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EURO2020 3年前

イングランド代表の強さはどこに? 偶然ではない決勝進出、勝ち続けるチームの戦略とは…【ユーロ2020分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

両者の間に生じた差



 1-1で迎えた後半は消耗戦となった。まずは右センターバックのアンドレアス・クリステンセンが足を痛める。ここでデンマーク代表は3枚替えに踏み切り、3-5-2の陣形で中盤の枚数を増やした。しかし、これが裏目に出てイングランド代表が押し込む時間が続く。前半のシュート数は4本ずつだったが、後半は10対1とイングランド代表が攻め続けた。

 GKカスパー・シュマイケルを中心とするディフェンス陣は90分まで耐え抜いたが、限界は近づいていた。

 右サイドに移ったスターリングがドリブルで大外から仕掛ける。ペナルティエリアに侵入してタッチライン際に切り込むと、倒れてPKを獲得する。かなり微妙な判定だったが、VARは明確な判定ミスとは認めず、オン・フィールド・レビューも行われなかった。ケインのキックはシュマイケルに止められたが、こぼれ球をケイン自ら押し込んでイングランド代表が勝ち越した。

 クリステンセンやトーマス・ディレイニーが足を痛めて交代したように、デンマーク代表の足は止まっていた。対するイングランド代表は120分間、同じテンションでプレーすることができた。ここが120分で決着がついた理由に他ならない。

 イングランド代表はここまであまりメンバーを変えずにきたが、あまり無理をしないのがここまでの戦い方だ。DFラインでボールを回すときもゆっくり時間をかけ、引いて守ることも厭わない。ハイリスクハイリターンのトランジションを減らすことで、消耗を防いでいたのかもしれない。その戦略がここにきて大きな差となって表れた。

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