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リバプールが示した“反撃者としてのメンタリティ”。逆転勝利後にクロップ監督が説いたフットボールの心理とは?【分析コラム】

プレミアリーグ第31節、リバプール対アストン・ヴィラが現地時間10日に行われ、2-1でリバプールが勝利した。前半にリードを許す苦しい展開を強いられたが、後半アディショナルタイムに逆転に成功している。“生き地獄”から抜け出したリバプールは“反撃者としてのメンタリティ”を示したと言えるだろう。(文:本田千尋)

text by 編集部 photo by Getty Images

「本当に簡単ではなかった」リバプールの逆転勝利

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【写真:Getty Images】

 完全に“生き地獄”から抜け出したのだろうか。現地時間4月10日に行われたプレミアリーグ第31節。リバプールはアストン・ヴィラ相手に苦しみながら2-1で勝利した。前半は優勢に試合を進めながら、43分にオリー・ワトキンスのゴールで先制を許した。しかし、57分にモハメド・サラーが1点を返すと、終了間際にトレント・アレクサンダー=アーノルドが叩き込んで逆転勝利。アンフィールドで“不屈の魂”を示したレッズは、ホームの連敗を6で止めた。

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 際どい勝利の後で、ユルゲン・クロップ監督は“真理”のようなものを説いている。

「シュートを枠内に飛ばした場合にのみ、フットボールの試合に勝つことができることを我々は知っている。そのためには適切なポジションを取る必要があるし、適切な態度、適切な気分、適切な欲望、適切な攻撃性といった類のモノを持つ必要がある。今日の我々は本当にそれらのモノを持っていたと思う。なぜならアストン・ヴィラは、彼らがプレーする特定のやり方、彼らのスピードやそういった類のモノによって、対峙してプレーすることが本当に簡単ではなかったからだ」

 このようにクロップ監督が振り返ったように、エースのジャック・グリーリッシュを欠いていたとはいえ、アストン・ヴィラ戦は「本当に簡単ではなかった」。

“負のスパイラル”は脱したはず…

 前半は主に、前でプレスを掛ける→相手に蹴らせる→中盤で回収する、といった一連の流れが機能してリバプールが主導権を握った。アンカーのファビーニョだけでなく、ジェイムズ・ミルナーとジョルジニオ・ワイナルドゥムもボールを回収し続け、ロベルト・フィルミーノやディオゴ・ジョタがライン間で受けてシュートを放つ。

 しかし、クロップ監督が「シュートを枠内に飛ばした場合にのみ、フットボールの試合に勝つことができる」と言うように、レッズの選手たちはチャンスこそ創り続けたが、フィニッシュの精度を欠いた。挙句、43分にショート・カウンターを食らって、ワトキンスに正面からシュートを決められてしまう。

 ファビーニョが本来のアンカーに復帰したことで、チームはリズムを取り戻し、“負のスパイラル”から脱したはずだった。それでもホーム連敗の“悪夢”は終わらないのだろうか……。

 この嫌な流れの中で前半を折り返したが、心は折れなかったようだ。サラーは「前半の後のロッカールームでは誰もが話し合っていた」と言う。後半に入ると、リバプールの選手たちは、勝利への「適切な欲望、適切な攻撃性」をピッチ上に示した。4日前にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)でレアル・マドリードに敗れたとはいえ、やはり“負のスパイラル”を脱したことで、チームのメンタリティは上向きのようだ。

 繰り返すが、アストン・ヴィラ戦は「本当に簡単ではなかった」。敵は1点リードしたからと言って、決してどん引きでゴールの前を固めることはない。最終ラインを適切な高さに保ち、コンパクトな陣形と強度の高い守備で苦しめてくる。しかし、アストン・ヴィラがどん引きではなかったことが、リバプールにとって幸いだったとも言える。

サラーは「4位に入るために戦う」

 57分に自陣右サイドの深い位置でボールを奪うと、テンポ良く逆サイドに回して、前に繋ぐ。なまじブロックで固められていないことで、容易にボールを運ぶことができた。さらに上がってきた左SBアンドリュー・ロバートソンがシュート。GKエミリアーノ・マルティネスが弾いたこぼれ球を、サラーが押し込んで同点に追い付いた。

 エジプト代表FWは「反撃すること、それが最も重要なことだ」と言う。

 そしてリバプールの誰もがこの試合を1-1で終えることに満足してなかったようだ。サラーは「良かったのは僕らが後半も戦い続けたことだ」と言う。失点してからもヴィラの選手たちは引かず、がつがつプレスに来て、攻め込んでくる。リバプールの選手たちは「適切な態度、適切な気分、適切な欲望、適切な攻撃性」を示し続ける。

 そして、クロップは攻撃的なカードを切る。70分、ワイナルドゥムに代えてチアゴ・アルカンタラ。75分、オザン・カバクに代えてジェルダン・シャチリ。センターバックを削ってFWを投入し、たたみかけるレッズの選手たち。

 すると91分、試合終了間際。遂にアーノルドが「本当に簡単ではなかった」ヴィラを食い千切った。

 苦しみながらアストン・ヴィラ戦に勝利したことで、リバプールは5位に浮上。4位のチェルシーとは勝ち点差2である。“生き地獄”を脱したことで希望の光が見えてきた。

 サラーは言う。

「僕たちは4位に入るために戦う。僕らは来季のチャンピオンズリーグでプレーしたい」

“反撃者としてのメンタリティ”

 エジプト代表のエースが望むように、今季は4位以内でフィニッシュし、リバプールは来季もCLに出場できるだろうか。

 クロップ監督は楽観的ではない。

「最終的に、もし我々がCL出場圏内で終えることができたら、 それは本当にとてつもないことだ。しかし、それはトリッキーで、難しく、我々にとって本当にハードだよ」

 熱血漢の指揮官は、14日のCLレアル・マドリード戦後に対戦する、とりわけ次節のリーズ・ユナイテッド戦が簡単ではないと捉えているようだ。

 クロップ監督は「タフな試合になる」と言う。

「今日マンチェスター・シティを相手に戦った彼ら(リーズ)を観た誰もが、それは公園を散歩するようなものではないことを知っている」

 しかし、上位陣の今後のスケジュールに目を遣ると、3位のレスターと4位のチェルシーは直接対決を残している。加えてチェルシーは首位のシティとの対戦を、レスターは2位のマンチェスター・ユナイテッドとの対戦を残している。もちろんリバプールとしては残りの7試合を全勝する勢いが必要になるが、ライバルたちの試合の結果次第では、「本当にハード」だが「CL出場圏内で終える」可能性もある。

 ここまで来たら、戦術的に何かを変えることは意味をなさないだろう。それは余計な混乱を招きかねない。重要なことは「適切な欲望、適切な攻撃性といった類のモノを持つ」こと。いわば“反撃者としてのメンタリティ”が問われるのではないか。

 サラーは言った。

「反撃すること、それが最も重要なことだ」

(文:本田千尋)

【了】

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