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セリエA 3年前

セリエAの消えた逸材たち。天国から地獄へ…才能を開花させられなかった5人の選手

シリーズ:編集部フォーカス text by 編集部 photo by Getty Images

10年W杯、スアレスのハンドで…

ドミニク・アディアー
【写真:Getty Images】



ドミニク・アディアー(元ガーナ代表)

生年月日:1989年11月29日
現所属クラブ:無所属

 ガーナ国内リーグで台頭したアディアーは、2008年夏にノルウェーのフレドリクスタへ移籍して欧州上陸を果たす。そして翌2009年、U-20ワールドカップで大会MVPと得点王を獲得する大活躍を披露し、決勝でブラジルを破ってガーナを初優勝に導いた。

 そして大会直後、この才能に目をつけたミランが同選手の獲得に踏み切り、2010年1月にイタリアへ渡った。当然ながら世界的な強豪ですぐに出番を得られるわけがなく、トップチームではシーズン終了まで1試合も出場なし。それでも同年夏の南アフリカワールドカップに出場するガーナ代表メンバーに選ばれた。

 迎えた準々決勝、相手はウルグアイ。この試合での出来事を記憶しているファンは多いだろう。1-1でもつれて延長戦に突入し、あの事件が起きた。ルイス・スアレスの決定的な得点機会を阻止するハンドである。それによって得たPKを外したアサモア・ギャンが注目されがちだが、ウルグアイの猛獣をハンドに走らせたヘディングシュートを放ったのがアディアーだった。これが決まっていれば、彼の未来は大きく変わっていたかもしれない。

 ワールドカップから戻ったアディアーにミランでの居場所はなく、当時セリエBのレッジーナへ期限付き移籍。その半年後にはセルビアの名門パルチザンに貸し出されるも、なかなか結果を残せなかった。その後、2011/12シーズン前半戦は当時トルコ2部のカルシヤカへ期限付き移籍し、同シーズン後半戦はウクライナ1部のアルセナル・キエフへと赴いた。

 結局、ミランでは1試合も出場しないまま2012年夏にアルセナル・キエフへ完全移籍するも、芽が出ることなく、クラブの破産にともなって契約が解除され2014年1月に無所属となってしまう。そこからは半年の求職期間を経てカザフスタンで短期間プレーし、欧州サッカー界を去ることとなった。

 欧州で居場所を失ったアディアーがたどり着いがのは東南アジアだった。2015年2月から4シーズンにわたってタイ1部リーグのナーコンラーチャシーマでプレーした。ただ、二桁得点は2017年の一度だけ。かつてU-20ワールドカップでMVPを獲得し将来を嘱望されたころの華やかさや輝きは完全に失われてしまった。

 2019年はタイ2部にカテゴリを落とし、シーサケットFCでプレー。2020年は同じリーグのチェンマイ・ユナイテッドに籍を移したものの、現在は無所属となっている。

【了】

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