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第11回「サッカー本大賞2024」受賞者のコメントを公開!

text by 編集部

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サッカー本大賞



サッカー本大賞2024 受賞者のコメント

 サッカー本大賞2024の優秀作品11作品の受賞者よりコメントが届いたので一挙公開!


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大賞・読者賞

『それでも前を向く』(朝日新聞出版)
宮市亮(著)


 このたびは、このような素晴らしい、栄誉ある賞に、それも、2部門も選んでいただき、本当に嬉しく感じております。

 この本は、自分のサッカー人生を正直に、リアルに残すことで誰かの役にたてばいいと思い始めたのですが文章を考えるというのは慣れない作業だったので、時間はかかってしまいましたが数多くの方のサポートもあり、自分のサッカー人生が詰まっていると言える本になりました。

 そしてその、自分のサッカー人生を、みなさんの記憶に少しでも刻んでいただけたことがとても嬉しく、本当に幸せなサッカー選手だと改めて感じています。

 読んでくれた人の中から、一人でも多くの方が、日本サッカーをより強く、よりたくましくしていってくれることを、祈っております。
これからも、この本以上の情熱を、これからもみなさんにお見せできるよう、走り続けます。

 最後に、アーセナルの、フェイエの、ボルトンのウィガンの、トゥウエンテの、ザンケトバウリの、そして、何より愛するマリノスの仲間と、ファミリーの、そして、どんな時も支えてくれた妻と子供のおかげで今もサッカー選手でいれています。

 この場をお借りしてお礼を言わせてください。

「ありがとう」

(横浜F・マリノス 宮市亮)

特別賞

『オシムの遺産(レガシー) 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)
島沢優子(著)

 昨年10月、私は夫とボスニアヘルツェゴビナの首都サラエボに渡りました。『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』を書かせてくださった感謝を伝えるためです。息子のアマルさんが運転する車で、市内にある集団墓地へ。アマルさんの車が門の手前で止まると、守衛さんがニコニコしながらバーを上げてくれました。「スペシャルトリートメントなのさ」とアマルさん。本来なら何らかの手続きが必要なのに、それを省いてくれたのです。

 墓地に入ると、ひときわ花に埋もれた墓石が見えました。日本のように挿し花ではなく花籠です。アマルさんは「(花籠の個数は)これと同じくらいか、もっと多い日もある」と教えてくれました。私たちはオシムさんが練習中ポケットに忍ばせるほど大好きだった柿の種と、好物の日本酒を墓に手向けました。

 東京から9400キロ離れたサラエボまで墓参りに来たのに、私はオシムさんと会ったことがありません。スポーツ記者時代は長くジェフ担当を務めたのにすれ違いでした。ただ、彼と長く深く時間を過ごした人たちと、私は縁が深かった。それぞれが「オシムの言葉」を胸に折りたたんでいました。

 大衆へ向けたものではない、ひとりの人間への正鵠(せいこく)を射た言葉には熱量と愛がありました。それを描こう。いや、描かなくてはならない。半ば使命のように感じ取材を開始。書き上げる道の途中で、オシムさんの訃報が届きました。

 尊敬するスポーツジャーナリストの大住良之さんが『オシムの遺産』の書評で、こう書いてくださいました。
――(著者は)オシムとは「一度も会ったことはない」と告白する。幅広い取材の動機がそこにあったのなら、著者のその「不運」に私たちは感謝しなければいけない(しんぶん赤旗2023年7月9日付)

 オシムさんが日本サッカーの未来に多くの種を蒔いてくださった時期、私は子育てと仕事の両立に大苦戦中。ナイターの多いスポーツ取材に行けないため、教育誌や週刊誌『AERA』で学校や教育問題を書き続けました。その時期があったからこそ、スポーツと社会をつなぐ視点という独自性を得ることができました。ライターとしての弱みを、強みに変えたのかもしれません。

 スポーツは教育と地続きであり、単なるコンテンツではなく社会を形成する大きな要素です。スポーツが変われば社会が変わる。そして、日本サッカーの未来をつくるのは子どもたちです。

 オシムさんは最も信頼を寄せた日本人である祖母井秀隆さんにこう告げました。
「おまえは、子どものことをやれ」

 その言葉は自分に向けられているのだと、私は勝手に思っています。今回の受賞を糧にします。

(島沢優子)

【名著復刊賞】

『スタジアムの神と悪魔――サッカー外伝・〔改訂増補版〕』(木星社)
エドゥアルド・ガレアーノ(著/文)/飯島みどり(訳)

 毎日リフティングをするのが楽しい。
 できなかったプレイ(遊び)ができるようになるのが嬉しい。
 見たことのないプレーをする選手を見て、心が躍る。
 あんな風になりたい、あの国のあのスタジアムに行ってみたい、そんな風に思うようになる。
 そこには誰がいて、何を食べていて、どんな言葉を話しているのか、知りたくなる。
 一緒にボールを蹴りたいと思う。
 フットボールは、僕らにそんな夢を見させてくれる。

 災害や感染症に見舞われ、政治、経済が複雑に絡み合って紛争と分断が進むいま、フットボールというこの美しい芸術が、どんな風に自分たちを、世界を変えてきたのか。
 
 もう一度深く理解したいと思った。

 それを叶えてくれる本は、エドゥアルド・ガレアーノ『スタジアムの神と悪魔』しかなかった。
ずっと傍にあった一冊だ。

 飯島みどり先生(立教大学ラテンアメリカ研究所)が、原著スペイン語版を底本とし増補改訂版の日本語訳文に翻訳/改訂してくださった。
 
 先生ご本人は「サッカーの専門ではない」とおっしゃるけれど、スタジアムの興奮がこんな風に溢れている日本語はなかなか他にない。

 プレーヤーの、ファンの、子供たちの、そしてガレアーノの声が聞こえてくる。

 スケジュールの都合により授賞式に出席することができず大変残念ですが、
 今回この本を目にとめていただいたことで、多くの人にガレアーノの言葉が届いていくと思います。
 これに勝る喜びはありません。

 読者の皆さま、審査員の皆さま、ありがとうございました。

(木星社 発行人/編集 藤代きよ)

【戦術・理論賞】

『フットボールヴィセラルトレーニング 無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論[導入編/実践編]』(カンゼン)
ヘルマン・カスターニョス(著)/進藤正幸(監)/結城康平(訳)

『フットボールヴィセラルトレーニング』が受賞され、とてもうれしく思っています。イングランド・プレミアリーグ、アルゼンチンリーグ、ペルーリーグでは、すでに私のトレーニング理論が実際に使われています。近いうちに、Jリーグでもこの理論を活用してくれるチームが現れることを祈っています。

(ヘルマン・カスターニョス)

優秀作品賞

『戦術リストランテVII 「デジタル化」したサッカーの未来』(ソル・メディア)
西部謙司(著)

 ありがとうございます。

『戦術リストランテ』のシリーズはfootballista誌の創刊当時からの連載を都度まとめて書籍化してきたものです。長年、ご愛顧いただいている読者の方々のおかげです。

 そのfootballista誌も紙の雑誌からWEBへ移行しています。連載の方は「新戦術リストランテ」として週刊化しているのですが、時の流れを感じるしだいです。

 サッカー本大賞もサッカー映像大賞になってしまうのかもしれませんが、本にはそれなりの良さがありますので、是非続けていただけたらと願っております。

(西部謙司)

『森保ストラテジー サッカー最強国撃破への長き物語』(星海社)
五百蔵容(著)

 全ての試合は、それぞれ一度しかない、繰り返し不能な「作品」である。
 
あらゆるジャンルの、あらゆる「作品」がそうであるように、サッカーの試合という「作品」にも、そこまでの過程、そこからの発展が必ずある。

 表現者である選手達、監督やスタッフの方々へのリスペクトを抱き、つぶさに観て、書いていきたい……。

 そんな思いで追ってきた「作品」の、優れた送り手の一人である森保一監督の仕事を、サンフレッチェ広島時代から連続するプロセスとして総括できたことは、充実した経験となりました。

 加えて、このような賞に推挙戴き、望外の幸せを感じております。

 本書にご助力戴いた全ての方々、書くに足る、解き明かすに足る「作品」の数々を送り出された森保監督をはじめとしたサッカー関係者の方々に、心から感謝いたします。

(五百蔵容)

『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』(エクスナレッジ)
ひぐらしひなつ(著)

 サッカーの現場での取材はいつもハードで殺伐として、そのしんどさのあまり思わず「報われたい…」と思ってしまい、否、このしんどさこそが豊潤な実りなのだと自らに言い聞かせる日々の中で、このような評価をいただけて、なんだか報われた思いです。

 あらためて、取材にご協力くださったみなさま、一冊に結実させてくださった二人の編集者、審査員のみなさま、読者のみなさまに御礼申し上げます。

 そして、もしかしたら「読む」という娯楽がニッチなものになりつつあるかもしれない現代において、このような場を作っては新たな読者との出会いを演出してくださる株式会社カンゼンさまにも、感謝を捧げたいと思います。

 これを励みに、これからも精進して参ります。

 同志であるサッカー本の書き手たちが、それぞれに、いつか倒れる日まで書き続けられますように。

(ひぐらしひなつ)

『もえるバトレニ モドリッチと仲間たちの夢のカタール大冒険譚』(ソル・メディア)
長束恭行(著)

『東欧サッカークロニクル』がサッカージャーナリストとしての集大成、『ルカ・モドリッチ自伝/マイゲーム』が翻訳家としての集大成であるならば、『もえるバトレニ』はクロアチアサッカーに捧げた人生の集大成です。3作目もサッカー本大賞の優秀作品に選ばれたことをとても喜ばしく思っております。

(長束恭行)

『ドイツサッカー文化論』(東洋館出版社)
須田芳正(著)/福岡正高(著)/杉崎達哉(著)/福士徳文(著)

 この度は、「サッカー本大賞2024」の優秀作品に選んでいただき誠に光栄に思います。

 本書は、私の一年間のドイツ生活で感じたことを「ドイツサッカー研究会」の仲間たちと、まとめ上げた一冊です。
 ドイツでは日常にサッカーがあり、毎週末、地域のサッカークラブで子供から大人まで誰もが楽しんでサッカーをプレーする姿を思い出します。

 サッカー文化という点で、まだまだ日本とドイツでは大きな差があります。

 子どもたちに夢を与える日本代表の強化も大切ですが、まず日本サッカー界がやるべきことはサッカー人口を増やすことや誰もがサッカーやフットサルをプレーすることができる環境を整備することだと感じます。そして近い将来、日本でもサッカーが日常生活の一部になっていることを願ってやみません。

(須田芳正)

『モダンサッカー3.0 「ポジショナルプレー」から「ファンクショナルプレー」へ』(ソル・メディア)
アレッサンドロ・ビットリオ・フォルミサーノ(著)/片野道郎(著)

『モダンサッカー3.0』がこのような形で評価され、認められたことを、とても嬉しく思っています。私は「サッカー選手はプレーを通じてどのように学習するのか?」という問いへの答えをピッチ上に見出すために、何年にもわたって試行錯誤を繰り返し、進歩を積み重ねてきました。その副産物とも言える本書は、サッカーの新たな潮流を追いかけ、新たなメソッドの地平を切り開こうという試みにとって、単なる出発点に過ぎません。次の機会があれば、その新たな潮流、新たなメソッドがもたらしてくれる技術的・戦術的な可能性をより具体的に掘り下げてみたいとも考えています。その前に今はまず、この賞を共著者の片野道郎ともども、心から喜びたいと思います。

(アレッサンドロ・フォルミサーノ)

『聞く、伝える、考える。〜私がサッカーから学び 人を育てる上で貫いたこと〜』(アスリートマガジン)
今西和男(著)

 この度は、優秀作品に選んでいただきありがとうございます。

 こうして評価していただけたこと、大変名誉なことだと嬉しく思っております。
 サッカーに出会えたことを何よりも幸せに思っています。

 幼少期に被爆し、他の子ども達と同じように運動ができなくなり、負い目のようなものがあった私が、サッカーに出会い、サッカーを通してたくさんの友達ができること、誰とでも楽しく過ごせるようになることを知りました。

 そこからサッカーにのめりこみ、気づくと人生の大半をサッカーと共に過ごしてきました。

 この出会いによって、その後私は多くのことを学びました。
 この学びはサッカーだけにとどまらず、人生において、人としての成長に役立つことを身をもって経験しました。

 この経験があったからこそ、「サッカー選手である前に良き社会人として」ということを多くの選手たちに伝えてきました。
サッカーは日々進歩、進化していきます。

 ただ、サッカーをするのは人であり、私たちはサッカー選手を育てています。
 どんなに変化しようとも変わらないものがあることを忘れてはならないと思っています。

 サッカー指導者だけではなく、様々なスポーツ指導者に読んで頂きたいことはもちろんですが、スポーツをしている中高生にも読んで頂き、今後の人生に何かしら役立てて頂ければ幸いです。

  この度は本当にありがとうございました。

(今西和男)

【了】

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