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モヤモヤが残るアーセナルの勝利。主導権を明け渡した2つの問題とは?【EL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

イージーなボールロストを連発


 試合終盤にかけて試合の流れがチューリッヒへと渡った2つ目の要因は、アーセナルが自分たちで試合をコントロールできなかったことにある。

 前半に61%のポゼッション率を記録していたアーセナルは、先述した通り多くのシュートを放ち、自分たちが試合の主導権を握っていた。ところが後半になるとポゼッション率は50%まで低下し、67分には結果的にはオフサイドで取り消しとなったが、ゴールネットを揺らされるなど徐々にアウェイチームに押される展開となった。

 こうした状況でアーセナルの選手たちは、1点差という中でもリスクマネジメントを疎かにしたプレーを選択することが多く、69分に右SBのベン・ホワイトが相手選手の密集に向かってドリブルを仕掛けた結果、簡単にロストし、カウンターを食らいそうになった場面がその代表例だろうか。

 74分にエンケティアがオフサイドを取られたシーンも同様だろう。この場面ではエンケティアが裏にフリーで抜け出していたのにも関わらず、リース・ネルソンの球離れの悪さという悪癖が発動し、パスを出すタイミングを誤ってオフサイドとなった。

 このように状況判断ミスでボールを相手にプレゼントしてしまう場面が多く、こうした積み重ねが徐々に流れを相手に受け渡す要因となっていた。

 88分には途中出場の冨安健洋が筋肉系のトラブルで負傷交代となりベンチに下がるなど、 勝利して見事グループAの首位通過を決めたとはいえ、どこかモヤモヤが残る試合となった。相手も決して本調子とはいえず、ゴールを決めきる人が決めて、状況判断を誤ることがなければ、このような難しい試合になることはなかっただろう。

(文:安洋一郎)

【了】

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