「膝を抜く」動作によってスピードを調節する
②の走りながらクロスを蹴る場合は、軸足の股関節を上手く使ってブレーキをかけながら、インパクトで蹴り足に身体の重さを乗せていく必要があります。
【動画 走りながらのクロス】
参照元:YouTube
軸足は、踏み込んだあとに、すねを前に倒すようにして脚を曲げる「膝を抜く」動きをすることによって、スムーズな並進方向への重心移動と骨盤の回旋が生み出されます。蹴り足は、①の時ほど高く振り上げる形にはならないものの、しっかりと内側方向に振り抜かれていきます。
伊東と三笘。足元を支えるシューズブランドも共通点ですが、モチーフとなっているネコ科の野獣さながらの、しなやかな上半身の使い方も伊東の特徴です。キック動作では、腕振りに先導される形で胸を張るように後ろへしなってから、胸郭(胸骨・胸椎・肋骨)を骨盤の動きと反対方向へ捻っていく必要がありますが、伊東は、これに加えて、ボールインパクトにかけて胸郭を前に曲げていく力も連動させることができます。
私は、このボールインパクトでの縦方向の動きを、「みぞおちの前に胸を乗せる」と表現していますが、ちょうど下方向にグッと圧をかけるようなイメージで胴体部分を折りたたむ動きが参加すると、インパクトでの蹴り足の固定力を高めることができます。
ボールの外側をこするようにではなく、置きどころをやや右斜め前にして足の甲の内側でドンッと強くインパクトさせて、中央にいるディフェンダーの頭上を越えたあとにクッと落ちるような軌道のクロスを蹴るのが、伊東流です。
これらの2種類の蹴り方がクロスの基本になり、トップクラスの選手ほどハイレベルで兼備しています。伊東と同じく、ベルギーのKRCヘンクに所属した経歴のあるキックの名手、ケヴィン・デ・ブライネは、その代表格と言えるでしょう。
2つの基本の「型」がしっかりと鍛錬されていると、ニアサイドはもちろんファーサイドまでの広範囲を射程圏内に入れることができ、また、さまざまな局面での応用も効きやすくなってきます。