。(文:舩木渉)

2021年02月01日(Mon)13時28分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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前代未聞の契約内容が流出

リオネル・メッシ
【写真:Getty Images】

 選手個人とクラブの間で結ばれた契約について、かつてこれほど大規模なリークはあっただろうか。

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 スペインの一般紙『エル・ムンド』は現地1月31日に、衝撃の特集を掲載した。そこではアルゼンチン代表FWリオネル・メッシがバルセロナとの間で締結した契約の中身について、契約書のコピーとともに詳細が事細かに明かされていた。

 そもそも選手個人の契約内容がクラブ外部に漏れ出すこと自体が一般的にはありえない話なのである。スペインはおろかJリーグでも「給料はいくらですか?」と聞かれて素直に金額を答える人間はいない。クラブと契約を交わす際に、その内容に関して当事者間で守秘義務を負うことが明確にされているはずだからだ。

 もちろんメッシ本人がメディアに自分の契約書を見せるわけがない。となると、クラブ中枢の人間か、あるいは最後の契約延長に関わったジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長に近しい筋からのリークと考えるのが自然だろう。

 一連の報道を受けてバルサはメッシを全面的にサポートし、『エル・ムンド』紙を非難する声明をクラブ公式サイト上に掲載した。以下、日本語公式サイトから一部引用する。

「本日、FCバルセロナとその選手、リオネル・メッシの間にかわされているプロ契約に関して、エル・ムンド紙に掲載された情報について、クラブは、双方、当事者の間における守秘義務の原則に準じ、私的で独占的な非公開文書であるため、今回の公表に遺憾の意を表するものである。 FCバルセロナは、この文書の掲載において、あらゆる責任を断固として否定し、 エル・ムンド紙に対し、この掲載により、引き起こされる損害に対し、適切な法的手段をとる」

 バルサは先週、2019/20シーズンの年次財務報告書を公開し、クラブの総債務が11億7300万ユーロ(約1490億円、1ユーロ=127円換算)にのぼることが明らかになった。その直後、追い討ちのようにメッシの巨額契約が暴露される異常事態になっている。

 では、実際にメッシとバルサが2017年11月に契約延長した際に約束した報酬の内訳はどうなっているのだろうか。まずセンセーショナルに伝えられたのは、固定給とボーナスの合計が最大で4年総額5億5000万ユーロ(約698億円)にものぼるということだ。

メッシが受け取る報酬額とは?

 これは税込の額で手取りではないが、ざっくり700億円近い給与が発生する契約になっていたということだ。基本給と契約更新ボーナス、ロイヤリティボーナス(=バルサに在籍し続けたことに対するインセンティブ)だけで全体の約87%、出場実績やタイトル獲得などにより変動するボーナスが約13%を占める。

 また、収入全体の内訳は労働契約によるものが85%、クラブに委託する肖像権に関する収入が15%(スペインの法律で定められた最大割合)と規定されている。そしてメッシは今季末で終了する契約のなかで約束された報酬のうち、すでに92%を受け取ることが保証されているという。

 具体的な項目ごとの金額についても触れておこう。まず毎シーズンの基本給が7215万ユーロ(約92億円)、4年総額で2億8900万ユーロ(約367億円)にのぼる。さらに契約更新ボーナスが1億1500万ユーロ(約146億円)、ロイヤリティボーナスが7800万ユーロ(約94億円)に設定されている。ここまでが固定で保証されるものになり、合計約607億円、先述のとおり全体の87%にあたる。

 細かく設定されたシーズンごとのボーナスは以下の通りだ。

60%以上の公式戦に出場:195万ユーロ(約2億4800万円)
CL出場権獲得:195万ユーロ(約2億4800万円)
CL決勝トーナメント進出:111万ユーロ(約1億4100万円)
CL準々決勝進出:167万ユーロ(約2億1200万円)
CL準決勝進出:167万ユーロ(約2億1200万円)
CL決勝進出:167万ユーロ(約2億1200万円)
CL優勝:417万ユーロ(約5億3000万円)
ラ・リーガ優勝:278万ユーロ(約3億5300万円)
コパ・デル・レイ優勝:70万ユーロ(約8900万円)
FIFA年間最優秀選手賞獲得:70万ユーロ(約8900万円)

 これらを踏まえてシーズンごとに受け取っていたであろう額は、毎年の結果によって変動こそするものの、おおよそ8000万ユーロ(約102億円)前後に収束している(※契約更新ボーナスやロイヤリティボーナスを除く)。

 また、続報として現地1日の『エル・ムンド』紙は、来季も残留するか・しないかにかかわらず、現行契約終了の約2週間後、2021年7月15日に約3900万ユーロ(約49億5000万円)をメッシに支払う義務が生じるとも伝えている。これは2020年2月1日までバルサに在籍したことに対するロイヤリティボーナスで、総額の約半分にあたる(残りの50%は2020年3月31日に支払われた)。

財政もガバナンスも崩壊状態

 今回の特集を掲載した『エル・ムンド』紙は、メッシの巨大すぎる契約こそがバルサを破産寸前に追い込んだ元凶かのように書いている。

 だが、おかしな話ではないだろうか。そもそもこの契約が結ばれたのは2017年11月で、バルトメウ会長らがメッシの流出を避けるために契約解除金を引き上げる目的もあった。当然、2019/20シーズンに猛威を振るった新型コロナウイルスの登場など予測できるはずもない。

 むしろメッシの存在によって、バルサはどれだけの利益を得てきただろう。ピッチ上での成功はもちろん、それにともなう巨額の収入、広告塔としての効果、ユニフォームやグッズなどの販売利益など背番号10の影響力は計り知れない。

 メッシがいなければ実現しなかったものも当然多岐にわたって存在するだろう。クラブの総債務が膨れ上がった理由は、決してメッシだけのせいではない。

 長年クラブに大きく貢献してきたエースを後ろからナイフで刺すようなものだ。バルトメウ前政権によるリークも疑われるが、事実がどうであれ、機密情報がどんどん外部に漏れ出す異常事態。こんなガバナンスが完全に崩壊したクラブと、メッシは契約延長を望むのだろうか。一般的な感覚なら、出て行きたいと思う方が自然だ。

『エル・ムンド』紙によれば、メッシには昨季終了時にクラブに契約終了を通告するオプションもあったという。この条項は昨夏の退団騒動時にも話題となったが、新型コロナウイルスの影響により例年より遅れたシーズン終了の時点で行使期限の2020年6月1日が過ぎていたため使われなかった。

 いや、「使えなかった」という方が表現としては正しいかもしれない。メッシはバルサに対して自身の退団意思を通告したが、最終的には今回暴露された契約に設定されていた超高額の違約金がネックとなって実現しなかった(のちに残留してバルサのために全力を尽くすと宣言した)。

 また、メッシの契約には「ソーシャルメディア上でクラブや選手個人を貶めない」といったSNS利用を制限する条項も盛り込まれていた(彼はすでに複数回破っているが)。バルトメウ政権が与えた契約は、巨額の給与を保証する代わりに、実際はメッシに多くの制約を強いるものでもあった。

「報道には悪意があり、傷つけようとしている」

リオネル・メッシ
【写真:Getty Images】

 一連の暴露報道があった当日、バルサはラ・リーガ第21節でアスレティック・ビルバオと対戦した。先月のスーペルコパ・デ・エスパーニャ決勝で敗れていた相手だが、いつも以上に気合いの乗ったバルサの選手たちは難敵を凌駕する充実のパフォーマンスで2-1の勝利を納めた。

 特にメッシの鬼気迫るプレーには目を見張った。20分に芸術的な直接フリーキックでチームに先制点をもたらすと、ボールを持てばドリブルでガンガン仕掛けてゴール前に突進していく。ボールのないところでも守備に走ったり、スペースを作ったり、まるで怒りを源泉にして自らの力を見せつけるかのように走り回った。

 試合後、ロナルド・クーマン監督は「メディアで報じられるものには悪意があり、彼を傷つけようとしている。メッシを尊重しなければならない。彼はスペインサッカーのために多くのことをしてきたのだから」とメッシを全面的に擁護した。

「我々は長きにわたってメッシが世界一だということを目の当たりにしてきた。そして、彼はクラブのためにたくさんのことを成し遂げてきた。試合でも決定的な存在だった。今日ほど彼がモチベーションにあふれている日を私は見たことがない。彼が成し遂げてきたことの全てに敬意を払わねばならない。

起こったことには悪意があり、傷つける意図がある。我々は団結し、集中しなければならない。(メディアで)公開されているものは横に置いておくべきだが、複雑ではある。彼は偉大な選手で、最高の創造性を我々に与えてくれる。レオなしでは多くのことは望めない」

今後の動きは? 契約延長はどうなる?

ジョゼップ・マリア・バルトメウ
【写真:Getty Images】

 指揮官の言葉はメッシ本人の考えも代弁しうるものではないだろうか。誰かの悪意によって“悪者”に仕立て上げられようとしている。歴史上でも類を見ない世界最高の選手を利用して、自分たちの立場を守りたい者がすぐ近くの物陰でうごめいている。

 スペイン紙『マルカ』によれば、メッシはすでに弁護士を通じてジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長、選手との契約交渉を担当していたオスカル・グラウCEO(最高経営責任者)、カルレス・トゥスケッツ会長代理と他2名の提訴手続きを始めるという。

 一方、バルトメウ氏は自身の関与を即座に否定する声明をテレビ番組『Esport3』を通じて発表。「私が契約内容を漏らしたというのは全くの嘘だ。深刻な問題だが、プロ選手の契約を詳らかにするのは違法である。テレビで話したり、非難したりするのは簡単だが、法廷に持ち込まれるもので冗談では済まされない。レオはプロフェッショナルの視点でも、広告的な視点でも報酬を請求するに値する。もし(新型コロナウイルスの)パンデミックがなければ、バルサはあれだけの金額をすべて支払うことができるはずだ」と、自らが法を犯すような真似はしないという姿勢を示した。

 前代未聞のリークだが、メッシを批判するのはお門違い。できるだけ早く、事の真相が明らかになることを願いたい。そして、今後のパフォーマンスにどのような影響が出るか、そして契約満了となるシーズン終了後にどのような決断を下すのか。今回の契約内容流出によって来季以降もバルサ残留の可能性は限りなく低くなったかもしれないが、稀代の名手の動向から目が離せない。

(文:舩木渉)

【了】

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