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EURO2020 3年前

評価爆上げイタリア代表が苦戦…スペイン代表は完璧。では、なぜ勝ち切れなかった? 最後まで響いた弱点【ユーロ2020分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

ゴール期待値は…



 先述した通りスペイン代表に手を焼いたイタリア代表はほぼ守備の時間を過ごしており、攻撃の形はカウンターが主だった。しかし、彼らはその中でもフェデリコ・キエーザがワンチャンスを活かし、1点を奪っている。

 対してスペイン代表は16本のシュートを放ちながら1点を奪うに留まった。イタリア代表の守備が素晴らしかったことはもちろんだが、準々決勝のスイス代表戦同様、決定力不足を露呈したのも明らかである。事実、120分間におけるゴール期待値(xG ※そのシュートが得点に繋がる確率がどれだけあったかを示すもの)はイタリア代表が「0.78」でスペイン代表は「1.74」というデータが出ている。エンリケ監督率いるチームは、それを下回ったことになる。正直なところ、PK戦までに決着をつけるべきゲームだった。

 冒頭でも紹介したが、スペイン代表は今大会において90分間で勝利できたのは1回しかなかった。今回のイタリア代表戦もそうだが、とにかく勝ち切れない試合が多かったのだ。計6試合で四度も最少得点に終わった攻撃陣の責任は、やはり決して小さくない。

 優勝した2008年のユーロと2010年南アフリカワールドカップではダビド・ビジャが得点王に輝いた。2012年のユーロでは切り札としてフェルナンド・トーレスが輝き、彼も得点王に輝いている。強き時代には、高確率でゴールを奪える絶対的なFWがいたのだ。

 サッカーは支配率ではなく、点を多く取った方が勝つスポーツ。その能力に抜群に長けた選手が一人でもいればと、どうしても感じてしまうのが、まさに今大会のスペイン代表だった。

 とはいえ、若手選手も多かったスペイン代表がイタリア代表戦で披露したパフォーマンスは素晴らしいもので、今後への期待感は高い。あとはモラタやジェラール・モレノ、あるいは他のFWが絶対的な存在となることを願うばかりだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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