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香川真司の絶妙なパスに感じる可能性。PAOKでリーグ2戦目、早くもホットラインを形成か?【分析コラム】

ギリシャ・スーパーリーグ第22節、PAOKテッサロニキ対PASヤニナが現地時間15日に行われ、2-0でPAOKが勝利を収めた。香川真司は2点リードの83分に登場。得点に絡むことはなかったが、周囲との連係とコンディションは徐々に向上しているようだ。(文:本田千尋)

text by 本田千尋 photo by Getty Images

雪が降る2月のギリシャ

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【写真:Getty Images】

 背番号23は“クローザー”として投入された。2月15日に行われたギリシャ・スーパーリーグ第22節。PAOKテッサロニキはアウェイで格下のPASヤニナと対戦した。

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 初っ端から余談だが、中継の画面の中、主審がキックオフの笛を鳴らそうとする頃、スタジアムには雪が舞っていた。当地に雪が降ることに意外な印象を受けた。もちろん先入観に過ぎないのだが、ギリシャというと温和なエーゲ海の印象が強い。

 私事で恐縮だが、1度、ロシアワールドカップヨーロッパ予選のプレーオフ、ギリシャ対クロアチアをピレウスにあるオリンピアコスのホームスタジアムで観戦した後、アテネを訪れたことがある。

 確か11月だったと思うが、日本では冬を迎えようとする頃でも、エーゲ海のほとりにあるギリシャの首都の気候は温暖だった。天候は決して良くなく、雨の日もあったが、肌寒くはなかった。これからギリシャの冬に雪が降ることを想像できなかった。

 しかし一口にギリシャと言っても、国土は広い。今節対戦したヤニナのホームは、アテネからは遠く離れた、アルバニアとの国境に近いイピロス地方の県都にあるようだ。エーゲ海の温和な青ではなく、どちらかというと、ギリシャを代表する映画監督テオ・アンゲロプロスが銀幕に映し出す重厚な映像世界に近い。アンゲロプロスの芸術作品と重なるギリシャ・スーパーリーグで、香川真司の新たな挑戦が始まったのである。

香川真司と同僚MFのホットライン

 今回のPASヤニナ戦で、香川は83分からの出場となった。これだけ出番が遅れたのは、そもそも合流してまだ4試合目でチームにフィットし切れていないということと、PAOKが前半からヤニナに対して圧倒的に優勢で、56分、62分とゴールを決めて順調に2-0とリードを広げたからだろう。

 リードを広げてからのPAOKは、自陣に引いてカウンター型にスタイルを変更。それまでポゼッションで圧倒した格下相手に2点を奪っているのだから、省エネモードに切り替えても何らおかしくはない。前節のアポロン戦のように1-1で膠着状態が続いていたわけではないので、パブロ・ガルシア監督としても、攻撃に変化を加える必要はなかっただろう。

 よって83分、香川は“クローザー”として起用された。ミッションと言うほど大袈裟なものではないが、ガルシア監督としては2-0のまま落ち着かせてゲームを終えるような役割を背番号23に期待したのではないか。また、しばらく実戦から遠ざかっていた香川を試合に慣れさせるため、少しの時間でもプレーさせようとする意図もあったのだろう。

 投入されてから、積極的にプレスを掛けに行く様子からは、日本人MFのコンディションはどんどん上がってきているようだ。また、もちろんリスクを冒す必要はないので、シンプルにパスを捌いていった。

 ただ、90分にはボックスの手前から左にいたアムル・ワルダに絶妙なパスを送っている。歴戦の日本人MFが送ったふわりと緩やかな弧を描いたボールを、エジプト代表MFは右足でボレー。ワルダはミートすることはできなかったが、香川とは技術系の選手同士、どこか馬が合うところがあるのかもしれない。今後、香川=ワルダのホットラインが形成される可能性もある。

 また、この場面でワルダのシュートに繋がったロングボール→FWカロル・スヴィデルスキが香川に落とす→香川がふわりとパス→ワルダのボレーという一連の流れからは、少しずつ連係が構築されてきている様子が伺える。

 ヤニナを2-0で一蹴して、PAOKは4位につけている。スーパーリーグは残り4試合。香川としては、プレーオフに向けてコンディションを上げ、周囲との連係を高めていきたいところだ。

(文:本田千尋)

【了】

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