背後へ「蹴る」べきではないシチュエーションもある
話を戻すと、レヴァークーゼンの特徴であるハイラインを考えれば、ケルンは「ボールを奪ったらシンプルに背後へ」と事前にミーティングしていた可能性は大いにあります。
ただし、ボールを奪ったら最前線は何も考えずに、とにかく機械的に背後のみを取れば良いのでしょうか。そうではなく、それはボール保持者の味方の状況に左右されます。このシーンのように、ボール保持者のヒューバースにプレッシャーがなく、難なくロングフィードができる状態であれば、DFの背後を狙います。これが理想的です。
もし、ボール保持者が相手のプレッシャーを受けていれば、ボールを受けやすいように、またせっかく奪ったボールを失わないように足元でボールを要求したいところです(ポストプレー)。一気に背後ではなく、ワンクッション入れることになりますが、その後に素速くさらに前線にボールを運びます。ボール保持者も焦って無理やり背後へ「蹴る」べきではありません。
また、日本でもボール奪取後の素速い前方へのプレーの好例がありました。2024/25シーズンのWEリーグ第20節、大宮アルディージャVENTUS対ジェフユナイテッド千葉レディース戦の後半アディショナルタイムにおける同点弾(大宮)のシーンです。大宮のDF金平莉紗の素晴らしいボール奪取から前線へのフィード、大宮のFW齊藤夕眞のタイミングの良い背後への抜け出しから正確なクロス、そして完璧なフィニッシュまで、後半アディショナルタイムとは思えないまったく無駄のない効果的なプレーでした。特に金平の高いテクニック、判断の速さによる一連のプレーには、モダンサッカーの機能美がありました。ぜひ参考にしてください。
参照元:YouTube
この試合、ケルンは前半アディショナルタイムで先制点、54分に追加点を挙げました。先制点はレヴァークーゼンの左ウイングバック(WB)アレハンドロ・グリマルドが相手陣内のコーナーフラッグ付近からクロスを上げるも、難なくケルンのGKがキャッチした場面から始まります。
【次回に続く】
(文:河岸貴)
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