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ドリブル封印? 警戒を上回る三笘薫の進化とは。圧勝のブライトンで光る意外な判断【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

ハマりにハマったデ・ゼルビサッカー



 結論から言えば、この日のブライトンは自分たちがやりたいサッカーを余すことなく体現できていた。

 ブライトンはビルドアップ時、GKジェイソン・スティール、CBのルイス・ダンクとアダム・ウェブスターの3人でボールをゆっくりと持ちながら、ウェストハムの選手を自陣深くへと呼び込んだ。そして、相手がある程度前に出てきたところで選手間を突く縦パスを差し込み、一気に攻め込む。いわゆる「擬似カウンター」をこれでもかと成功させていたのだ。50分、モイセス・カイセドがデクラン・ライスのプレスを巧みにかわしチャンスに繋げたシーンは、その象徴と言ってもいいだろう。

 ウェストハムは前から捕まえにいくも、チームとしての連動性が皆無だった。それゆえにアンカーに入ったライスの背後や脇のスペースを再三に渡って突かれ、あれよあれよとディフェンスラインを下げられてしまった。

 また、ウェストハムは奪った後の繋ぎが焦りもあったかかなり雑。前半途中にはモイーズ監督が不満気な表情で「落ち着け」というジェスチャーを見せていたほどだ。そのため、相手にボールを保持される時間が長くなってしまい、選手たちは早い時間で心身ともにかなり疲弊。後半はボールホルダーに全くプレッシャーをかけられなくなっていた。「あそこに立ち、守ろうとし、相手がボールをキープするのを見るのは、士気をくじくようなものだった」という試合後のライスのコメントからも、いかに厳しい戦いだったかわかる。

 こうなると、ブライトンの独壇場になることは必然。試合終盤に誕生したダニー・ウェルベックの4点目も、起点は相手を深くまで引きずり込んでからの擬似カウンターであり、ウェストハムの選手はボールの保持者に全くと言っていいほど圧力をかけられていなかった。アウェイチームからすると、いつも以上に90分間が長く感じられたのではないだろうか。

 そんなウェストハムを圧倒したブライトンにおいて、最も輝きを放ったのが左サイドハーフで先発した三笘薫だった。

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