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アーセナルは2つの問題を抱えている。アルテタ監督は“白旗宣言”、CL出場権獲得に必要なのは…【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

プレミアリーグ第33節、アーセナル対エバートンが現地時間23日に行われ、0-1でアーセナルが敗れた。GKベルント・レノのミスが決勝点につながったが、敗因は別のところにありそうだ。アーセナルが来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権を獲得するには、見直さなければいけないものがある。(文:本田千尋)

アルテタ監督は“白旗宣言”

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【写真:Getty Images】

 ヨーロッパの舞台が遠のいた。現地時間4月23日に行われたプレミアリーグ第33節。いつものようにアーセナルはボール支配では優位に立ちながら、76分にGKベルント・レノのミスでエバートンに先制点を献上した。右サイドを突破してきたリシャリルソンのグラウンダーのクロスを、ドイツ代表GKはキャッチし損ねてしまう。ボールは後ろにコロコロと転がり、ゴールに吸い込まれていった。

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 この1失点が致命傷となり、アーセナルは0-1で敗北。エバートン戦終了時の暫定順位は9位となり、リーグ戦の結果で来季UEFAヨーロッパリーグ(EL)出場の切符を掴むことは極めて難しくなった。

 試合後にミケル・アルテタ監督は、“白旗宣言”に等しいコメントを残している。

「(プレミアリーグからヨーロッパの舞台に到達することは)現状、数学的に非常に難しくなっている」

 アーセナルが来季もヨーロッパの舞台でプレーするためには、今季のELを制覇して来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得するしか道はなさそうだ。

 もっとも、このスペイン人指揮官は、敗戦に直結するミスをしたレノを責めたりはしない。試合後にクラブメディアに対して、次のように語った。

「彼には『誰もがミスをする、それはフットボールの一部だ、君は気分を上げて次のチャレンジに集中するために準備をしなければならない』と伝えるつもりだ」

アーセナルが抱える2つの問題

 エバートン戦におけるアーセナルのそもそもの敗因は、レノのミスとは別のところにあるように思える。

 1つは人員不足だ。現在、SBキーラン・ティアニーが靭帯を痛め、FWピエール=エメリク・オーバメヤンは代表期間中にマラリアに感染し、FWアレクサンドル・ラカゼットは前節のフラム戦でハムストリングを痛め、それぞれ離脱している。

 特にラカゼットが戦列を離れたことは、アルテタ監督にとっても痛かったかもしれない。今回のエバートン戦で、フランス代表FWの代役として先発したのはエディ・エンケティア。U-21イングランド代表FWの能力の高さは疑いようがないが、周囲との連携が不十分だった。フラム戦ではチームを敗戦の淵から救ったが、エバートン戦では決定的な仕事が出来なかった。

 もう1つは、前節フラム戦の後でも指摘したが、やはり“ジャカの左SB起用”だ。ボールポゼッションを高めるという意味では、パスワークに優れたスイス代表MFをSBで起用することは理に適っている。しかし、ボランチとSBでは守備の仕方が異なるところがある。

 ジャカのサッカー選手としての能力を否定するわけではない。不慣れなポジションでの起用なので仕方がないが、守備面に目を遣ると、サイドでの1対1には難点があるようだ。

困難なミッションを達成するために必要なのは…

 エバートンに先制を許した場面では、1対1の局面でジャカがボランチのようにボールを狩ろうとして、リシャリルソンにかわされてしまっていた。前節フラム戦の時点で“ジャカの左SB起用”は不安定だったので、このエバートン戦では、左SBのポジションにセドリック・ソアレスを起用してもよかったかもしれない。

“ジャカの左SB起用”は、応急処置としては悪くないだろう。だが、「自分ではFWだと思っていたが他人から見ると素質はSBだった」といったような、その選手の本質を見抜いた上でのコンバートではないので、どうしても効果は限定的にならざるを得ないようだ。

 シーズンが終わりに近づき、個々の選手にも疲労が蓄積し、負傷離脱者も出ている。アーセナルのチーム状況は芳しくはない。それでも「今季のELを制覇して来季のCL出場権を獲得する」という困難なミッションを達成しなければならない。そのためには攻守のバランスを見直し、そのための人員配置を整理する必要がありそうだ。

(文:本田千尋)


●まさかのミスが決勝点に… アーセナル対エバートン ハイライト

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【了】

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