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EURO2020 3年前

ベルギー代表は「個」で戦術を打ち破った。3-0の好発進、悲願の優勝へより求められるものとは?【ユーロ2020分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

なぜ後半にベルギーの勢いは落ちたのか



 しかし、ロシア代表が残り45分で意地を見せた。

 チェルチェソフ監督は後半頭に中盤のドミトリ・バリノフを下げてDFイゴール・ディヴェエフを投入。システムをそれまでの4-2-3-1から、やり慣れた3バックへと変更したのである。

 結果的には、という形にはなるが、これが功を奏した。前半は守備時4-4-2で自陣においてブロックを築くということを徹底していたが、3バックへと変更後はよりアグレッシブなディフェンスを行うように。後半立ち上がりには高い位置でボールを奪い、いきなりロマン・ゾブニンがフィニッシュに持ち込んでいる。

 前半はあまりプレッシャーのない中、ティーレマンスを中心にパスを動かし続けることができていたベルギー代表だったが、ロシア代表のシステム変更後はらしくないミスが見られるなど攻撃がスムーズにいかない。2点リードしているため焦りのようなものはなかったが、停滞感は否めなかった。

 事実、後半のスタッツを見ると、ベルギー代表は相変わらず高い支配率を記録していたが、シュート数は前半よりも4本少ない3本。これはロシア代表のそれと変わらない数字である。戦術面では、ロシア代表の方が上回っていた。

 しかし、ベルギー代表にあってロシア代表になかったのは個の力だ。後者は積極的な守備がハマり何度か良い形でショートカウンターを仕掛けたが、ゴール前で精彩を欠く場面が散見された。一方でベルギー代表は苦戦するも、88分にムニエとルカクの二人だけで崩し切り3点目を奪っている。

 試合後、2得点で勝利の立役者となったルカクは「前半のパフォーマンスは素晴らしかった。チャンスを作れたが、後半は少しだらしなかった。ミスをしてしまったから、この大会で勝ち進むにはその点を改善しなければいけない」とコメント。よりチームとしてプレー精度を高めていくことを求めた。

 ベルギー代表の個の力は大きな魅力で、この日のように苦戦してもいとも簡単に打開できるということが多々ある。一方で個に頼り過ぎてしまうというのもベルギー代表の課題であり、よりレベルの高い相手と当たった場合の不安は小さくない。もちろんまだ初戦を終えたばかりだが、ルカクの言う通り、チームとしてプレー精度を継続して高められるかが、頂点への条件と言えそうだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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