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堂安律のシュートはGKの判断を一瞬迷わせる。「骨盤の回旋」の連動がもたらすキックの特徴とは?【動作分析コラム】

シリーズ:動作分析コラム text by 三浦哲哉 photo by Getty Images

堂安律と久保建英のキックの違い

 シリア戦よりも助走が長くスピードに乗っているため、『骨盤の回旋と連動して蹴り足を内側に振り抜く』動きと、上半身の『ねじり戻し』の要素が少なく、軸足の『膝を抜く』と『身体全体の向きを変える』動きの比率を多くすることによって、インパクトの強さを生み出しています。

【動画 日本代表対スペイン代表 堂安のゴール】

参照元:YouTube
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 大会後のインタビューで、堂安はこのゴールについて「ギリギリまでファーサイドを狙うか迷った」とコメントしています。これは、ニアサイドに強いボールを蹴れることが前提にあることで可能となる考え方ですが、結果的にゴールキーパーにコースが読まれにくいフォームにもなっていると思います。

 堂安と同じく右サイドを主戦場とする久保建英のカットインからのシュートは、彼の得意なキックの形である、『インパクトの直前で骨盤の回旋を止めて蹴り足を走らせる』と、軸足を外して『身体全体の向きを変える』動きの組み合わせが土台にあります。

 久保のカットインからのシュートは、インパクト後に軸足を地面から外して蹴り足から着地する動きになるため、ちょうどジャンプしながら蹴っているような印象があるのではないでしょうか。

 この蹴り方は、身体を大きく捻ってニアサイドへズドンッ! というキックには不向きなため、久保はスピードに乗った状態でペナルティーアーク付近まで侵入した場合は、ファーサイドを狙うシーンが多くなる印象があります。

 堂安は、今季のブンデスリーガ第4節のハイデンハイム戦ではカットインからファーサイドに鮮やかなゴールを決めています。ゴールキーパーから読まれくいフォームで、かつニアからファーサイドまで広角に高精度の強いボールを蹴り分けられることは、堂安の大きなストロングポイントと言えるでしょう。

(文・三浦哲哉)

プロフィール

三浦哲哉(みうら・てつや)
1980年4月25日生まれ、岩手県出身。理学療法士、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。大船渡高校、順天堂大学、専門学校社会医学技術学院卒。整形外科クリニックでの理学療法士業務と並行して、サッカーを中心にトレーナー活動を経験。タマリバクラブ(ラグビー、2005〜08年)、慶應義塾体育会ソッカー部(10〜20年)、全日本大学選抜(13〜15年)、ユニバーシアード男子日本代表(15年)でトレーナーを務めた。

書籍情報

『サッカーフィジカルのプレーモデル』

三浦哲哉 著、須佐徹太郎 監修
定価:2,310円(本体2,100円+税)
これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型
世界で活躍するトップ・オブ・トップのサッカー選手の動作的特徴として、「スプリント」「減速・加速」「方向転換」の速さが挙げられる。それらを支えているのが、「弾むバネ」「沈むバネ」「しなるバネ」の3つのバネである。また、身体的特徴として、「上半身の姿勢の良さ」「腹~腰回り、下腹部の筋群の発達」「自由度の高い股関節」がある。本書では、現代サッカーを制するために必要不可欠な3つのバネの作り方を中心に、中学生年代から大学生年代かつプロ選手まで適用できる、これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型を提示する。

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