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プレーモデル、プレーコンセプト、プレースタイルの違いを教えてもらえますか? 女子バスケ日本代表という成功例【フットボールの主旋律/前編】

text by 庄司悟 photo by Getty Images

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ポジショナルプレー、インテンシティ、戦術的ピリオダイゼーション……。最先端理論が広がるとともに、サッカー界に横文字が氾濫しているが、正しく理解されているのだろうか。そして、[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]という3つの言葉を定義するとともに、カタール・ワールドカップを控える日本代表に必要な[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]を考えなければいけない。『フットボール批評issue37』(9月6日発売)から“異端のアナリスト”の連載を一部抜粋し、前後半に分けて公開する。(文:庄司悟)


プレーモデル、プレーコンセプト、プレースタイルの違い


【写真:Getty Images】

 編集長から一通のメールが届いた。文面には「プレーモデル、プレーコンセプト、プレースタイルの違いがいまいちわからないので教えてもらえますか」と書いてある。言われてみれば確かに、この3つの言葉は定義が曖昧なまま、日本のサッカー界に跋扈しているフシがある。

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 チームに落とし込む順序としては、プレーモデル→プレーコンセプト→プレースタイルで異論はないだろう。あとはそれぞれを横文字ではなく日本語で表現できないかと思案したところ、順に志(こころざし)→智恵(ちえ)→流儀(りゅうぎ)という言葉が浮かんだ。さらに万人に伝えやすくするために贅肉を削ぎ、「志」→「智」→「儀」とするのはいかがだろうか。志は目標であり、智はサッカー以外のジャンルからもたらされる知恵袋であり、儀は哲学・個性・こだわりでもある(図1)。

 例えば、2021年の東京五輪で銀メダルを獲得したバスケットボール女子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチ(現・男子日本代表ヘッドコーチ)が当てはめた志・智・儀は以下のとおりだった。まず、志は東京五輪で金メダルを取ること、そして智は相手の身長を動きで上回ること、最後に儀は5アウト(5人全員が3ポイントラインの外に広がり攻める戦術)を基本とすること(図3)、といった具合である。

 思えば、ホーバスヘッドコーチが掲げた志・智・儀は、それこそ万人にも非常にわかりやすく、かつ明確すぎるほど明確だった。志の「金メダル」にいたっては「決勝で米国代表に勝って」という注釈までつけている。また、智の「動き」はスピードを重要視することにつながり、儀の「5アウト」はすなわち3ポイントシュートにこだわることにつながる。

 目標、知恵袋、哲学・個性・こだわりをはっきりさせることで、日本人の脳に巣くう体格差というハンディを見事に消し去ってみせた。ホーバスヘッドコーチがプレーモデル、プレーコンセプト、プレースタイルの定義をそれぞれ理解し、明確に示すことができたからこそ、歴史的な銀メダル獲得につながったといっても過言ではないだろう。

(文:庄司悟)

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 特集:[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]を再定義する
流行りの横文字にだまされるな
日本社会全体に横文字が氾濫しているのと同様に、サッカー界にも横文字は横溢している。日本サッカー協会が7月15日にホームページに公開した全55ページに及ぶ選手育成の指針名「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan’s Way」からして、現状の趨勢を表しているといっていい。もちろん、本文中にもこれでもかと言わんばかりに、横文字が散りばめられている。

 小誌は今回、サッカーチームの指針ともいえる横文字[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]の再定義に挑んだわけだが、前記の「国民的蹴球哲学」(あ・え・て)ではこの3用語ではなく[プレービジョン](26~32ページ)という表現が使われている。ガクッ……。指針を表す横文字でさえ各所で統一されていない現状では、迷い人が量産されるのは目に見えている。「STOP 横文字被害! 私はだまされない」。急場しのぎとして、ひとまずこの姿勢が重要かもしれない。

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【了】

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