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いまだ日本とドイツには、埋められない差が存在している。ドイツサッカーの根本にある「BoS理論」を知り尽くす筆者が、攻撃(ボール保持)におけるロジックを語りつくす連載をスタートさせた。第2回では、優先順位を明確に提示した上で、それぞれの選択肢が持つ可能性を解き明かしていく。(文:河岸貴)
『サッカー「BoS理論」 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法』
カンゼン・刊
河岸貴・著
ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論「BoS(ベーオーエス)理論」(Das Ballorientierte Spiel:ボールにオリエンテーションするプレー)が足りていない日本サッカーの現状に警鐘を鳴らす。ドイツ・ブンデスリーガの名門シュトゥットガルトで指導者、スカウトを歴任した著者が、日本のサッカーの現状を直視しながら、「BoS理論」におけるボール非保持時の部分、「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」の道筋をつけた一冊。
「チームメイトの助けなしには、どんなに優れたドリブラーでも成功できない」
「BoS」的ボール保持時の攻撃ではゴールを奪うことが目的となります。これは「BoS」ではなくとも攻撃というプレーの目的として至極当然です。しかし、私の視点からすると、本当にゴールが目的なのか? というゲーム中の現象は日本で多々見られます。
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そもそもサッカーというスポーツの概念が違うということもあるかもしれません。その点は人文科学的観点から河内一馬氏の『競争闘争理論 サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか?』(ソル・メディア)が参考になります。「BoS」的攻撃プレーの思考をヴュルテンブルクサッカー協会の指導者養成の資料をもとに紹介します。
Angriffsspiel(アングリフシュピール)―攻撃プレーとは―
「ボール保持時は、非保持時よりもずっと複雑だ。相手がボールを保持している場合、各選手のランニングルートは明確かつ一義的に決まっており、ボール方向に向かう。
一方でボールを保持しているチームは対照的で、選手たちの走る方向は時に正反対であり、まったく異なる。これはフリーランニングのタイミングにも当てはまる。かつこれに心理的なフラストレーションが加わる。
1チームが11人のサッカーでは、毎回9人か10人の選手が無駄に走ることになる。なぜなら、サッカーでプレーされるボールは1つだけで、ボール保持者はこの1つのボールを1人の選手にしか渡さないからだ。この場合、残りの9人の選手は何もせずに走ったことになる。つまり無駄走りになることもある。
ボールを持っている選手がボールをパスしなかった場合、チームメイトの10人は無駄に走ることになる。一般的にこれはチームメイトのエゴに対するストレスを説明するものだ。とはいえ、選手は常にボールを持っている味方を助け、ボールを前進させ、常に一緒にプレーする姿勢を示さなければならない。チームメイトの助けなしには、どんなに優れたドリブラーでも成功できないからだ。1人だけでサッカーはできないし、またパスだけでも不可能だ……。」