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なぜ若手の海外移籍が加速するのか? 日本人を欲しがる欧州クラブの思惑をシントトロイデン立石敬之CEOに訊く【1/4】

シリーズ:シントトロイデン立石敬之CEOに訊く text by 元川悦子 photo by Getty Images

経営者の頭を悩ませる2つの問題



「欧州サッカークラブの経営的水準を見ると、お金が集まっているのはイングランドだけで、それ以外の国はコロナ前の2019年に比べて半分程度ではないかと思います。

 日本の関係者やファンは『欧州クラブは資金力がある』と思っているでしょうけど、ロシア企業が撤退し、中国のコロナが続いていて、カタールもW杯開催によって欧州サッカーにマネーを投じる余裕がなくなっている。今後、可能性があるのは2030年W杯招致に本腰を入れようとしているサウジアラビアでしょうけど、それだけではなかなか難しい。個人的には次の2026年W杯開催国のアメリカやカナダが投資を始めてくれないかと期待していますけど、現状は厳しいですね」

 欧州サッカー市場に暗い影を落とす要素は少なくないが、各国リーグもクラブの経営破綻を阻止するためにファイナンシャルルールをより厳格にする傾向が強い。ベルギーの場合も今季から新ルールが設けられたため、経営者の立石CEOは頭を悩ませることが多くなったようだ。

「欧州では各国リーグからの分配金の比率が高いんですけど、それも増える見通しがない。ベルギーでは債務超過のあるクラブは、年間利益の20%ずつ債務を返済することが今季から義務付けられたんです。今までは債務超過を持っているだけでよかったのに、5年で完済しなければいけなくなったんです。

 もし返せないと、次のシーズンは勝ち点を失った状態からスタートさせられる。それは死活問題なんで、どこも必死にやりくりしています。そうなると当然、新戦力補強には慎重になる。選手を売らないと収入も入りませんから、今はそちらの方に注力しています」と複雑な胸中を明かす。

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