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久保建英 2年前

久保建英のアシスト増加を予感させる理由とは? レアル・ソシエダが徹底する難しいタスクの正体【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

アルグアシル監督に強く要求されていたのは…



 先述した通り、エスパニョール戦の久保は2トップの一角として先発した。しかし、ゲームの中で中央にポジショニングしている時間はあまりなく、左サイドに張っていることがほとんどだった。

 4-3-1-2をベースとするソシエダは、これまでビルドアップで苦労することが多かった。高い位置で幅を取る選手がおらず、相手のプレッシャーにハマりやすいことが大きな原因だった。

 そのためイマノル・アルグアシル監督は、エスパニョール戦において高い位置で幅を取る役割を久保に与えていたのである。アルグアシル監督の要求はかなり徹底されていて、40分には久保が中央寄りの下がった位置でボールを受けようとすると、指揮官は「そうじゃない!」というような強めのジェスチャーで「広がれ!」と指示を出していた。久保が行おうとしていたプレーは、ダビド・シルバが担えば十分だったのだ。

 久保が幅と深さを取ることで、ソシエダのビルドアップはいつも以上にスムーズだったように思う。左で作る、あるいは深さを取って右で仕留めるという狙いはハッキリしていて、実際ソシエダの13本のクロスのうち、半分以上は左サイドからのものとなっている。右では幅を取るのがSBのアンドニ・ゴロサベルになるため、必然と言えば必然の結果だ。

 ただ、久保はタスクを遂行すると同時に苦労もした。幅も深さも取ったが、それ故に孤立することも多かったのだ。久保は何とか打開しようと頑張っていたが、単独での突破力はそこまでないので、ボックス内に侵入する機会は限られていた(データサイト『Who Scored』によると、ボックス内でのタッチ数は4回)。

 恐らくこのタスクの適役はモハメド=アリ・ショーだ。裏へ抜け出すスピードも、単独で打開できるドリブルスキルもある。その破壊力だけで言えば、久保以上のものがあるだろう。

 それでも久保が起用されるのは、戦術理解度やコミュニケーションの部分が大きいと言える。それ自体の評価は決して悪くないが、持ち味を100%近く出すならば、左ではないことは確かだ。

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