「僕をしっかりと見つけてくれていた」
敵陣のセンターサークル付近でパスを受けた乾貴士が、得意のドリブルで縦へ進んでいく。そして、神戸の選手たちを十分に引きつけたうえで、左サイドをフォローしてきた左ウイングバックの山原怜音へパスを通した。
次の瞬間、山原が選択したのは左足によるワンタッチクロス。ボールは神戸ゴールから遠ざかる軌道を描きながら、ややマイナスの方向へ飛んでいく。神戸の選手たちが下がりながらの対応を余儀なくされた状況で、ペナルティーエリア中央に生じたわずかなスペースに走り込んできたのが小塚だった。
「(山原)怜音がフリーの僕をしっかりと見つけてくれていたので。あとは僕が決めるだけでした」
イメージ通りのクロスに利き足の右足をヒット。ジャストミートとは映らなかったボレーは、それでも神戸の守護神・前川黛也の右側の空間を正確に射抜き、右ポストに当たってゴールインした。
今シーズンから所属する清水で出場13試合目、プレータイム268分目で訪れた待望の瞬間を小塚はこう振り返った。
「ボールをふかさないように、丁寧に、という感じでした。とにかくゴールの枠に入れよう、と」
J1リーグでのゴールから遠ざかっていたのは、小塚のキャリアとも関係している。
大分から移籍した川崎フロンターレで3シーズン目を迎えていた2023年7月。小塚は韓国Kリーグの水原三星ブルーウィングスへ完全移籍で加入した。自身初の海外挑戦を「もっとプレーがしたかった」とこう振り返る。