レアル・マドリード、チェルシー戦の完敗はなぜ? 疑問が残るポイント、大きな脅威となった男とは【欧州CL分析コラム】

2021年05月06日(Thu)11時46分配信

シリーズ:分析コラム
text by 小澤祐作 photo Getty Images
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チャンピオンズリーグ(CL)準決勝2ndレグ、チェルシー対レアル・マドリードが現地時間5日に行われ、2-0でホームチームが勝利。2戦合計スコア3-1でチェルシーがマンチェスター・シティの待つ決勝戦へと駒を進めた。ジネディーヌ・ジダン監督率いるマドリーは、なぜ完敗を喫してしまったのだろうか。(文:小澤祐作)

3バックがハマらなかった

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【写真:Getty Images】

 様々な予想が飛び交う中、ジネディーヌ・ジダン監督はこの大一番で3バックシステムを採用してきた。負傷明けのセルヒオ・ラモスやフェルラン・メンディをさっそく使い、古巣対戦となるエデン・アザールも起用。好調ヴィニシウス・ジュニオールは前線ではなく、右ウイングバックでの先発となった。

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 3-1-4-2で挑んできたチェルシーを前に、立ち上がりマドリーは3バックが大きく幅を使いながら相手の2トップに対し自陣で数的優位を保ってパスを回している。そこからWBなどを経由し、敵陣への侵入を図っていた。

 それを見たトーマス・トゥヘル監督は、ティモ・ヴェルナーとカイ・ハフェルツの2トップ+メイソン・マウントをマドリー3バックの前に立たせている。こうしてアウェイチームのビルドアップのテンポを落とす狙いだった。

 マドリーは3バックの間にカゼミーロやトニ・クロースが落ちることで再び数的優位な状況を作り出そうとする場面があった。しかし、それはあくまで自陣深くにおいての状況なので、支配率こそ高かったが得点の気配という意味では皆無。チェルシーの守備をどう崩そうか模索しながらのパス交換だった。

 無理に縦パスを差し込んでも、出足が鋭く人に強いチェルシー守備陣を前に中盤でロストを連発。そしてカゼミーロの脇を突かれショートカウンターを浴びることが珍しくなかった。前半から、ペースは完全にチェルシーへと傾いていたのである。

 マドリーは28分、ヴェルナーに点を許しリードを奪われるのだが、それでもギアが上がらなかった。足元への各駅停車パスばかりが増え、スペースを突くボールはほとんど出てこない。それにより、スピードのあるヴィニシウスとF・メンディという両WBの良さは完全に消失。ライン間をうろつくアザールもまったくと言っていいほど攻撃を活性化できていなかった。

修正しなかった後半

 ゴールへの希望を見出せず、1点も失ってしまったマドリーは結局0-1のまま後半に向かうのだが、ジダン監督は前半から変化を加えることがなかった。

 もちろん、チェルシーとしてはリードを奪っているし、ペースも握っていたので慌てる必要はまったくない。後半も流れは完全にホームチームだった。

 ジダン監督は63分に動くのだが、F・メンディとヴィニシウスを下げマルコ・アセンシオとフェデリコ・バルベルデを投入しただけでフォーメーションはそのまま。繰り返しになるが、チェルシーはこの時点ですでに対マドリーの「型」が出来上がっているので、人を変えるだけではなかなか揺るがない。マドリーは選手の配置をイジる必要があったが、ジダン監督はその行動に出なかった。

 変化のないアウェイチームは前半同様高い位置で人を捕まえられショートカウンターを頻繁に浴びる。ぶっつけ本番のS・ラモスが自陣深くにおいてヴェルナーやハフェルツとの1対1を強いられるなど、かなり厳しい状態に陥っていた。GKティボー・クルトワのファインセーブもあり1-0のまま時間は進んでいたが、マドリーはもっと早い時間に3-0以上にされていても不思議ではなかった。

 ジダン監督は76分にカゼミーロを下げロドリゴ・ゴエスを投入。より攻撃的にいく姿勢を示したが、やはり選手を変えるだけでチェルシーは崩れない。そして85分、自陣深くでセカンドボールを拾われ、そのまま持ち運ばれて最後はマウントに勝負ありの2点目を決められてしまった。

 結局マドリーは90分間で支配率68%を記録したが、シュート数は7本、被シュート数は15本と大きな差をつけられてしまった。とくに後半は一方的な内容で、マドリーは3本しかフィニッシュに繋げることができていない。0-2で済んでまだ良かったと言うべきだ。

 結果的な話になってしまうが、ジダン監督はやはり後半に大きく修正する必要があっただろう。3バックに固執せず、4-3-3に変更→ヴィニシウスを高い位置に上げ相手WBの背後、3バックの脇を狙った攻撃の機会を増やすなど、とにかくチェルシーの「型」から外れることをしなければならなかった。怪我人も多い中CLベスト4に名を連ねた手腕は流石と言うべきだが、この試合の采配に関してはやはり疑問が残ってしまったと言わざるを得ない。

マドリーを苦しめた小さな巨人

 また、マドリーはこの日、ある男に大きく苦しめられた。それが、MFエンゴロ・カンテだ。

 無尽蔵のスタミナと小柄な体格からは想像できないフィジカルの強さ、ボール奪取の上手さ、そして縦への推進力などを兼ね備えるフランス代表戦士は、攻守において圧倒的な存在感を示している。マッチアップした選手にほとんど仕事を与えず、幾度となくカウンターの起点に。3人ほどいるのでは? と思うほど、とにかくプレーの量が多かった。

 マドリーの1失点目はカンテのアクションがキッカケとなった。アンドレアル・クリステンセンからパスを引き出した背番号7にナチョ・フェルナンデスが飛び込むもワンタッチで外され、その後ヴェルナーとのパス交換でS・ラモスとカゼミーロも置き去りに。最後は数的不利な状況からハフェルツにシュートを許し、クロスバーに弾かれたところをヴェルナーに押し込まれた。

 そして85分の2失点目を招いたのもカンテのプレーから。セカンドボールに対し素早く反応され自陣深くでボールを奪われると、その後プリシッチに繋がれ、そこからのラストパスをマウントに押し込まれてしまった。

 データサイト『Who Scored』によると、フル出場したカンテはシュート数1本、タックル成功数1回、空中戦勝利数2回などを記録。インターセプト数5回はジョルジーニョに次ぐ全体2位の数字で、キーパス3本は同1位の成績だった。チェルシーがショートカウンターをバンバン炸裂させることができたのは、間違いなくカンテの力が大きかった。

 カンテはプレイヤー・オブ・ザ・マッチに選出されている。UEFAテクニカル・オブザーバーのジョン・ピーコック氏は「接戦の中で多くのことをカバーした。守備から攻撃、攻撃から守備への切り替えが素晴らしかった」とフランス代表MFを評価していた。マドリーにとっては、カンテに攻守において仕事を与えてしまったのは、大きな痛手だったと言わざるを得ない。

(文:小澤祐作)

【了】

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