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「悪いプレーを思い出せない」冨安健洋はアーセナルを変えた。即戦力として示した実力、唯一残念だったのは?【21/22欧州日本人総括コラム】

シリーズ:21/22欧州日本人総括コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

いきなり証明された冨安健洋の力



 ラムズデールは足元に不安のあったベルント・レノに代わり、第4節ノリッジ戦から守護神に君臨。抜群の反射神経を生かしたビッグセーブを何度も披露し、ビルドアップでも質の高いプレーを連発した。加入当初は「レノがいるのに必要なのか」といったような意見もあったが、実力でその雑音をかき消したと言える。

 そして冨安である。

 ボローニャ在籍時から能力は飛び抜けて高いものがあった。外国籍選手に劣らぬ体格を誇っていて、スピードもあり、両足を使えて、さらに賢い。これがプレミアリーグという世界最高峰の舞台でどれだけ通用するのかが大きな焦点となったが、日本の若きDFはすぐにその力を証明した。

 冨安の主戦場は、アーセナル最大のウィークポイントと言われていた右サイドバックだった。ラムズデールと同じく第4節ノリッジ戦でアーセナルデビューを飾ると、いきなり完封勝利に貢献。第6節、トッテナムとのノースロンドンダービーでは韓国代表FWソン・フンミンに仕事を与えずチームを3-1勝利に導き、サポーターや複数メディアから大きな称賛を受けることになった。

 その後も冨安は主力として右サイドで奮闘。気づけば、デビュー戦から15試合連続でスタメン入りを果たすことになった。控えにはセドリック・ソアレスがいたが、もはや同選手との差は誰の目にも明らかだった。

 冨安は年明けに長期離脱を強いられてしまうことになるが、戦列復帰後に再び評価を高めている。

 第36節リーズ戦で、アーセナルでは不慣れな左SBとして出場すると、相手の攻撃の核であるハフィーニャを完封。それだけでなく、うまくインサイドにポジションを取りながらビルドアップをスムーズに行うなど、眩い輝きを放ったのである。試合後、各メディアからは絶賛の嵐だった。

 アーセナル1年目の冨安の成績はリーグ戦21試合出場、計1683分間のプレーだった。シーズン途中の長期離脱による影響もあり、他の選手と比べると決して多い数字とは言えないが、プレー内容は申し分なかったと言っていい。地元紙『フットボール・ロンドン』には「守備は完璧。技術にも優れ、弱点であった右SBを瞬時に強みの一つに変えた」と評価されており、怪我さえなければ最高点だった可能性もあるとも紹介されていた。

 また、同紙のカヤ・カイナック記者は冨安をシーズンMVPに選出。「アーセナル加入以来、日本代表選手の悪かったプレーをほとんど思い出せないし、彼が最終ラインにフィットして物事を一変させた」と評価している。チームは目標であった来季のチャンピオンズリーグ(CL)出場権を逃してしまったが、冨安の活躍ぶりはその悔しさが薄れるほどのものがあっと言っていいだろう。

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