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フランス代表を止めるのは不可能なのか? 堅い守備戦術を破壊した方法【カタールW杯】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

フランスに付け入る隙はある?



 そんなフランス代表に付け入る隙はあるのだろうか。

 攻撃はあまりに理不尽。いくらデンマーク代表のように準備しようと、お構いなく崩せる圧倒的な個がある。完璧に抑える術はなさそうだ。

 ただ守備に関しては、若干の脆さはある。オーストラリア代表、デンマーク代表にそれぞれ得点を許していることからも、それは確かと言えるだろう。

 フランス代表は基本的にエムバペが深い位置まで戻らない。そのため、相手の右サイドがフリーになるケースが多く、実際デンマーク代表は左サイドから右サイドへのチェンジパスを何度も繰り返していた。

 1対1の対応を任されるのはもちろんT・エルナンデスで、カバーに入るのはインサイドハーフのアドリアン・ラビオが基本だ。もちろんダヨ・ウパメカノが全くT・エルナンデスのカバーに入らないわけではないが、おそらくディディエ・デシャン監督はあまりCBを動かしたくはないと考えている。CBが中にどんと構えることで、T・エルナンデスが1対1の局面を多く作られ、何度クロスを上げられても跳ね返せる確率が高いからだ。ここも個と言えば個かもしれない。

 問題は左サイドにボールを回されること自体ではなく、チュアメニの負担にある。ラビオが左SBのカバーに入り、グリーズマンの頑張りにも限界があるとなると、レアル・マドリード所属MFのカバー範囲が尋常ではなく広い。とくにサイドで深さを取られ、マイナス方向へ折り返されると、いくら広範囲をカバーできるチュアメニでも厳しい。デンマーク代表戦の73分のシーンは、その例と言ってもいいかもしれない。

 オーストラリア代表戦とデンマーク代表戦では、そこまで守備の脆さは露呈されなかった。しかし、より相手のレベルが上がれば、今は小さな傷口も大きく広がってしまうかもしれない。

(文:小澤祐作)


【了】

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