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リバプールは手遅れだった。封じられたファビーニョ、なぜレアル・マドリードに主導権を握られたのか?【CL分析コラム】

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝1stレグ、レアル・マドリード対リバプールが現地時間6日に行われ、3-1でレアルが勝利した。公式戦3連勝と復調の気配を見せていたが、CL3連覇を成し遂げたレアルに主導権を握られた。(文:加藤健一)

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

ファビーニョは存在感を失った?

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【写真:Getty Images】

 リバプールはアーセナル戦を3-0で制し、公式戦3連勝と復調の気配を見せていた。しかし、レアル・マドリードのようなトップレベルの相手に対して、特に前半は何もさせてもらえなかった。

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 復調のポイントはファビーニョのアンカーにあったようだ。フィルジル・ファン・ダイクらの離脱によりセンターバックでのプレーが続いていた。しかし、オザン・カバクとナサニエル・フィリップスのコンビが徐々にフィットしたことで、ファビーニョを本職に戻すという決断に至る。

 ファビーニョはどちらのポジションでも高いパフォーマンスを発揮できる。しかし、最終ラインで起用すれば、DFラインの前のスペースをカバーし、ピンチを未然に防ぐ選手がいなくなる。このプレーができるのは、今のリバプールではファビーニョしかいない。センターバックで起用すると、この背番号3がまだ加入する前の脆いリバプールに戻っていた。

 レアルはロングパスを多用していた。MFがDFラインの近くまで降りてきて、一気に前線にボールを入れる。どれほど優秀な選手でも、頭上高くを通過するボールには何もできない。ファビーニョのパフォーマンス自体は良かったが、良さが出ないような戦いにレアルが持ち込んでいた。

レアルが一発勝負に強い理由

「戦術はいたちごっこ」と、あるJリーグの指揮官は言っていた。トレンドの戦術があれば、すぐにそれに対応する戦い方が生まれる。ペップ・グアルディオラ監督を筆頭とするポジショナルプレーも、ユルゲン・クロップ監督が好むカウンタープレッシングもそうだろう。一時的に強さを見せるチームはあるが、勝ち続けるためには多様性を身に付けなければいけない。

 レアルはロングボールを多用して主導権を握ったが、この戦い方にもリスクはある。ボールを持ったときにカゼミーロが高い位置を取り、クロースがDFラインの近くまで降りてくる。ここでボールを失うと、本来カゼミーロがカバーしていたエリアが空白になる。カウンターの局面でスペースが生まれるシーンが何度かあった。

 この日の3トップはディオゴ・ジョタ、サディオ・マネ、モハメド・サラーの3人で、アーセナル戦で膝の怪我から復帰したロベルト・フィルミーノはベンチスタートだった。ジョッタやマネは深さを作るプレーが得意で、ライン間のスペースを生むには効果的な起用だった。

 その点で見ると、ナビ・ケイタの交代が痛かった。ボール奪取力に優れ、運ぶ能力も高いケイタはこの試合で輝くはずだった。しかし、ゲームにうまく入れず、41分に交代を命じられた。データサイト『whoscored.com』によるボールタッチ数は27回で、交代したチアゴ・アルカンタラの半分以下となっている。

 チアゴを投入したことでポゼッションは安定したが、ライン間でボールを受けられるケイタを失った。フィルミーノとジェルダン・シャキリが投入されたのは80分。しかし、2点をリードしていたレアルはブロックを敷いてスペースを埋めていた。ライン間で仕事のできる2人を投入したが、時すでに遅しだった。

「いたちごっこ」のサッカーに正解はない。だからこそ、一瞬でも決断が遅れると、リバプールのように手遅れになってしまうのかもしれない。

(文:加藤健一)

【了】

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