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プロライセンスを持たない30歳、スティル監督とは何者か。「ゲームにハマって指導者に」は嘘だった【コラム/前編】

text by 小川由紀子 photo by Yukiko Ogawa

罰金を払ってでも…。絶大なスティル監督への評価


【写真:小川由紀子】



 昨シーズンから指揮をとっていたスペイン人監督、オスカル・ガルシアが10月13日に解任となると、当初スティルは、カタールW杯で中断するまでの5試合を「暫定的に」率いることを任じられた。ところがその5試合で2勝3分という好成績に加え、チームの雰囲気が好転したことを感じ取ったフロントは、スティルの続行を決めたのだった。

 しかし彼はまだプロのライセンスを持っていないため、ランスは毎試合、25000ユーロ(約300万円)の罰金を支払ってスティルに采配を任せている。痛い出費ではあるが、経験豊富な指揮官を高額のサラリーで雇うことを思えば、スティルが生み出しているポジティブな効果のほうが価値があると考えたフロントの決断は正しかった。

 現在、欧州五大リーグでもっとも若い指揮官である1992年生まれのスティル監督は、イギリス人の両親のもと、ベルギーで生まれた。よって母語は英語だが、ベルギーのフランス語圏で育ったため、フランス語もネイティブだ。ベルギーで話されている、オランダ語に近いフラマン語も習得している。

 子供の頃からサッカーが大好きで、ベルギーで生まれ育ったが、父の影響で贔屓のクラブはプレミアリーグのウェストハムだという。

 少年時代は、シント=トロイデンやモンスでプレーしたが、彼のキャリアにとって大きな転機となったのは、その後イングランドのカレッジで学んだことだった。

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