久保建英とヤマルの共通点

【写真:Getty Images】
そして後半になると、プレスとセカンドボール回収に手ごたえを感じたイマノル・アルグアシル監督は、チーム戦術を⑤にシフト。2人の選手交代の後、いっそうダイレクト志向に切り替えてゆく。
そうした中、ボールプレーヤーである久保の“個”よりも、フィジカルを活かした飛び込みや、オフ・ザ・ボールの飛び出し、スピードを活かした長い距離での縦の仕掛けといった、ダイレクト志向に適したスキルを専門的に持つベッカーの“個”の方が大きな価値を発揮するとみなされたために、久保は82分に交代することになった。
ソシエダのチーム戦術の中で、久保の個は、このように活用されてきたのだ。
多様なクラブを渡り歩いてきた久保は、①から⑥までの戦術の適正を有している。例えば、マジョルカやヘタフェといったクラブでは、⑤と⑥を忠実に遂行してきた。専門のフィジカルモンスターに貢献度は劣るが、それでも、久保のドリブルとスプリント能力は、ダイレクト志向への適応を可能にする。
しかし、現在の久保がワールドクラスの輝きを見せられているのは、ソシエダに移籍し、イマノル監督のビルドアップ志向の戦術と出会えたからに他ならないだろう。
様々な配置とテンポ感があるとはいえ、保持に重きを置き、丁寧にビルドアップを行い、相手を押し込んで崩すことを志向する、ソシエダのフットボール(①)。右サイドのタッチラインを背にしてボールを持つと、ほぼ確実に相手を剥がして決定機を創出できる久保の“個”は、このソシエダ・スタイルにピタリとはまり、輝いてきた。
ソシエダに移籍してから、3季連続で10ゴール以上に関与していることも、この相性の良さを証明する。そして今季のラ・リーガで久保が決めた5得点のうち、エスパニョール戦、セビージャ戦、レガネス戦の3得点が、押し込んでから崩しの局面で生まれているのだ。
つまり、久保が最も得点機会を創出するチーム戦術とは、クリーンに前進して相手を押し込みつつ、崩しの局面ではサイドにボールを供給し、仕掛けるスペースと時間と回数を与えられる戦術だ、と導きだすことができる。極めて抽象的な結論になってしまったが、具体例を挙げると、バルセロナのFWラミン・ヤマルが活躍している戦術に近い。
今季残りの試合で、久保はどんな輝きを見せてくれるだろうか。そして来季の久保は、「新生レアル・ソシエダの皇帝」として、新監督による新たな戦術の、より中心的な選手になっていくのか。
それとも、自分に合った戦術を採用するビッグクラブ(それはどこだろう)に移籍するのか。いずれにせよ、真のワールドクラスの階段を上っていく、久保の将来が、楽しみで仕方がない。
(文:阪田天祐)
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