新生PSG、ポチェッティーノ監督が見出した豪華タレントの活かし方。4-4-2の怖さ、そして大きな課題とは【分析コラム】

リーグ・アンの第23節が現地3日に行われ、パリ・サンジェルマン(PSG)はニーム・オリンピックに3-0で勝利を収めた。痛恨の逆転負けを喫していた前節の悪い流れを引きずることなく、短期間でチームを立て直したのはマウリシオ・ポチェッティーノ監督だ。就任から1ヶ月が経った新指揮官は、欠場者も多くいるなかで徐々に戦い方の方向性を固めつつある。(文:舩木渉)

2021年02月04日(Thu)13時34分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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最下位ニームに3-0完勝

キリアン・ムバッペ
【写真:Getty Images】

 マウリシオ・ポチェッティーノ監督が就任して1ヶ月が経ったパリ・サンジェルマン(PSG)は、ようやく軌道に乗り始めていた。

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 初戦こそ引き分けたものの、就任以降の公式戦5試合で4勝1分と結果も出ていた。ところが現地1月31日に行われたリーグ・アン第22節のロリアン戦は、後半アディショナルタイムに失点を喫して逆転負け。「大きな失望があった」と指揮官自ら認める、痛恨の足踏みとなってしまった。

 短期間でチームの立て直しが求められる状況で迎えた現地3日のリーグ・アン第23節、相手は最下位のニーム・オリンピックだった。PSGは3ゴールを奪って勝利。リーグ最多失点、新加入の日本代表DF植田直通も選手登録が間に合わず出場不可という相手から、危なげなく勝ち点3をもぎ取った。

 ポチェッティーノ監督は「最適なバランスを探しているところ」と試行錯誤の真っ最中で、ニーム戦も完璧な内容というわけではない。だが、週末に控えるマルセイユとの重要な一戦に向けて、徐々にチームに変化を加えていることはピッチ上でのパフォーマンスにも見え始めている。

 かつてトッテナムをUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝に導いたアルゼンチン出身の指揮官は、前体制が採用していた4-3-3から4-4-2への移行を進めてきた。

 新システムであれば、2トップにマウロ・イカルディとキリアン・ムバッペ、左サイドにネイマール、右サイドにアンヘル・ディ・マリアと前線に豊富なタレントを並べることができる。世界でも屈指のクオリティを誇るアタッカー陣のポテンシャルを最大限に活かそうというのが、ポチェッティーノ監督の計画だろう。

 しかし、ニーム戦は主力に多くの離脱者が出ていた。GKケイラー・ナバスやDFマルキーニョスは負傷、MFマルコ・ヴェッラッティは新型コロナウイルスの陽性反応が出たため欠場に。ネイマールは警告の累積により出場停止でスタンドから試合を見届けることになった。

課題はバイタルエリアの攻略

 また、イカルディは休養の意味もあってベンチスタート。2トップにはムバッペとモイーズ・キーンが起用され、左サイドにパブロ・サラビア、右サイドにディ・マリア、中盤にレアンドロ・パレデスとイドリッサ・ゲイェが入った。

 キックオフの笛が鳴って、PSGが常に優位な状態で試合を進めていく。そのなかで主力の一部を欠いた先発メンバーが露呈したのは、これまで抱えていた課題があまり解決されていないということだった。

 ポチェッティーノ監督が仕込んだビルドアップは、そんなに珍しい形ではない。GKのパス出しから組み立てる際には、パレデスが少しポジションを落としてサポートに入り、両センターバックがサイドに大きく開く。サイドバックの2人は高い位置を取り、両ウィングはやや内側に入るような動きを見せる。

 後方の選手たちが前を向いてボールを持てば、2トップの片方かウィングの選手は斜め方向へのランニングで相手ディフェンスラインの背後を狙い、その動きによってできた相手ディフェンスと中盤のライン間に他のアタッカーたちが入り込んでいく。

 ただ、これはあくまで理想の形。実際は相手チームに素早く自陣に引かれてしまうことが多い。そうなった時、相手のコンパクトな守備ブロックを崩すアイディアの少なさが大きな課題となっている。豪華なタレントを揃えていながら、今のPSGには「バイタルエリア」と呼ばれる相手ディフェンスラインと中盤の間にできるスペースを使って崩すような攻撃の形が少ない。

 ネイマールが欠場し、イカルディが終盤までピッチに立っていなかったニーム戦も、3ゴールを奪ったとはいえ満足のいく内容ではなかっただろう。1点目は相手のMFラミン・フォンバの安易なパスミスをディ・マリアがカットしたことによって生まれ、サラビアが決めた2点目はディ・マリアのアーリークロスがアシストになった。

光明が見えたムバッペの3点目

マウリシオ・ポチェッティーノ
【写真:Getty Images】

 リーグ最多失点のニームをようやく崩せたのが、68分の3点目だ。中央でDFを背負っていたモイーズ・キーンにくさびの縦パスが入ると、20歳のイタリア代表FWはワンタッチで出し手のパレデスに返す。ここでニームのディフェンスラインが乱れたのを見逃さず、パレデスは素早く左へ展開。前方にスペースのある状態でボールをもらったムバッペは、右足でカーブをかけたコントロールショットをゴール右に突き刺した。

 ポチェッティーノ監督は試合後の経験で「数週間仕事をしてきて、全員のために最高のポジションを探している」と述べたうえで、2トップの一角に入って結果を残したムバッペを称えた。

「他のアタッカーの隣で、彼は深さを作ることができる。もっと自由があってもいいと思っている。私はあのポジションで彼が見せるプレーが好きだ」

 おそらくPSGはこのまま4-4-2の熟成を進めていくことになるだろう。トッテナム時代のポチェッティーノ監督は主にトップ下を置く4-2-3-1を採用していたが、新天地では前線のタレント力を最大限に引き出せる4-4-2の方にポテンシャルを感じているに違いない。

 バイタルエリアの攻略は大きな課題だが、あえて「トップ下」に固定の選手は置かない。2トップのコンビネーションやウィングの侵入によって常に変化をつけながら自由度の高い形で攻略の糸口を見つけていく。その方が、南米出身の質の高いアタッカーたちの怖さを、相手に思い知らすことができるはずだ。

 ネイマール、ムバッペ、イカルディ、ディ・マリアが揃った時の即興性や破壊力は、相手の立場に立って考えれば考えるほど恐ろしい。まもなく始まるCLの決勝トーナメントに向けても、彼らを万全の状態でピッチ上に揃えることが重要になるのは間違いない。自分たちからアクションを起こして崩す攻撃のパターンが出来上がれば鬼に金棒だ。

 ボールを失ったら素早く守備に切り替えてハイプレスを敢行し、常に敵陣内で主導権を握る。そして安定したビルドアップから、豪華な攻撃陣がバイタルエリアを蹂躙する。ポチェッティーノ監督は、新生PSGの進むべき道を見い出しつつある。

(文:舩木渉)

【了】

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