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スペイン代表が示した“新たな強さ”。黄金期再来か? ポルトガル代表戦で見えた新スタイルを体現するMFとは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

圧倒的なボール保持戦術からの脱却



 この試合で先制点が生まれたきっかけはポルトガルの攻撃だった。ラファエル・レオンが左サイドからドリブルで仕掛け、エリア内にクロスを供給。しかし、このボールに対して誰もポルトガルの選手は触れることができず、ボールはガビの下へと渡った。ここから一気にスピードアップし、ガビとモラタ、パブロ・サラビアの計3選手でお手本のようなカウンターを完結させてみせた。

 このシーンこそルイス・エンリケ率いる今のスペイン代表を象徴するシーンだ。今のスペイン代表はボールを奪うとまず前を向く。前線の選手は中盤の選手からパスが出ることを理解しており、それを信じて相手DFの背後へと動き出す。そこにパスが出て決定的なチャンスが作られるのだ。この試合でもカルロス・ソレールやガビが中盤でボールを奪った際、その直後にフェラン・トーレスが動き出すというシーンは何度も見られた。

 約10年前のビセンテ・デル・ボスケが率いていた時代のスペイン代表では考えられない「即時奪還からの速攻」が今の彼らのスタイルである。約10年前であれば80%近くボールを握り、常に相手陣内でプレーするというのがスペイン代表のスタイルであった。それが今では40%〜50%ほど相手に少しボールを保持させ、最終ラインのビルドアップに対してハイプレスを仕掛けてショートカウンターを完結させる。ポルトガル代表は試合序盤からこのハイプレスに苦戦し、特に前半はレオンやアンドレ・シウバにロングボールを送るだけの攻撃が続いた。

 その後、何度もチャンスを作ったソレールやジョルディ・アルバが決定機を逃し、追加点を奪えず。逆に一瞬の隙を突かれ、82分にポルトガルに同点に追いつかれてしまった。最終的に試合は1-1のドローに終わったが、ファイナルサードで見られた微妙な連係のズレなどの課題は残りのネーションズリーグの試合で調整できれば問題ないだろう。

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