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EURO2020 3年前

まさに完敗。オランダ代表に一体何が起きた? 「重要なもの」が欠如、11人なら勝てていたのか【ユーロ2020分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

運命を変えた「2つの場面」



 相手にペースを握られたまま後半45分間に臨むことになったオランダ代表は、開始わずか10分間で2つの重要なシーンを作り出している。結果的にはという形になるが、これが勝負の分かれ道だった。

 まず1つは52分の決定機逸失。なかなかリズムを取り戻せない中、マレンが中央を突破しGKトマシュ・ヴァツリークとの1対1を作り出すのだが、背番号18はシンプルに打たず守護神を抜きにかかる。しかし、これをヴァツリークにガッチリと止められてしまった。「たられば」は禁物だが、この1点が入っていれば、試合の流れは大きく変わっていただろう。

 それに追い打ちをかけたのが55分の場面。意図的に手を使い相手の決定機を阻止したとして、マタイス・デ・リフトが一発退場を命じられたのだ。

「レッドカードの後、相手にプレッシャーをかけることができなかった。状況はさらに厳しくなった」と試合後、主将ワイナルドゥムが話した通り、ただでさえ悪い流れにあったオランダ代表は、この数的不利によりもっと深刻な状況へと追い込まれることになった。チェコ代表のマンツーマンディフェンスは強度が落ちず、ボールを奪っても前に出られない。オレンジ軍団は自陣に張り付けにされている状態だった。

 チェコ代表がガンガン前に来る中、フランク・デ・ブール監督率いるチームはなんとか耐えていたが、68分にセットプレーから先制点を献上。さらに80分にはショートカウンターを浴びて絶好調パトリック・シックに点を奪われるなど、それまでギリギリ繋がっていた命綱がプツリと切れてしまった。

 試合後、退場となったデ・リフトは「僕の行動が原因で負けた」とコメント。続けて「相手も多くのチャンスを作っていたとは思えなかった。しかし、レッドカードが違いを生んだのは明らかだ」と話している。確かに一人少ない状況でなければ、0-2というスコアはつかなかったのかもしれない。

 ただ、オランダ代表が最後まで11人で戦えていたとしても、チェコ代表に勝てていたかは微妙なところである。なぜならこの日の彼らは、現代サッカーにおいて最も大事なものを欠いていたからである。

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