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バルセロナの新システム[3-5-2]はどうなのか? オサスナ戦は「ちょっと幸運」、“奇跡”のために進めた準備だとしたら…【分析コラム】

ラ・リーガ第26節、オサスナ対バルセロナが現地時間6日に行われ、0-2でアウェイチームが勝利している。ロナルド・クーマン監督はこの試合で3-5-2を採用。パリ・サンジェルマン戦に向けフォーメーションの整備を進めていた。そういった意味で、このタイミングでオサスナと当たったことはバルセロナにとって少し幸運と言えるのかもしれない。(文:本田千尋)

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

PSG戦に向けて

バルセロナ
【写真:Getty Images】

 新システムで“奇跡”を起こせるか――。

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 現地6日に行われたラ・リーガ第26節。バルセロナは敵地でオサスナと戦い、2-0で勝利した。

 隙あらばバルサを食ってやろうとするオサスナは、決して簡単な相手ではなかったが、リオネル・メッシがジョルディ・アルバとイライシ・モリバのゴールをお膳立て。“絶対君主”がタクトを振るい、31歳のベテランと18歳の新星がゴールを決める。カンテラ育ちの選手たちが活躍しての完封勝利だった。

 このタイミングでの試合が12位の格下相手だったことは、ロナルド・クーマン監督にとっては、ちょっとした幸運だったのかもしれない。3日前には、国王杯のセビージャ戦を延長も含め120分間フルでこなしたばかりであり、4日後の10日にはチャンピオンズリーグ(CL)の決勝ラウンド1回戦2ndレグ、パリ・サンジェルマン(PSG)戦を控えている。

 つまり、コンディション管理という点では、ここでワンクッション置けるということは、PSG戦に向けて選手たちにとっては体調を整える好機と言える。リーグ戦も含む直近のセビージャとの2連戦で、2トップの一角で起用されて2ゴールと活躍したウスマンヌ・デンベレは、このオサスナ戦ではベンチスタートとなった。

 もちろんオサスナも[5-3-2]で引いて守るばかりではなく、ボールを奪えばバルサの3バックの脇のスペースを突いて前に人数を掛けて攻めてくるなど、決して簡単な相手ではなかった。最近のマンチェスター・シティがプレミアリーグで格下相手に見せているような、一方的な試合にはならなかった。それでも、このタイミングでアトレティコやレアルのマドリード勢と対戦するよりは、はるかにマシだったのではないか。

 次のCL、PSG戦を意識したのか、クーマン監督は67分にセルヒオ・ブスケッツとアントワーヌ・グリーズマンを下げているが、もし今回の試合がアトレティコかレアルとのビッグマッチだったとしたら、こうした余裕を持つことはなかなか難しかっただろう。

バルサに残る一抹の不安

 そして何より、2試合前のセビージャ戦から採用し始めた[3-5-2]の整備を推し進めるという意味では、オサスナは程よい強度の相手だったと言える。この新システムでフレン・ロペテギ監督のチームとの2連戦を制したことで、バルサの選手たちも、クーマン監督が捻り出した[3-5-2]に手応えを得たのではないか。

 言うまでもないかもしれないが、もともと戦術理解度の高い選手たちである。ボールを保持している時の選手間の距離はさらに改善されており、パスもバルサらしくテンポ良く回った。マイボール時の選手間の距離が整備されたことで、攻守の切り替えも、さらにスムーズになっている。

 少し気がかりなのは、被カウンター時の守備がどれだけ機能するかを推し量るのに、オサスナ相手では物足りなかったことだ。

 前の試合の国王杯セビージャ戦では、71分にカウンターからPKを与えたが、攻守の切り替えがスムーズになったとは言え、このオサスナ戦でも34分、するするとカウンターからサイドチェンジを許し、ルベン・ガルシアにGKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンとの1対1まで持ち込まれている。まだ少し脇が甘いところがあり、キリアン・ムバッペを要するPSGのカウンターの破壊力はオサスナを遥かに上回ることを考えると、一抹の不安は残る。

 クーマン監督は、オサスナ戦の後半から4バックに変更したが、PSG戦はデンベレを2トップの一角に戻して[3-5-2]の布陣でスタートするのではないか。思い切ってデンベレとメッシが2トップを組む[5-3-2]でドン引きし、割り切ったカウンター狙いでも面白そうだが、その布陣はバルサのアイデンティティが許さないだろう。

 PSG戦で“奇跡”を起こすために、新システムの[3-5-2]は、少し心許ない。

(文:本田千尋)

【了】

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