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サッカー日本代表のボール支配率は35%でいい。「3・3・1・3」「4局面→0局面」がグループE突破のカギ【フットボールの主旋律/後編】

text by 庄司悟 photo by Getty Images

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ポジショナルプレー、インテンシティ、戦術的ピリオダイゼーション……。最先端理論が広がるとともに、サッカー界に横文字が氾濫しているが、正しく理解されているのだろうか。そして、[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]という3つの言葉を定義するとともに、カタール・ワールドカップを控える日本代表に必要な[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]を考えなければいけない。『フットボール批評issue37』(9月6日発売)から“異端のアナリスト”の連載を一部抜粋し、前後半に分けて公開する。(文:庄司悟)


「3・3・1・3」「4局面→0局面」というキーワード


【写真:Getty Images】

 では、今年11月に控えるカタール・ワールドカップに向けたサッカー日本代表の志・智・儀は現状どのようなものになっているのだろうか。

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 森保一監督の過去の発言などからまとめると、志はグループリーグ突破、あわよくばベスト8に入ること、智はこれまで積み上げてきたものをさらに出すこと、儀は判断力と対応力を高めること(図3)と、どれも極めて曖昧模糊な表現となっていることがわかる。であれば、筆者はドイツ、スペイン、コスタリカと同じグループEに入った日本の志・智・儀を以下のように上書きすべきだと考えている。

 志はボール支配率35%で勝ち点4以上を取ること、智はサッカーの4局面を0局面へ転換すること、儀は3・3・1・3のユニットを連動・連鎖・連結させること(図4)、というものだ。グループEではこの志・智・儀を基本とし、対戦相手によってそれぞれを微調整していけばいい。


【写真:Getty Images】

 なかでも、志の「ボール支配率35%」は難敵ぞろいのグループEを突破するための最重要ワードといってもいいかもしれない。ここで、現在開催されている2022/23シーズンのUEFAネーションズリーグにおけるドイツ(リーグAのグループ3)のボール支配率を見ていただきたい(図5)。

 ドイツは4試合中2試合でボール支配率65%を記録している。ほかの2試合も63%、64%と65%に近い数字となっており、ドイツを相手にした場合、つまり、ボール支配率35%近辺の試合を余儀なくされるということだ。もちろん、この割合は現状の力差を考えれば、3戦目のスペイン戦にも当てはまるだろう。

 そう、日本はグループリーグの3試合中2試合で35:65の状況になることを、まずは覚悟しなければならないわけだ。そして、ワールドカップの過去4大会で勝ち点3の2位通過チームが出ていないことを付け加えると、グループリーグを突破するには最低でも勝ち点4(1勝1分)が必要となる。「1強3弱」の構成であれば、例えば勝ち点3(1勝2敗)でもグループ突破の可能性はわずかながら残されているが、ドイツとスペインの大国が同居した今回はその可能性を望むべくもないだろう。

(文:庄司悟)

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定価:1,760円(本体1,600円+税)

特集:[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]を再定義する
流行りの横文字にだまされるな

 日本社会全体に横文字が氾濫しているのと同様に、サッカー界にも横文字は横溢している。日本サッカー協会が7月15日にホームページに公開した全55ページに及ぶ選手育成の指針名「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan’s Way」からして、現状の趨勢を表しているといっていい。もちろん、本文中にもこれでもかと言わんばかりに、横文字が散りばめられている。

 小誌は今回、サッカーチームの指針ともいえる横文字[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]の再定義に挑んだわけだが、前記の「国民的蹴球哲学」(あ・え・て)ではこの3用語ではなく[プレービジョン](26~32ページ)という表現が使われている。ガクッ……。指針を表す横文字でさえ各所で統一されていない現状では、迷い人が量産されるのは目に見えている。「STOP 横文字被害! 私はだまされない」。急場しのぎとして、ひとまずこの姿勢が重要かもしれない。

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【了】

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