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リバプールはなぜ崩壊した? 些細なきっかけで揺らぐプレミアリーグ王者のメンタリティ【分析コラム】

プレミアリーグ第24節、レスター・シティ対リバプールが現地時間13日に行われ、3-1でレスターが勝利した。リバプールは先制したものの、約8分間で3失点を喫し、リーグ戦3連敗を喫している。些細なきっかけから始まった連続失点によって、リバプールの守備は崩壊した。(文:本田千尋)

text by 本田千尋 photo by Getty Images

怪我人だらけのCB陣

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【写真:Getty Images】

“崩壊”のきっかけは些細なことだった。2月13日に行われたプレミアリーグ第24節。リバプールはアウェイでレスター・シティと戦った。

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 ユルゲン・クロップ監督にとって苦難の道程は続いている。前節のマンチェスター・シティ戦で、ファビーニョも負傷離脱。怪我人だらけのCB陣の穴をどうにか埋めてきたブラジル代表MFを欠いたことで、このレスター戦で2CBに入ったのはジョーダン・ヘンダーソンと、FCシャルケ04から加入したばかりのオザン・カバクだった。

 本職ではないイングランド代表MFと、ブンデスリーガ最下位のチームからやってきたトルコ代表CBがコンビを組まざるを得ない状況は、もはや苦しいという形容詞を通り越している。CB陣は限りなく崩壊に近い状態と言って過言ではないだろう。

 もっとも、そんなチーム状況であるにも関わらず、前半のリバプールは、シティに1-4でねじ伏せられた前節の大敗を引きずる様子はなかった。立ち上がりから果敢にレスター陣内に攻め込む。3分にはトレント・アレクサンダー=アーノルドが、10分にはヘンダーソンが、それぞれアグレッシブにロングボールを繰り出し、一挙にゴール前でサディオ・マネとモハメド・サラーのチャンスを演出した。

強靭なメンタリティを示したリバプール

 ライバル相手の大敗の後とは思えないほどチーム全体の強度は高く、攻守の切り替えも速い。クロップ監督の十八番のカウンター・プレスが機能したリバプールは、何度となくボールを奪い返した。中盤、敵陣で奪い返し、ロングボールも回収。29分のレスターのカウンターの場面も、ジェイミー・ヴァーディに対してヘンダーソンが冷静に対処する。

 カウンター・プレスが機能し続けたことで、最後尾が直接脅かされる場面が少なかった。縦パスが入ったヴァーディをきっちり抑えるなど、カバクが守備に穴を空けることもなかった。

 前半の残り10分間は、レスターにヴァーディのシュートまで持ち込まれる場面も増えたが、リバプールが主導権を握ったまま0-0で折り返す。比較的早い時間帯の17分、ジェームズ・ミルナーがハムストリングを痛めてピッチを退くアクシデントもあったが、チームの勢いに影響はなかった。クロップ監督のチームは、無残な大敗に屈しない王者の強靭なメンタリティをピッチの上に示したのである。

 後半に入っても、流れはリバプールに傾いたまま。攻守の切り替えが速く、カウンター・プレスが機能する。後はフィニッシュに持ち込むだけ――そして迎えた67分、ついにリバプールが先制する。

 右サイドで、ユーリ・ティーレマンスのサイドチェンジをカットしたアレクサンダー・アーノルドがシュートを打つと、ブロックされたボールをさらに奪い返し、ゴール前のロベルト・フィルミーノへ。ブラジル代表FWは“遊び心”を見せ、ヒールで後方のサラーに落とす。このボールをエジプト代表FWがきっちりフィニッシュ。ほぼ完璧な試合運びの末に生まれたゴールは、連敗からの脱出を十分に予感させるものだった。

崩壊のきっかけは些細な…

 だが、75分にカーティス・ジョーンズに代えてアレックス・オックスレイド=チェンバレンが入ったあたりから、様相は一変する。直後の76分、逆に中盤でボールを奪い返され、ボックスの右側に入るか入らないかところでレスターにFKを与えてしまう。このチャンスをジェームズ・マディソンに直接決められると、“崩壊”が始まった。

 カウンター・プレスが機能しなくなったリバプールは81分、ティーレマンスが蹴ったロングボールに対し、ボールを見ながら下がっていったカバクと飛び出したアリソンが交錯してしまう。こぼれたボールを拾ったヴァーディにそのまま決められ、逆転を許す。

 さらに85分、中盤で横パスを奪われてショートカウンターを食らい、ハーヴィ・バーンズに決められて3失点目。先制しながら同点に追い付かれた途端、瞬く間に失点を重ねていく様は、まるで2006年ワールドカップドイツ大会でオーストラリアに敗れたジーコジャパンのようである。“崩壊”したリバプールは1-3でレスターに敗れ、これでリーグ戦3連敗。クロップ監督にとって悪夢は続いている。

 一見するとシティ戦の大敗を引きずらなかった屈強なメンタリティは、危ういバランスの上に成り立っていた、ということか。“崩壊”のきっかけは、ジョーンズに代わってチェンバレンが入ったことで守備の強度が落ちたことかもしれないし、際どいセットプレーのチャンスをレスターに与えてしまったことかもしれない。いずれにせよ、些細なことだった。

 もちろん加入したばかりのカバクとアリソンが連係ミスを露呈してしまったように、やはりCB陣は限りなく崩壊に近い状況と言って過言ではない。しかし何より、小さなヒビ割れが“崩壊”を招いてしまうほどに、今のリバプールのチーム状態は脆いということだろう。次節のエヴァートン戦で4連敗を喫してしまうようなことがあれば、本当の“崩壊”が始まってしまうかもしれない。

(文:本田千尋)

【了】

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