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リバプール、今季初黒星はなぜ起きた? 世界的CBの“怒り”が意味したもの、浮かび上がった弱点とは【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

原点に立ち戻る良いタイミング?



 55分にライスを起点とするカウンターを喰らった時は、中盤をドリブルで進むサイード・ベンラーマをアレクサンダー=アーノルドが手を使って止めてしまい、イエローカードを提示される。そして67分、敵陣の中央でサディオ・マネがクレイグ・ドーソンとライスに挟まれてボールを失い、カウンターを仕掛けられると、ドリブルで突き進むジャロッド・ボーウェンからボールを奪い返すことができず、最後はフォルナルスに決められてしまう。

 さらに、3点目を献上することになった74分の場面。失点そのものはCKからクルト・ズマにヘディングで叩き込まれたものだったが、問題はそのCKに至る過程だった。

 ここでも中盤でプレスが掛からず、アントニオに抜け出され、ファン・ダイクが対応してCKに逃れたが、直後にオランダ代表CBは怒りを露わにしている。そして、その直後にセットプレーから失点する様子は、まるで1失点目のリプレイ観せられているようだった。それからリバプールは76分に投入されたディボック・オリギが83分に1点を返したが、反撃はそこまで。2-3でウェストハムに敗れた。

 ファン・ダイクの「後半に入って、おそらく僕たちは少し急ぎ過ぎた」という言葉は、「少し急ぎ過ぎた」ことでボールを失った時の守備が疎かになった、と言い換えることができるだろう。より正確に言えば、前半開始直後の失点に至る場面からプレスがしっかりと掛かっていなかったことを踏まえれば、「少し急ぎ過ぎた」ことで、“カウンタープレスがイマイチ機能しない”という課題を「後半に入って」も修正することができなかったということになるだろうか。

 敵の強固な守備ブロックに苦しんだウェストハム戦では、“引いた相手の崩し”というリバプールの課題が改めて浮き彫りになったが、それは同時に“カウンタープレスがイマイチ機能しない”という“弱み”も浮かび上がらせた。

 このカウンタープレス――ドイツ語で言うところのゲーゲンプレスは、そもそもユルゲン・クロップ監督の十八番だったはず。しかし、率いるチームがカウンターに特化してばかりもいられず、ボール・ポゼッションも課題となった過程で、クロップ監督本来の“強み”が少し疎かになったところもあるのではないか。

 これからリーグ戦はインターナショナル・ブレイクに入るが、ここは“原点”に立ち戻る丁度良いタイミングなのかもしれない。

(文:本田千尋)

【了】

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