「正直、ジエゴはイヤやなと…」
「田邊秀斗のこれまでの積み上げてきたもの、また成長しようという意欲。選手は、基本的には試合に出ることで大きく成長すると思っています。なので、今日はいま成長している段階にある田邉秀斗に任せようとあの段階で決断しました」
急きょ呼ばれたとき、田邉はまだロッカールームにいた。スタッフから呼ばれ急いでベンチに行くと、スパイクの紐を結びながら長谷部監督の指示を聞く。
ピッチに入る際の感情を聞かれると、田邉はこう答えた。
「正直、ジエゴはイヤやなと思いながら入りました」
口角の片側が上がっていた。冗談交じりや自虐的な話をするときの表情だ。
偽らざる本音だろうが、そう話したときに気持ちは変わっていたはずであり、だからこそそんな表情を見せたに違いない。
なぜなら、ジエゴをほぼ完璧に封じたからだ。
「最初のヘディングで勝てたので、そこから『いけるわ』と思えました」
1つのプレーで自信を得たことに加え、隣の左センターバックでプレーする佐々木旭がしきりに指示を出してくれた。出場直後だけではなく、試合が中断するたびにチームメイトが声をかけてくれた。
後半の味方が痛めて中断した際などに田邉と確認作業を行うだけでなく、左サイドのヘルプに入ることを意識していたという山本悠樹は、田邉に賛辞を送る。