フットボールチャンネル

なぜバルセロナはエル・クラシコで大勝できたのか? シャビ監督がもたらす秩序とレアル・マドリードが犯したミス【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

機能していなかったレアルの策



 その要因は、バルセロナの側にあったというよりも、むしろレアルの側にあったと言えそうだ。

 カリム・ベンゼマを負傷で欠いたことで、アンチェロッティ監督は、少し奇妙な布陣を採用。4バックの前の中盤を、カゼミーロ、フェデリコ・バルベルデ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチの4枚で構成し、左右のウイングにヴィニシウス・ジュニオールとロドリゴを配置した。この変則的なシステムについて、イタリア人指揮官は次のように説明した。

「モドリッチが10番でプレーしたのは、後方から出て行ってロドリゴ、バルベルデ、ヴィニシウスとともに相手のラインの後ろのスペースを狙って行く狙いだった」

 このようにアンチェロッティ監督はモドリッチを「10番」で起用したと語ったが、実際の試合中のクロアチア代表MFの立ち位置は曖昧で、このアイデアは全くと言っていいほど機能していなかった。「10番」と表現されるようにはポジションの性格がはっきりせず、モドリッチは、まるで夢遊病者のようにピッチ上を漂った。他ならぬモドリッチ本人が、この起用法に最も戸惑ったかもしれない。

 守備時にモドリッチは[5-4-1]のブロックの先頭に立ったが、ファーストDFとして機能せず、よってバルセロナの両CB、ジェラール・ピケとエリック・ガルシアは時間的な余裕を持ってボールを出すことができた。

 さらにモドリッチの「10番」起用は、前線からの守備の強度の低下を招いただけでなく、チーム全体の守備組織をも機能不全に陥らせた。これによって、F・トーレス、フレンキー、ペドリらが流動的に動くことで、レアルは選手たちの間を悠々と掻い潜られ、必然的にバルセロナにポゼッションを高めて試合の主導権を握られてしまった。

 もちろんバルサの側にも要因はある。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top