「ここからしかない」危機感を背負いながら先発のピッチへ
本人も「次のW杯に行かなければ意味がない」と真剣に考え、同年夏に当時ドイツ・ブンデスリーガ2部だったホルシュタイン・キールへ移籍。1年で1部昇格を果たし、今季は初参戦の欧州5大リーグで着々と数字を重ねていた。しかしながら、最終予選突入後もなかなか呼ばれず、苛立ちを募らせていたに違いない。
湘南ベルマーレ時代の盟友・大橋祐紀の負傷もあって、ようやく再招集されたのが今年3月のこと。W杯行きを決めたバーレーン代表戦でラスト数分間ピッチに立つことができたが、「僕に関しては、ここからしかない。また頑張っていきたいです」と危機感を吐露していた。
代表でピッチに立つ機会はそう簡単には巡ってこない。厳しい現実を誰よりも痛感している男が久しぶりの先発1トップのチャンスを得たのだから、明確な結果を出さないわけにはいかない…。この日の町野は特別な気迫や闘志を前面に押し出していったのだ。
序盤から日本が主導権を握ったこともあり、背番号18はしっかりと前線でボールをキープ。体を張って収め、攻撃の潤滑油としてプレーした。そのうえで、三戸、森下という左右のウイングバック(WB)からのクロスに積極的に合わせていく。
「最後のペナリティエリアでのフィニッシュは自信もありますし、しっかり試合で決めたい」と7日の練習時にも力を込めていたが、今の町野からは2年前には感じられなかった力強さと逞しさが見て取れた。