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“次に来る”新世代の名将は…。欧州王者を生んだ最高峰の若き指導力【ジョルト・ローの章・前編】

text by 結城康平 photo by Getty Images

昨季チェルシーのCL制覇に大きく貢献したジョルト・ロー(チェルシー アシスタントコーチ)。そのキャリアのスタートと恩師トゥヘルが評価する能力に迫る。好評発売中『フットボール新世代名将図鑑』から、世界的名手をチームプレーヤーに導くマンマネジメントの達人として収録「ジョルト・ロー」の項を一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:結城康平)

「プレッシングフットボールの哲学を理解した素晴らしい指導者」

ジョルト・ロー
【写真:Getty Images】

 地元ハンガリーの強豪ウーイペシュトのユースで育った左SBは、母国で選手として成長すると代表に定着。ドイツ2部でプレーしていたジョルト・ローのキャリアは、1つの出会いによって一変する。下部でプレーしていた青年を、当時は地方リーグに所属していたホッフェンハイムに誘ったのは当時の指揮官ラルフ・ラングニックと盟友ヘルメート・グロースだった。

 ステップダウンとなる移籍に乗り気ではなかったローを、ラングニックの価値観が揺るがす。何度か移籍を断った彼に個人的に連絡し、そこでラングニックはトレーニングセンターやスタジアム建築を含めた計画を詳細に説明。明確な哲学を含めたホッフェンハイムの描く未来を共有した。ラングニックの情熱に揺り動かされ、地方リーグへの移籍という賭けに乗ったことで、彼の新たな人生が動き出す。

 数シーズンでブンデスリーガまで駆け上がった快進撃の立役者になると、マインツに加入。そこでは、トーマス・トゥヘルが率いるチームの一員となる。ベテランの域に達していた左SBをトゥヘルは重用し、そこで彼の頭脳を高く評価することになる。

 人間的にもトゥヘルとラングニックに影響を受けた彼は、フットボールの奥深さに興味を持つ。引退後に指導者としてのキャリアをスタートした彼は、恩師ラングニックが就任したレッドブルグループの掲げたプロジェクトに心酔。2012年にレッドブル・ザルツブルクでアシスタントコーチとして指揮官をサポートする役割を課せられた彼は、アドルフ・ヒュッターのチームで2冠を達成した。

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 そして、彼が待ち望んだ再会の時が訪れる。RBライプツィヒの監督に就任したラングニックの右腕として、コーチングチームに誘われたのだ。迷うことなくレッドブルグループのトップクラブに異動した彼は「ラングニックには感謝しかない。彼がいなければ、私は指導者になっていなかった」とコメントしている。

 ラングニックも「選手として活躍し、指導者としても私のチームで重要な役割を果たしていた。特に選手とのコミュニケーションスキルに優れている」と愛弟子を評価している。何度かトゥヘルもローをコーチングスタッフに誘ったが、当時の彼はレッドブルグループとラングニックを信奉していた。

 ラルフ・ハーゼンヒュットルのコーチングチームでは、現在バイエルン・ミュンヘンでアシスタントコーチを務めるダニー・レールとともに「トレーニングの計画と実行」を担当していた。プレッシングスタイルのチームにおいて重要視される強度を求められるトレーニングをデザインすることで、選手たちに正しく負荷を与えていた。

 ハーゼンヒュットルも「プレッシングフットボールの哲学を理解した素晴らしい指導者」とローを絶賛しており、SDとなったラングニックは「レッドブルグループの支柱となる男」とコメントしている。

(文:結城康平)

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