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アーセナルはなぜ快勝できたのか? アルテタ監督のゲームプラン遂行に不可欠だったMFの万能性【EL分析コラム】

UEFAヨーロッパリーグ(EL)準々決勝2ndレグ、スラヴィア・プラハ対アーセナルが現地時間15日に行われ、0-4で快勝したアーセナルが準決勝進出を決めている。負傷者を多く抱える中で、ミケル・アルテタ監督は左サイドバックにグラニト・ジャカを起用。中盤を本職とする元主将のプレーは、アーセナルに安定感をもたらした。(文:加藤健一)

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

立て続けに3得点を奪ってアーセナルが圧倒

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【写真:Getty Images】

 アーセナルは強かった。1stレグでは終盤に先制しながら終了間際に失点して引き分け。どちらかと言えば、嫌な流れを感じていたのはアーセナルだったはずだ。公式戦23戦無敗で、ELでレスターやレンジャーズといった英国勢を破ってきたスラヴィア・プラハはある程度の手ごたえを持って2ndレグに臨んできた。

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 しかし、アーセナルはそれを返り討ちにした。まずは14分にゴールネットを揺らす。右サイドのカットインから放たれたブカヨ・サカのシュートは、GKオンドレイ・コラーシュの手に当たりながらファーサイドのポストに弾かれたが、こぼれ球をエミール・スミス=ロウが押し込む。アーセナルが先制したかに見えたが、オフサイドとなり得点は認められなかった。

 アーセナルの流れは止まらない。スミス=ロウがペナルティーエリア内で囲まれながらボールをキープすると、ラストパスがニコラ・ペペに。GKの頭を越すシュートはゴールへ収まり、アーセナルは貴重なアウェイゴールを手にした。

 アーセナルに与えられたPKをラカゼットが決めて点差を2点に広げる。24分には右サイドに展開すると、カラム・チェンバースからパスを受けたサカがカットインからシュートを放つ。ニアサイドを狙ったシュートにGKコラーシュは一歩も動けず、アーセナルは3点目を奪った。

 77分にはニコラ・ペペのクロスをラカゼットが収めてゴールネットを揺らす。アーセナルは交代カードを切りながら守備の強度を保ち、完封勝利を収めた。

安定感をもたらしたジャカの役割

 4点を奪って快勝したが、数字には圧倒された様子が表れていない。シュート本数は8本ずつで同数、ボール保持率はスラヴィア・プラハが58%で上回っている。

 しかし、試合を通して主導権を握っていたのはアーセナルだった。ボールを頻繁に失うこともなければ、奪われた後の対応もスムーズだった。ボール保持率が低くても、パス成功率は82%と高かった。ボールを持つときとブロックを固める時のメリハリが効いていた。

 グラニト・ジャカがチームに落ち着きをもたらしていた。中盤を本職とするジャカは、直近のシェフィールド・ユナイテッド戦に続いて左サイドバックに入っている。負傷離脱しているキーラン・ティアニーの代役として、ジャカに白羽の矢が立った。

 ジャカのタスクは、ティアニーのものとは異なる。ビルドアップの際はセンターバックとともにDFラインに残り、低い位置からパスレンジの広さを活かす。これはジャカがボランチでプレーするときと似ている。

 幅を取る役割は、セバージョスとニコラ・ペペが分担していた。セバージョスがタッチライン際に開けば、ペペはサイドバックを引き連れて深さを取る。ペペが開いてボールを受ければ、セバージョスは高い位置を取ってサポートに入る。3人の関係性は素晴らしかった。

「ゲームプランが素晴らしかった」

 エクトル・ベジェリンとセドリック・ソアレスがベンチに座り、右サイドバックにはカラム・チェンバースが起用されている。ダビド・ルイスが不在だったDFラインに高さのある選手が入ることで、その穴を埋めた。

 チェンバースとジャカはサイドへのロングボールを跳ね返し、スラヴィア・プラハの攻撃を分断していた。この日はチーム全体で6本のシュートブロックを記録。相手に枠内シュートを許さず、GKベルント・レノにセーブ機会を与えなかった。

「このように勝つことができるなら、どのポジションでプレーするかは気にならない」。そう語るジャカは後半途中から本職のMFに回り、ベンチに下がったラカゼットに代わってキャプテンマークを巻いた。

 ピエール=エメリク・オーバメヤンがマラリアに感染したことが分かり、マルティン・ウーデゴールやダビド・ルイス、ティアニーも欠場が続く。難しいやりくりを強いられる中で、アルテタ監督は適切なバランスを見つけた。

 ジャカは「90分を通して素晴らしいパフォーマンスを見せた」と手ごたえを感じている。「監督が与えてくれたゲームプランが素晴らしかった」と指揮官を称えたが、それを遂行できたのもジャカのユーティリティー性と献身性があってこそだった。

(文:加藤健一)

【了】

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